崖っぷちロー

チラ裏的ブログ。ここは「崖っぷち」シリーズ・あん○ーそん様とは関係ありません。レイアウト変更でいろいろ崩れ中

「貧乏貴族と金持貴族」読了

2010-11-04 16:07:06 | 小説・本
マイケル・L. ブッシュ (著)永井三明(監訳), 和栗珠里(訳), 和栗了(訳)『貧乏貴族と金持貴族』

ヨーロッパの貴族社会には均質性と結合性があった。
(略)
しかしながら、この結合性と均質性は往々にして表面的なものであって、実際には、貴族階級は多様でばらばらであった。

貧困貴族は、貴族が没落した結果や、土地所有者を周期的に悩ませた経済危機の産物であるというよりもむしろ、恒常的な存在であることの方が多かった。

貴族階級に新しく加わる者は多く、去る者は少なかったため、諸特権を共有する貴族階級の仲にはあらゆる職業が見出され、財産も家柄も千差万別だったのである。



第1章から「貴族の多様性」という章題であり、上記のような内容の記述がならび、我々が持つ<一様に裕福で優雅な貴族階級>というイメージは否定される。<没落貴族の悲哀>の希少価値も下がるというものだ。

「均質的な外見とは裏腹に貴族階級がいかに多様で不均質であったか、ということが本書を貫くテーマであり、著者は、貴族階級に対して抱かれがちな紋切型のイメージに激しい揺さぶりをかける。」という訳者の言葉そのままだ。

この主題がおもしろいのは当然だが、検証のための各種データも豊富で、そのデータ自体も大変興味深い。

本書は、約300ページという分量の割には4000円もするので、なかなか手を出しづらい本ではないかと思う。ただ、この分野の本は少なく、他の本も基本的に高いのであきらめるしかない。

プラス要素
・訳注もあり、一部省略されているものの原注もある。
・参考文献も省略されておらず、また、邦訳参考文献も掲載されている。
・索引が充実しており、原語の綴りも併記されている。

*** 気になった記述など
第2章 貴族社会の規模 貴族の人口密度の違い
・大規模
 ポーランド(16世紀) 全人口の6~8%が貴族。
      (18世紀) 8~10%

 スペイン(1700年) 12~13%  
     (1797年) 14%

・小規模
 デンマーク(1660年) 0.4%
      (1720年) 0.2%

・一つの国の中でも、貴族人口には極端な多様性があった
 スペイン
 ブルゴスとレオンの周辺では、1591年に貴族は全人口の46.5%もおり、
 その数値は国の平均の四倍であった。
 カスティリャのガリシア地方とカスティリャ・ラ・ヌエバ地方(略)では貴族の人口が5%を超えることはなかった。

 フランスでは、ノルマンディー、ブルターニュ、アンジュー、パワトゥ、メーヌ、トゥルーズなどで貴族の人口密度は比較的高く、2~3%に達した。
 反対に、アルザスロレーヌ、フランシュコンテ、ベリー、ニヴェルネ、シャンパーニュ、ドーフィネ、そして17世紀後半頃のプロヴァンスでは、貴族の人口は全人口の1%未満を示していた。


第3章 貴族社会の構造 定式化されない格差
・ロシア
 1834年に500人以上の男性農奴を所有していた貴族は、農奴を所有する貴族全体の3%にすぎなかった。
 一方、100人程度の男性農奴しか持たない貴族は84%にものぼった。
 5万7500家族は20人以下の男性農奴しか持たなかった

第6章 居住習慣
11、12世紀 3000~4000もの都市から成るネットワークがヨーロッパに出現。
1300年 500の都市が人口5000人以上の規模
      125の都市は1万人以上の人口
      4の都市は10万人を越える。(パリ、ナポリ、ヴェネツィア、パレルモ)

イギリスの貴族について>>小林章夫「イギリス貴族」読了


最新の画像もっと見る

コメントを投稿