崖っぷちロー

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東京都青少年健全育成条例と表現の自由問題1

2010-12-08 13:08:52 | ニュース系
 2010年2月以来、東京都青少年の健全な育成に関する条例(以下、都条例)改正案が「非実在青少年」 をキーワードとして論争を呼び、同年6月に否決されたことは記憶に新しい。この同改正案が少しばかりの修正を加えられて、同年11月に再び公開・提出された。

 この修正後改正案は、「非実在青少年」 というキーワードこそ削除されたものの、新たに「刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為又は婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為を、不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現すること 」を規制の対象とするなど(「非実在犯罪」などと呼ばれている )、多くの問題を抱えている。これには弁護士・法学者や漫画家・出版業界関係者などをはじめ、多くの一般市民からも強い反対意見が出されている。

 参照:日弁連会長声明
 参照:東京弁護士会会長声明
 参照:都青少年健全育成条例改正案:著名漫画家ら反対声明
 
 加えて、都条例の改正に積極的な石原慎太郎都知事や猪瀬直樹副知事らの発言の数々も議論を呼んでいる。しかし、都知事副知事の不適切発言問題は場外乱闘にすぎない。重要なのは、条例の中身(条文)であり、条例制定のプロセスであり、東京都の表現規制に対する根本的な態度の問題である。 

 条文については上記弁護士会の声明が問題点を指摘しているほか、以下のサイトでより踏み込んだ解説がある
 参照:弁護士山口貴士大いに語る
  
 また、条例制定プロセスについても同ブログが問題点を指摘している。
 参照:第156号議案「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例」提出に至る経緯の問題点


 もっとも、批評家の東浩紀氏などからは、規制反対派は原理原則論に固執するべきではなく、規制を推進する(あるいは支持する)一般大衆をどう説得するかという観点から戦略を見直すべきであるとの指摘がなされている。

@hazuma hiroki azuma
討論番組でもこのツイッターでも、ただ反対するだけじゃなくて、マンガ規制問題をきっかけに「どうやったら性的な虚構表現が溢れる社会をコントロールする か」についてみなで考えることが重要だ、というのがぼくの立場。でも規制反対運動のひとは、あまりそういう厄介なことには関心ないみたいだよね。
http://twitter.com/#!/hazuma/status/12222226170384385

@hazuma hiroki azuma
もともとぼくはこの問題については、1.世界的に児童性愛禁止の方向は動かない 2.日本の虚構表現には児童性愛に近似のものが数多くある 3.この矛盾をどう解決するか という観点にしか興味がないし、それこそが本質だと思っている。だから先日のニコ生でも児童ポルノの話しをした。
http://twitter.com/#!/hazuma/status/12227970865303553

@hazuma hiroki azuma
おれが言ってるのは、「立場を置き換えて考えてみろ、規制が必要だと思っているやつをそれで論破できるのか」って話ですよ。
http://twitter.com/#!/hazuma/status/12284631688679425

@hazuma hiroki azuma
でもその「先」になにも見えないんじゃ、同じこと(規制出現→反対運動)繰り返すだけなんじゃないの? おれはそれを指摘してるんだけど…… RT @GoITO だから、藤本由香里さんが「とにかく条文が問題」と繰り返し主張するのは正しい。

http://twitter.com/#!/hazuma/status/12280994782519296
 
 これをその他の発言とあわせて再構成すると、以下のような趣旨だと思われる。
①実写の児童ポルノ規制は世界の趨勢で日本も逆らえない、
②日本の虚構表現には児童ポルノ的なものが多いが、実写の児童ポルノの規制はやむ得ないとして、どうやって虚構表現を救うべきか、
③そのためには原理原則論ではなく虚構表現の(自主)規制についても前向きに議論する必要がある、
④そうでなければ規制推進派を説得できず、
⑤結局児童ポルノ規制の巻き添えで虚構表現の規制までされてしまうことになる。

 私は規制反対派の原理原則論が無意味だとは思わないが、同時に、この東氏の指摘には首肯すべきものがあるとも思う。規制反対派は今回の都条例改正案についてはきっちりと検証して論理的に批判しつつ、これからの日本においてあるべきワイセツ物規制の形を前向きに議論するという、二つの作業を同時にする必要があるだろう。

東京都青少年健全育成条例と表現の自由問題2


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