崖っぷちロー

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阿部謹也「中世を旅する人びと」読了

2009-04-10 05:27:42 | 小説・本
阿部謹也「中世を旅する人びと ヨーロッパ庶民生活点描」ちくま学芸文庫。1200円。

どうも最近こういう本ばかり読んでいる気がする。
そんな暇があるなら法律の本を読むべきなのだが。

本書は、著名な歴史学者が書いた、いわゆる「名著」の文庫版(らしい)。
初版が1978年だから、もう30年も前の本ということになる。

中世ヨーロッパ世界における農民、浴場主、居酒屋の主人、羊飼い、ジプシー等々の庶民の生活を描いている。
どうも雑誌に連載していた記事を集めたものが主体らしく、
<歴史学の学術書>というよりは、<読み物>に近い。

普通の小説やエッセーを読むような感覚で読めるし、
おそらく、ライトノベルを読む感覚の延長で読んでも大丈夫だろう。
 (もちろん、それでは著者の意図を読み取り切れていないのかもしれないが、
  それでも十分ではないかと思う。芦部本を趣味で読むという感覚に近いか。)

文庫本としては決して安い方ではないが、内容との比較で言えばお買い得だといえるでしょし、
かなりお手軽であるといえる。
これで、「金と香辛料」の文庫版が出てくれればどんなにありがたいことだろうか。


***
もちろん、本書も「狼と香辛料」に関連づけて読んだという部分が無いではない。

第1節「村の道と街道」や第9節「牧人・羊飼い」の部分などは、
「狼と香辛料」第2巻に登場する羊飼いノーラとの関係で興味深く読める。
例えば、教会がノーラに対して「異教の魔術を使っているのではないかと疑っている」(265頁)
その背景に農耕文化と牧畜文化の衝突ないし交流を読み取ることもできるのかもしれない。

あるいは、第4節「居酒屋・旅籠」の部分は、村の居酒屋・旅籠について記述されているが、
そこで述べられている居酒屋の役割や旅籠の情景などは、
ホロとロレンスが行っている行商の旅のイメージを膨らませてくれるでしょう。
 (「狼と香辛料」第5巻で出てくる宿屋の価値などについても)

残念なのは、「旅をする人」としては決して少なくない割合が居たであろう「行商人」について、
ダイレクトに記述してくれていないということか。
「旅」という点では、特筆に値しないということなのかもしれないし、
あるいは雑誌の編集上の都合だったのかもしれないが……。


***
ちょこちょこと「狼と香辛料」の感想やレビューをあさっていたところ、
為になりそうなブログを発見。発売当初の記事でしょうか?
かわいい狼神ホロと若い行商人ロレンスの二人旅。支倉凍砂『狼と香辛料』第1巻の感想その1



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