白洲 正子文学逍遥記

故・白洲正子様の執筆された作品を読み、その読後感と併せて能楽と能面、仏像と仏像彫刻、日本人形、日本伝統美術についてご紹介

十一面観音 巡礼

2011-08-12 | 日本の伝統芸能
日本の伝統芸術と芸能





観音巡礼



    
十一面観音像
 
 
十一面観音像
室生寺
 
日本の一般の方々が「観音」「観音さま」というと、どの観音を直ぐに連想されるでしょうか。
聖観音><十一面観音><千手観音>の3体が主で、次に<如意輪観音><馬頭観音>と続くのではないでしょうか。
 
聖観音菩薩は観音の中心的存在なので、疑問の余地はないのですが、十一面・千手観音になるのは何故でしょうか。いろいろな考え方があります。
 
聖観音は奈良の南都仏教の寺院に多く見られます。あるいは禅宗系の寺院にも多く見られます。 しかし、他の観音像は密教系寺院に多く見られる傾向があります。
 
ご存知の通り仏教には顕教密教という大きなカテゴリーがあります。
 
密教(秘密仏教) = 真言宗、天台宗
顕教         = 密教以外の仏教
 
と大まかな考え方で宜しいと思いますが。
 
<十一面観音><千手観音>及び<如意輪観音>etcは密教系の観音さまですので、高野山や比叡山、醍醐寺,室生寺などの密教寺院に拝観に参れば、必ずお目にかかれると云うことになります。
 
<比叡山では浄土系の寺院だってあるじゃないか>と言われる向きもあろうかと思いますが、比叡山の歴史は誠に複雑ですので、ここはご紹介のみ。
密教系の観音は古代においてヒンズー教の神々で、その後仏教に取り入れられていったという歴史的な事由が有るからです。
 
十一面観音は農耕関係の世界の荒振る神であり、大変庶民に恐れられたヒンズー世界の神でも有りました。その関係からか北近江の農村には、ビックリするような美術的にも完成度の高い十一面観音像が安置されております。

渡岸寺観音堂(向源寺)

十一面観音

 
十一面観音の国宝第1号になった仏像ですが、美術的な観点からも正に十一面観音の白眉と言っても過言ではないと思います。
 
私が数年間此処の観音堂の近くに住んでおりましたので、誠にご縁の深い観音様でした。他の寺院と違って村の一般の方がお世話しておりますので、触れるような傍まで近寄れる事ができますので、一般の方や仏像の研究者や、彫刻家までが親しく訪れるようです。
 
仏像の背後に廻って、有名な<大爆笑面>を目の前で、観ることが出来ました。また、窪んだところに僅かな金粉の跡を見ることが出来、当初は金無垢の仏像であった事がわかります。今は何処まで近づけるのでしょうか?
 
 
 
十一面観音像の秀作は結構存在しますが、渡岸寺観音堂の十一面観音の完成度は抜群です。ある時、どこかの若い娘さんが、観音の前にお座りしたまま暫しの間、陶酔したような状態で居たのを見たことがありました。
生身の眼でなく、心の眼で観ていたのでしょうか。感応同交していたのでしょうか。
 
私の事で恐縮ですが、私と観音さまとの出会いは、バシャと拝観の際に水を頭からぶっ掛けられてのご縁ですから、否応無しです。
何故他の観音さまでなく、十一面観音様なのかは今もって解りません。
これが仏縁というのでしょうか。
 
 
先般少しご紹介しました、白洲 正子様が十一面観音とご縁を持たれたのが、何時のことなのかは存じませんが、あるいは何時の間にか自然にご縁を得て居られたのかもしれません。 仏縁というものはそのようなものなのかもしれません。
 
この項のTOPに掲げられている、室生寺の十一面観音は私の大好きな観音さまで、今までに4回ほど室生路を尋ねました。
可愛らしい村娘のような顔立ちの観音さまです。白洲様や瀬戸内寂聴様も非常に愛されておられていたとか、聞き及んでおります。
室生路詣では別の機会にでもお話しましよう。
 
 
次回に続きます> 

    2011 08 12