崖っぷちロー

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『ヴェルサイユ宮殿に暮らす-優雅で悲惨な宮廷生活』読了

2010-07-03 11:25:02 | 小説・本
ウィリアム・リッチー・ニュートン著/北浦春香訳 ヴェルサイユ宮殿に暮らす-優雅で悲惨な宮廷生活 読了。

本屋で偶然見つけた一冊。
多くの人がイメージするヴェルサイユ宮殿の豪華絢爛な生活とは反対の、
こつこつとした、あるいはジメジメとした、生活の裏側に焦点を当てたもの。
目次を見ただけでも、そこらへんにあるヴェルサイユ宮殿物とは違うことが分かる筈だ。

プロローグ
住居-居住不足に翻弄される貴族たち
食事-豪華な食事は誰のものか
水-きれいな水は必需品
火-寒い部屋は火事の危険と隣り合わせ
照明-窓と鏡と蝋燭だのみの薄暗い部屋
掃除-清潔さとは無縁の宮殿
洗濯-洗って干す場所を求めて右往左往
エピローグ



冒頭、「住居」から驚きの連続である。
金と権力を持ち、勝手気ままに振舞っている印象のある貴族たちが(官僚達が、使用人たちが)
国王の寵愛を受けその権力の恩恵を受けるために、ヴェルサイユ宮殿の小さなパイを巡って、
優雅さとは程遠いイス取りゲームを繰り広げている。

しかも、その小さなパイは、本書を読み進めていけば分かるように、決して住み心地のいいものではない。
暗い、狭い、古い、汚い、くさい、寒い、暑い……
私には、現代日本の安アパートの方がよっぽどマシなように思える。
「なるほどこの住環境の悪さも革命の遠因の一つなのかもしれない」と思わせるに足るものである。

本書について不満があるとすれば
・図表が少ない
・22頁にも及ぶという原注がカットされている
というあたりか。
とはいえ、値段も高いというわけではなく、文章も読みやすい。

ヴェルサイユ宮殿に観光に行く際には、予習として読んでおくといいのではないだろうか。


***
綺麗な(中世)~近代ヨーロッパが実は汚いということはそれなりに知っているつもりであったが、
本書に書かれているエピソードはそれを凌駕するものであった。

例えば、「宮殿にトイレが無く、貴婦人達も庭で用を足していた」というようなことはよく目にしていた。
だが、「王族棟」であるにもかかわらず使用人たちが廊下や階段で用を足していたというのは驚きだ(95頁)。

***
(中世)~近代ヨーロッパ的な宮殿をフィクションとして描写する際にも、
本書のような視点を一つ二つ取り入れれば、より深みのある世界が書けるのではないだろうか。
あるいは、本書で書かれているような問題点を克服するような仕組みを考え、完璧な世界を構築するもの一興かもしれない。

***
著者のウィリアムさんには未邦訳の著書がまだまだあるようで、そちらの方も是非出版していただきたいものです。


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