マレーシアマイセカンドホームプログラム参加者が住宅を購入する場合、銀行ローンが得られることは、2012年4月17日付け当ブログ記事 『マレーシアマイセカンドホームプログラムに参加後コンドミニアムを購入する-前編』で触れました。
以前イントラアジアは、プログラムの趣旨から参加者が住宅ローンを得られるのはかなり難しいのではと思っていたのですが、近年の情報ではそうでもないことが感じられます。というか恐らく近年になって、プログラム参加者に住宅ローンをより認める方向になったのかもしれません。
ツーリズムマレーシアが発行しているマレーシアマイセカンドホームプログラムの簡単紹介パンフレット(1枚もの)には、プログラム参加者は、(その信頼性が評価されることを前提に)住宅価格の最高80%まで住宅ローンを得ることができる、と書かれています。
(銀行業務に関する)素人考えでも、プログラム参加者であれば誰でも 80%もの住宅ローンが得られるとは思えませんから、どのような申請・審査条件があるのかを知りたくなりました。
しかしマレーシアマイセカンドホーム公式サイトは住宅ローンのことに一言も触れていません。つまり参加者が住宅ローンを得られる、得られないということすら書いてありません。 マレーシアマイセカンドホームセンターが発行している(英語)文書類にもまず見当たりません(触れている文書があるかもしれないが、イントラアジアは手にしたことがない)
こういった点が、イントラアジアが以前から主張しているように、マレーシアマイセカンドホームプログラムの公開規定・条件は不充分であり、網羅したものではないという例です。
当ブログでは、翻訳する場合はあくまでも原サイトである英語ページまたはマレーシアマイセカンドホーム当局発行の英語文書を基にして訳し、それに独自の取材と解説及び分析を加えて、ここに掲載しています。原サイト日本語版ページや日本語情報が基準になるわけではないので一切参照及び関知はしません。
【銀行は融資の具体的な条件を記したパンフレットを発行していない】
そこでまず、マレーシアの2大銀行:MayBank, CIMB の支店へ行って住宅ローンに関する小冊子を求めたのですが、見あたりません。窓口で尋ねると、住宅ローンに絞ったパンフレットや小冊子はないので、ローンの担当者に会って尋ねてくれとのことでした。
ということで別の日に、CIMB銀行のクアラルンプール中心部にある支店を訪れて、ローン担当者に話を聞きました。イントラアジアは CIMBにも口座を持っているので、たまに使う支店を訪ねたわけです。どの銀行支店でもそうですが、日常業務窓口とは別に、それぞれ部門担当者がいます。
【CIMB銀行支店でローン担当者から話を聞く】
質問趣旨はマレーシアマイセカンドホームプログラム参加者が住宅ローンを得られる条件のあらましです。
以下はローン担当者の話を基にします。
住宅ローンに関する規定文書は、一般向けに発行していないとのこと。理由としては、様々なケースがあってそれらを全部規定できない、ローン申請者の提出する書類に基づいて担当者を窓口として銀行が審査・判断するからということのようです。
担当者の女性はとりたててマレーシアマイセカンドホームプログラムに詳しいわけではないことは会話からすぐわかりましたが、銀行がマレーシアマイセカンドホームプログラムの審査に関与するわけではないので、それは問題ではありません。
マレーシアマイセカンドホームプログラム参加者向けの”特別な”住宅ローンはありません。外国人にも、多少の違いはあるが基本的には一般国民銀行利用者向けのローン条件と審査を適用するということです。中でもマレーシア国民と違うのは、その外国人の自国での資産と収入を審査の条件にするという点でしょう。マレーシアでビジネスを展開している外国人であれば、審査用資料の提出自体は容易になるはずですが(英訳の必要はないし、会計事務所から得やすい)、日本人プログラム参加者の場合はまず当てはまらないので、ここでは関係ないでしょう。
マレーシアマイセカンドホームプログラム参加者は確かに最大で80%のローンを得られるが、あくまでもそのローン申請をいろんな必要条件から審査した上で決めるので、何パーセント得られるかは、申請者によって異なる、と担当者は言っていました。
参加者にビジネス収入があればそれが一番良いが、もちろん資産が十分ある、具体的には銀行口座に十分な残高があればそれも条件を満たすことになる。
プログラム参加者は一般に引退者・退職者が多い、とりわけ日本人の場合は定収入的なビジネス収入がない人が多いと伝えました。
【住宅ローン申請の条件と要項】
主要な点をまとめますと:
・申請時に(自国の)銀行口座残高を証明する必要がある。
直近6ヶ月間の口座取引明細書を提出。口座が複数あればその合計額でみる。もちろん英訳して証明を受ける必要がある。このあたりの手続は申請者がマレーシアマイセカンドホームセンターに提出する書類と同様です。
・銀行側はその6ヶ月間の各月残高を平均することで、月平均残高を算出する。
・ローンを受ける際の基になる金額は その月平均残高の 20%です。
そこでイントラアジアは、複数口座の合計でリンギット換算 RM 100万になる例を上げて確認しました。 月平均残高がRM 100万ですから RM 20万のローンを得られるということです。参考:2012年中頃の外為市場レートなら、RM 100万は2600万円前後になる
・銀行口座以外にも、保有する国債も資産に認めるとのことです。もちろんこういったことは全てそれを銀行側に文書で証明する必要があります。
では株券、社債などはどうかは尋ねませんでしたが、銀行が手元資産として認めるかどうかは保証の限りではありません。個々の申請交渉の場で尋ねてください。
・ローン期間
借主が70歳になるまでの年数。つまり借主が60歳であれば、最長で10年間。
・ローン形式
通常の借主が1人の場合(プログラムの主参加者が借主になる場合)の他に、共同借主という形も取れる、つまり配偶者との連名で融資を受ける。
・ローン金利
2012年6月時点での銀行の基本貸し出し金利は年利6.6%
住宅ローンの場合はこの基本貸し出し金利からいわばボーナス割引が適用される。
割引率はローン金額によって異なる。
CIMB 提供のローン金利早見表から抜粋(2012年1月から3月末まで適用と書かれている)
住宅不動産の対象地:クアラルンプール、スランゴール州、ペナン島(ペナン州本土側を除く)
住宅ローン保険の有無に関係なく、 固定期間 3年、
・ローン融資額 RM 20万未満:基本貸出金利 - 1.70%
・ローン融資額 RM 20万以上:基本貸出金利 - 2.0%
・ローン融資額 RM 35万以上:基本貸出金利 - 2.2%
・ローン融資額 RM 50万以上:基本貸出金利 - 2.4% ただし固定期間なし
その他の対象地の場合は省略しますが、金利がわずかに違う程度です。
Intraasia注:こういった数字は時と共に変化することはご承知ください。
ローン担当者からの注意点
住宅ローンを受けようとする人は、不動産デベロッパー、不動産代理業者に住宅購入のための手付金を支払う前に必ず銀行でローン申請の相談をすること。 なぜなら対象不動産の価格は不動産デベロッパー、不動産代理業者の提示価格ではなく、あくまでも銀行側が評価する市場価格だからです。
ローンの借り手は不動産代理店などと話を全て進めてから銀行ローンの申請をする、ようなことはすべきではない。
【CIMB 公式サイトにおける不動産ローンに関する情報】
次はCIMB の公式サイト(www.cimbbank.com.my)から住宅ローンに関する情報を探しました。CIMB は東南アジア諸国に系列銀行を展開していますが、ここではもちろんマレーシアサイトだけを参照します。
サイトの個人向け部門の中に不動産融資という項目がある。言うまでもなく、全て英語ページです。特に関係ありそうな部分を抜粋して紹介しておきます。
次のような一節がある:
CIMB銀行はまたマレーシアマイセカンドホームプログラム参加者にマレーシアマイセカンドホーム融資パッケージを提供しています。このパッケージは CFと呼ばれる”住居に適合証明”が発行されている完成住宅で且つその価格がRM 25万以上の住宅に対してです。融資期間は5年から20年間または70歳になるまで、そのどちらかが先に達した方を適用します。融資は最大で85%までとなる。
これに申請するためには、必要箇所を全て記入した申請書、パスポート、観光省発行のマレーシアマイセカンドホームプログラム参加者であることを証明する文書、住宅売買契約書をそろえて、お近くのCIMB銀行支店に提出します。
【イントラアジアのコメント】
皆さんもきっと気づかれたように、購入できる最低価格が依然としてRM 25万以上と書かれている。実はイントラアジアが会って尋ねた上記担当者もRM 25万以上だと言っていました。イントラアジアは、RM 50万以上に既に変更されたと伝えたが、彼女は気にしていない様子でした。なお最大融資割合は80%なのか、85%なのかは大して問題ではありませんね。
内閣直属の経済企画部が1年半ほど前に、外国人が購入可能な住宅不動産の最低価格は RM 50万以上と変更したので、それ以来マレーシアマイセカンドホームプログラム当局はこの数字を引用しています。当ブログで既に掲載している、経済企画部の発表内容を参考資料としてここにも載せておきます:
参考資料
Guidelines On The Acquisition Of Properties (effective on 1 January 2011)
Economic Planning Unit, Prime Minister's Department
GUIDELINE ON THE ACQUISITION OF PROPERTIES
Acquisition of residential unit by foreign interest valued at RM500,000 and above.This acquisition, however, do not require the approval of the Economic Planning Unit, Prime Minister's Department but falls under the purview of the State Authorities
不思議なことは、トップ銀行たる CIMBの公式サイトでは未だに旧来のRM 25万以上という数字が使われていることです。CIMB側の単なる更新情報確認・訂正のミスなのかもしれません。それとも現実には依然としてこの額で審査が行われているのかもしれません。(あくまでも推測ですよ)
外国人購入の住宅不動産の承認は昔は FIC が行っていたが、現在では規定条件を外れた物件以外はFICの承認不要です。よって FIC がチェックしないのでどの機関が行うのだろうか? ということは銀行がローン申請を認めてしまえば、そのまま売買契約は進行するのだろうか? このあたりの実務に関してはイントラアジアは知りません。
【銀行の提供する融資パッケージを選ぶことでローンを受ける】
またCIMBサイトに戻ります。
CIMB の人気ある商品として、いくつかの商品つまり不動産融資パッケージ名を列挙し、それには早見表形式で簡単な説明が付いている。マレーシア人や外国人が不動産を購入する場合、このパッケージを利用することで銀行融資が得られるということになります。
「あなたに最も合ったホーム融資パッケージが必要になります。ぴったりあったパッケージを選ぶことが大切です」 と書いてある。
その商品中つまり融資パッケージ中、マレーシアマイセカンドホームプログラム参加者が購入できるのは、2つだけです。なおイスラムバンキング部門でもプログラム参加者が購入できる融資パッケージが2つあるが、日本人参加者にはまず関係ないでしょうから省きます。
2つの融資パッケージとは、商品名 HomeLoan と HomeFlexi です。早見表から抜粋します(よく意味がわからない点は省略):
HomeLoan
・当初の返済は低額を望まれる方向け、または元本の半額を返済期間中に返済し、残り半額を返済期間終了時に一括返済される方向け
・返済期間の最初3年間は利子だけを支払う
・最初の3年間または5年間だけは固定金利を選択できる
・上限を定めた金利を選択できる、最初の3年間または5年間 基本貸出金利が上限
HomeFlexi
・返済に柔軟性があることで、お好きな額をいつでも返済
・融資口座と当座預金口座を複合することで余分なお金を引き出せる
・小切手帳を発行します
・最低融資額はRM 15万
こういったCIMBサイトに載っている、住宅ローンの簡単な説明と早見表にも、融資に必要な条件は書かれていません。つまりローン申込者の年収が幾ら以上とか資産額はいくら以上という具体的な必要条件は一切書かれていません。あくまでも窓口であるローン担当者が申請者の状況をその場である程度判断し、申請書類を銀行内部で審査するということでしょう。こういうことから、不動産ローンを受けるための具体的な必要条件を書いた、パンフレット・小冊子を銀行は発行していないのであろう、と推測できます。
【CIMBの不動産ローン申請書式(Property Financing Application) 】
銀行で入手した申請書を jpeg 画像の形で別ページに掲載していますので、ホームページのマレーシアマイセカンドホーム項目にある 不動産ローン申請書式 をクリックしてご覧ください。申請書全4ページの内の3ページ分です。ここに掲載すると画像が縮小されてしまい文字が読みづらいので、別ページに掲載です。
【ローン担当者と面談で質問し、準備する】
どの銀行のサイトでも同じようなものでしょう、CIMBサイトの不動産融資ページは、専門・業界用語と用法が織り込まれた文章なので、読解だけで内容を十分に理解するのはかなり難しいと言えます。 従って間違い解釈を避けるために、(銀行業務、とりわけ融資業務に詳しくない)イントラアジアはこれ以上のことは書きません。
CIMB サイトでも次のように書かれている:Face to Face with our CIMB Home Financing Consultant (CIMBのホーム融資コンサルタントと面談)
このように、住宅ローン申請を考えている方はまず銀行支店を訪れて、面談の形で詳細を尋ねる、ローン申請内容を詰めていくことが必須と言えそうです。
最後に購入する住宅に掛ける保険についてもサイトは説明していますので、抜粋して紹介しておきます。
【住宅ローン用保険もある】
あなたの住宅を守るための保険
住宅保険が必要ですか? 住宅保険の種類
CIMB銀行では、あなたが住宅を購入される時に3種の保険を提供しています。
1.団体抵当条件保険 (GMTA) と団体抵当条項タカフル(GMTT)
この保険は、不幸な出来事が起きて死亡または永久全身障害になられた場合に、あなたの住宅ローンを解決します。
2.住宅オーナー保険
この保険は、火災、落雷、荒天の影響によって建物が損壊または損傷することに対してあなたの住宅を補償します。
3.ホームガード
これは、火災、落雷、爆発、航空機による被害、台風など、突風、地震、火山活動、洪水、盗難または空き巣によって起こされた家財道具と身の回り品の損失または損傷に対して被保険者に補償するための保険です。
Intraasia注:Maybank のサイトを見ると、融資を受ける人は(団体抵当条件保険 GMTAと似ような)保険 MRTAに加入しなければならないと書いてある。ということは、CIMB でも同じだろうと推測されます。
【イントラアジアのひとこと】
外国人が住宅ローン申請する際は、1回の申請でしかも30分程度の時間で全て片付くようなことはまず難しいと思われます。かなりの準備が必要ですし、あらかじめ相談も必要です。 まして国情も違い、言語も違うので、時間がかかることは十分予期されておくべきです。
ここに例示したのはCIMB の場合ですから、マレーシアの他の銀行ではもちろん幾分違う点があるはずです。しかしながら、基本は同じと考えていいのではないでしょうか。
2大銀行のもう1つ Maybankサイトの該当ページを見ると、情報の現し方が違います。例えば、ウエブ上で返済月額を計算するサービスがある。ただしこれはマレーシア人で給与やビジネスでの定収入者を主対象としたものなので、マレーシアマイセカンドホームプログラム参加者の場合は、その機能をそのまま使えないでしょう。
そのうちに、他の銀行での住宅ローン申請に関する情報も書いてみようと思っています。ただしいつになるかは全く未定です。