マレーシアマイセカンドホームプログラム当局は2014年9月15日付けで、定期預金に関するお知らせの第2弾を発表しました。
その具体的な内容を説明する前にまずプログラム参加条件の中で、定期預金に関係する規定をおさらいしておきます(これは既に当ブログで複数の記事に渡って詳細に説明していることです)。
50歳以上の者の承認に際しては次のどちらかを選択できる:
・マレーシアにある銀行に定期預金口座を開設して RM 15万を預ける、
または
・政府認定の年金額が毎月 RM 1万あることを証明する
50歳未満の者の場合は、定期預金口座の額がRM 30万になる。いうまでもなく年金額の選択はありません。
プログラム当局は発表したお知らせの第1弾については、2014年6月末掲載の次の記事をクリックしてまずご覧ください: 『プログラム参加者が参加条件の1つとして開設する定期預金口座は移管できない、というお知らせを解説する』
その記事内でイントラアジアのコメントとして次のように書きました:「そもそもマレーシアマイセカンドホーム当局は、なぜ定期預金口座の移管を認めていたのであろうか?
中略
マレーシアマイセカンドホームセンターが参加者のこういった一連の行為を全て監視しているとは思えない。さらに各銀行が、参加者がその銀行に開設している定期預金口座に関してマレーシアマイセカンドホームセンターに毎年定期報告している、といったことはありえない。
要するに、口座移管を認めることは、不正行為が発生する可能性が生まれる芽を作っているといえそうです。」
今回発表された第2弾はイントラアジアのコメントで指摘したことに関係しているかのような推測を抱きます。
そこでプログラム当局が発表したお知らせを次に載せます。
【定期預金はプログラム当局が指定した銀行に預けること、というお知らせ -2014年9月15日付け】
全てのマレーシアマイセカンドホーム(MM2H)参加者は定期預金口座を開設する際は、マレーシアマイセカンドホームセンターが示した銀行リストに載っている銀行だけを選ばなければなりません。この規定は2014年10月1日から実施する。
この銀行リストは公式サイトの"Fixed Deposit Account" 項目内の"Panel of Banks"に載っています。
以上
その銀行リストをここに載せておきます:
AFFIN BANK BERHAD
ALLIANCE BANK MALAYSIA BERHAD
AMBANK BANK BERHAD
BANK OF CHINA (MALAYSIA) BERHAD
CIMB BANK BERHAD
HONG LEONG BANK BERHAD
HSBC BANK MALAYSIA BERHAD
INDUSTRIAL AND COMMERCIAL BANK OF CHINA (MALAYSIA) BERHAD
MAYBANK (MALAYSIA) BERHAD
PUBLIC BANK BERHAD
【イントラアジアのコメント】
現時点では10行の銀行名が載っている。なお マレーシア語単語である BERHAD とは、ブルハットと発音して、全てではないが一般的には上場会社を意味する。
お知らせには、既に以前からのプログラム参加者の場合はどうなるのかの説明がありません。常識的に捉えれば、そういう既参加者の場合はこの新規定の対象外となるでしょう。既参加者がプログラム参加後の10年更新の際に、銀行リストの銀行へ定期預金の預け直しを指示されるかもしれませんが、マレーシアマイセカンドホームプログラムサイトの文章の常で、舌足らずなお知らせです。
それよりもイントラアジアが指摘したいことがある。10行中の2行が中国の銀行だ、現地法人とはいえなぜわざわざ中国の外資銀行を2校も含めているのか、理解に苦しむ。
もちろん近年のプログラム参加者数で過半数を占める中国人参加者への便宜を図ってのことだろうが、あまりにも”中国人参加者への便宜”が過ぎる。
なぜならマレーシアマイセカンドホームプログラムは、マレーシアに益をもたらす狙いで国が定めた引退者・移住者対象の在住優遇プログラムのはずだからです。定期預金ぐらいはマレーシア資本の銀行に預けさせるべきであり、それは参加者にとってなんら難しいことではない。
外資銀行をあげるならばまず、マレーシアの地で100年前後も営業しており、国内に複数の支店網を持つ Standard Chartered Bank Malaysia と HSBC Malaysia という老舗の銀行です。HSBC は上記10行の1つに含まれていますね。
さらに中国の銀行2校がマレーシアに設立されるより前からマレーシアで外銀として営業しているはずのいくつもの外資銀行がある、例えばオランダ、英国、日本、複数の中東国家など。なおこれらの外資銀行は支店網がない。
だから外資銀行の中で、中国の銀行中の2行が銀行リストに加えてあるのは、かなり中国人向けに便宜を図った扱いという感じをぬぐえない。
マレーシアマイセカンドホームプログラムではこの数年中国からの参加者が過半数を占めるという独占状態になってしまった、加えて定期預金預けの指定銀行に中国の銀行2行まで加えている。
プログラムをある特定の1か国からだけの参加者が独占するような状態は良くない、1か国の参加者のためにより便宜を図るような方向性にすべきではない。マレーシアマイセカンドホームプログラムを2003年の開始時以来観察し解説している者として、残念に思います。
【マレーシアマイセカンドホームセンターで尋ねた】
2014年9月下旬に Putrajayaのマレーシアマイセカンドホームセンターを訪れて、担当職員に会い、この統計の奇妙さを含めて公式サイトにいくつもある不明瞭な文章や疑問点を尋ねました(会話は主としてマレーシア語です)。なお担当職員とはセンターの窓口で書類受付をしている女性たちのことではありません。
定期預金の件だけは、別の職員が現れて手短に説明してくれました。
その説明の中に、公式サイトの”Fixed Deposit Account(定期預金口座)”のページにも、ここで紹介している”お知らせ”にも書かれていないことがありました:それは指定銀行であってもプログラム参加者が定期預金口座の開設ができるのは、本店及び支店の場合はごく限られた支店に限られるということです。
サイトで該当ページを開き、10行載っているリストからある銀行名をクリックすると、本店の住所などが表示される。中には Public Bank のように限定数の支店名も表示される銀行もあるが、2014年9月時点では本店だけの銀行が過半数を占める。要するに、銀行リストに載っていない支店には定期預金口座を開設できないということです。
その職員の話では、定期預金口座開設ができる支店名は今後増えていくでしょう、とのことでした。従って最新の銀行名と支店名は公式サイトの該当ページで確認してください。
上記の『プログラム参加者が参加条件の1つとして開設する定期預金口座は移管できない、というお知らせを解説する』内でイントラアジアが指摘した、推測した点はほぼ正しかったようです。
要するに、プログラム参加者が、マレーシアに数多くある銀行の中で任意の銀行本店またはその支店に定期預金口座を開設しては、プログラム当局はとても把握できない。定期預金口座はプログラム参加当初は必ず開設することになるが、その後の推移全てをプログラム当局が管理するわけではない。 10年後のプログラム参加更新時に改めて定期預金口座保持の確認はします。
銀行または支店の中には、プログラム当局の承認なしには解約、預け直しなどはできないというマレーシアマイセカンドホームの規定をよく知らない窓口が出てきても不思議ではない。
そこでマレーシアマイセカンドホームプログラム当局は、前回のお知らせで定期預金口座の移管を禁止し、今回のお知らせで参加者が預けられる銀行と支店をごく限定した、ということでしょう。
定期預金関連を担当する職員の説明とイントラアジアの返答から、以上のような推測がほぼ正しかったことがわかりました。
その後マレーシアマイセカンドホームサイトに、また新たに定期預金に関するお知らせ、2014年10月17日付け、が掲載されました。以下はそのお知らせ内容です。
【マレーシアマイセカンドホーム(MM2H) プログラム下における定期預金に関して】
-2014年10月17日、 マレーシアマイセカンドホームセンター
定期預金はマレーシア国内のどの銀行にも預けられます。
その定期預金を引き出すためには、マレーシアマイセカンドホームセンターの事前承認を得なければなりません。この条件に従わなかった場合は、マレーシアマイセカンドホーム(で交付された)社会訪問パスと多重回数入国査証を直ちに取り消しすことになります。
注:次の最後の一行は英語自体が少し間違っているが次のような意味です、
マレーシアマイセカンドホーム専用窓口を備えた銀行は Bank of China と Public Bank です。
【イントラアジアのコメント】
この10月17日付けお知らせを掲載した頃でしょう、プログラム当局は上段で紹介した【定期預金はプログラム当局が指定した銀行に預けることというお知らせ -2014年9月15日付け】をマレーシアマイセカンドホームサイトから削除してしまいました。サイト内を探しても見つかりません。
プログラム当局が公式にお知らせとして掲載したものを後日削除するというのは本来あるべき行為ではありませんね。「何月何日付けお知らせを次のように変更/修正する」といった文言を入れて、新しいお知らせを出すべきです。
マレーシアマイセカンドホームサイトでは、過去に通知を出したお知らせを2014年、2013年、2012年、というように各年毎にまとめて掲載している。過去のお知らせを保存して載せている以上、一度掲載したお知らせを恣意的に削除するというのは、役所のプロトコルにも違反すると言える。
【外国人の長期居住者、移住者優遇プログラムは常に悪用される可能性を潜めている】
マレーシアマイセカンドホームプログラム当局がプログラム参加者に対して、「定期預金口座の移管を禁止する -2014年6月25日付け」、次いで「定期預金口座をプログラム当局の事前承認なく解約してはいけない」 というお知らせを続けざまに発表したことは、要するに次の事象が少なからず起きていたことを推測させるに十分足ります:
・参加者が、定期預金口座を移管するとの名目で預けていた銀行の定期預金口座を解約した後も、別の銀行に定期預金口座を開設しない。
・参加者がプログラム当局が知らないうちに勝手に定期預金口座を解約してしまう。
国内に何百とある銀行支店で、マレーシアマイセカンドホームプログラム参加者として必須の定期預金口座を開設する。しかし何百とある支店の窓口担当者全てが、マレーシアマイセカンドホームプログラムの規定をよく知っていることは期待できない。中にはほとんど知らないまたはうっかりして、参加者による定期預金口座の解約を認めてしまうことは十分考えられる。
マレーシアマイセカンドホームプログラム当局は、参加者の定期預金口座をオンラインで監視しているわけではない、そもそも他人の銀行口座を外部が監視することが許されないのは言うまでもない。従って参加者による勝手な口座解約や移管をプログラム当局はよく把握できないのは明らかです。
プログラムの規定上、参加者が銀行に定期預金口座を開設して預けなければならない額は RM 15万/ 30万です、この額はかなりの額になる。そこで、自分でその資金を工面できない参加者が誰かにまたはどこかの組織に一時的に金を都合してもらい、1年位経ってから解約してしまい、借りた相手に返却する。この種の手口が起きてきたことは単なる推測にすぎないとは思いません。
だからこそ、プログラム当局はいかに参加者に定期預金口座規定を確実に守らせるかに苦慮していることだろうと思われます。
外国籍の人が一度プログラムに参加を認められれば、10年間は無条件でマレーシアに滞在でき且つ自由に出入国できる。これはある種の良からぬ目的を持った人たちまたはある国の人たちにとっては、願ってもない好条件です。
プログラム参加者は一切のビジネス行為を禁止されているし、当局から許可を得たうえで規定時間以内しか働けない。しかし、隠れて商売・ビジネスをする、無許可で働く、偽装結婚しやすい、何らかの個人背景を隠す、などといった違法行為をしたい人が世の中にいるだろうことは、想像に難くない。
マレーシアマイセカンドホームプログラムのような、移住者優遇プログラムは常に悪用される可能性がある、これは世界共通のことでしょう。