ノリの東京の友人の生きる糧(福岡編)

日々のちょっとした楽しみや悲しみを徒然に語ります。

時代劇はこうでなきゃ ~ 必死剣 鳥刺し ~

2010年07月14日 | 映画
 「時代劇映画はもうダメなのかなぁ?。」と、まれに見るトホホ映画だった『座頭市 THE LAST』を先週観て落ち込んでいたのですが、その想いをわずか1週間で消し去ってくれた作品に出会いました。

 その作品は豊川悦司さん主演の『必死剣 鳥刺し』です。
 本作は3月に公開された北川景子さん主演の『花のあと』に続く今年2本目の故:藤沢周平先生の短編小説の映画化作品(以下:藤沢映画)です。観終わった後に「時代劇はこうでなきゃ。」と納得して家路につくことができました。丁寧に作られた作品でしたね。

 本作も他の藤沢映画と同じように原作を忠実に映像化していましたが、原作とは若干話の順序を変えたシナリオになっていたのが吉と出たようです。原作を読んでいない人が本作を観たら冒頭のシーンで驚くと思います。思わず話に引き込まれます。
 殿様の側室(愛人)が政治に口を出して国がおかしくなっている状況の話なので、誰もが話の展開が気になると思います(豊川さん演じる主人公は、その乱れた国の寡黙な家来の役です)。

 その後は過去と現在を行き来して話が進むのですが、原作では描かれていない伏線の回収もうまくいっていたので、シナリオの出来は良かったと思います。やはり映画ではシナリオが最も重要な要素ですね。『座頭市 THE LAST』は完全にシナリオが変でしたからね。

 そんな緩急をつけた見事なシナリオのおかげで、終盤の戦闘シーン(殺陣)は緊張感溢れるこれまた見事な出来になっていました。豊川悦司さんと吉川晃司さんの長身同士の殺陣はまさに『息を呑む戦い』でした。リアリティを感じましたね。

 終盤の展開も原作通りの2段オチだったのですが、原作を読んでいた私も思わず「おっ。」と声が出るくらい驚いてしまいました。藤沢映画に関してはラストの描写が原作に負けているケースが多いのですが、本作は原作を超えた気がします。
 あまりに展開が速くて目が追いつかなかったので、DVDやブルーレイが出た時にスロー再生で終盤を見直すことにします。豊川さんが繰り出す『必死剣 鳥刺し』は、これぞ『目にも留まらぬ早業』と言う感じでした。

 最後に残念だった点ですが、主人公の豊川悦司さんと池脇千鶴さん演じる姪の人間関係の描写が原作同様淡白な感じだったのはもったいなかったですね。もう少し原作と違うアレンジで2人の関係を深く丁寧に描いた方が観客が感情移入できたと思います。なぜか歴代の藤沢映画は原作を忠実に再現することが多いのでそれに従ったんですかね?。そろそろ原作から一歩踏み出した作品を作って欲しいですね。

 以上が、『必死剣 鳥刺し』の感想です。
 私の評価は☆3.5です。秀作ですね。硬派な時代劇を観たいと思う人には最適な作品だと思います。


 これで藤沢先生の短編『隠し剣シリーズ』の全17編のうち、

 ・隠し剣 鬼の爪
 ・盲目剣谺返し(映画題名:武士の一分)
 ・必死剣 鳥刺し

の3編が映画化されました。残りの作品も味のある作品ばかりなので、この調子で毎年1本ずつ映画化して欲しいですね。年に一度は藤沢映画を観たいです。
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10 コメント

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是非 ((T_O))
2010-07-14 23:06:18
観てみたいと思います。
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(T_O)さんへ (ノリの東京の友人)
2010-07-15 05:54:20
藤沢映画は原作がよいせいか、どの作品も品質が安定しているのでお薦めできます。是非観て下さい(劇場は年配の人ばかりですが・・)。
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これも観ました (H先輩)
2011-07-19 12:56:43
レンタルDVDで観ました。分かり易くていい映画でした。ラストの殺陣シーンはリアルでしたね。星3~4ですね。
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H先輩へ (ノリの東京の友人)
2011-07-20 07:55:18
時代劇映画も観られるんですね。是非、他の藤沢映画や「最後の忠臣蔵」も観て下さい(少し違う意味で座頭市ザ・ラストも観て下さい)。

現在劇場公開中の藤沢映画の「小川の辺(ほとり)」も完成度の高い作品なので、劇場かDVDが出たら観て下さい。お薦めします。

ちなみに私が一番好きな藤沢映画は「隠し剣・鬼の爪」です。
作品の総合的な完成度では一番ではありませんがラストが大好きです。松たか子さんが可愛い過ぎます。「告白」のラストの怖い松さんとは真逆ですね。
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時代劇好きですよ (H先輩)
2011-07-20 12:45:26
「隠し剣」も「たそがれ」も「キムタク」も観てます。「隠し剣」は永瀬正敏の演技に驚いた記憶があります。私も大好きな映画です。松たか子もいいのですが、藤沢映画に出てくる女性は全員「こんな人が嫁さんならなぁ」と思ってまうので。
藤沢映画ではないですが「雨あがる」も好きな映画です。共通しているのは時代考証がしっかりしていて、殺陣シーンがリアルで、女性が美しい、っていう点でしょうかね。

「座頭市ザ・ラスト」? 絶対に観ません。
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H先輩へ (ノリの東京の友人)
2011-07-20 17:52:58
時代劇がお好きでしたか。長い付き合いですが知らない事もあるんですね。
それならば、是非、今年のマイアカデミー賞の候補の「最後の忠臣蔵」を観て感想を聞かせて下さい(雨あがるは私も好きですよ)。

時代劇とは違いますが、H先輩が以前薦めていた「ザ・パシフィック」のブルーレイBOXが発売されたので、次回の給料で購入する予定です。観るのが楽しみです。
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小川の辺 (H先輩)
2012-02-21 08:34:57
観たけど・・・。同じ東山の出演作品では「山桜」の方が数段上だと思います。
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H先輩へ (ノリの東京の友人)
2012-02-21 19:21:23
 連続のコメントありがとうございます。時代劇お好きですね。

 「小川の辺」は完成度は高いと今も私は思っていますが、話の「面白さ」に関しては他の藤沢映画と比べるといまひとつだと私も思います(私も山桜の方が数倍好きです)。登場人物の誰にも感情移入しずらいですし、話も予想通りの展開で終わりますしね。
 「山桜」の記事(2008年6月10日)にも書きましたが、藤沢作品を原作通りに映画するのも嬉しいのですが、原作をハミ出す冒険もして欲しいと思っています。

 まだご覧になっていないようならば、北川景子さん主演の藤沢映画の「花のあと」を観て感想を教えて下さい。私の感想は2010年の3月21日に記事にしています。
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花のあと (h先輩)
2012-02-21 21:23:40
以前お会いした時に感想は話ましたよ。意見も一致したよね? 「北川景子がなぁ…」で。
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H先輩へ (ノリの東京の友人)
2012-02-22 06:27:07
 そうでしたね。話をして同意見だったような覚えがあります。H先輩とは映画の話をよくするので記憶がこんがらがってしまいました。すみません。
 日本の時代劇ではありませんが、中国映画の「王妃の紋章」もお薦めです(2008年5月7日に記事)。これも観てましたっけ?。
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