崖っぷちロー

チラ裏的ブログ。ここは「崖っぷち」シリーズ・あん○ーそん様とは関係ありません。レイアウト変更でいろいろ崩れ中

国立メディア芸術総合センターについて

2009-05-30 22:39:14 | その他・趣味
>アニメやマンガ、ゲームの「殿堂」の創設に文化庁が乗り出した。
>日本が世界に誇る「メディア芸術」と位置づけ、その発信拠点として「国立メディア芸術総合センター」を東京都内につくる。

>国がアニメやマンガに特化した施設をつくるのは初めて。
>センターではアニメなどの映像作品を鑑賞したり、マンガを読んだり、ゲームを体験したりできる。
>政府の新経済対策の一つとして、設立に向けた予算117億円を盛り込んだ。
アニメやゲームに国の「殿堂」 東京都内に設立構想

だそうですね。ちょっと前から話題になっています。賛否両論あるようで。

反対派の方。
>「漫画家も読者も日々の生活が苦しい中、ハコモノと天下りが残るなんて最低のギャグです」
>こう語るのは、女性漫画家の牧村しのぶさん。

国立マンガセンターに女性漫画家激怒「最低のギャグ」
 ……誰??

賛成派の方。
>センターは決して「マンガ図書館」でも「国立アニメ殿堂」という性格の物ではありません。
>日本は外国に認めてもらわないと我が国の文化を低く見る傾向が未だにあります。
>いつまでもそれではいけない、国を挙げて「日本のメディア芸術はこんなにすばらしい」という事を訴えて行く為の拠点が必要です。

 里中満智子オフィシャルサイト


***
このタイミングに計画することについては置いておく。
また、文化庁の資料も印刷用紙が切れているので読んでいません。
以下、個人的な、「ぼくのかんがえたさいきょうのしりょうかん」。


映画や、アニメやマンガなどの、いわゆるサブカルチャーについても、
それを文化財として保護していく必要がある。
そのための手段は様々なものが考えられるが、資料の保存・閲覧施設は必要不可欠なものだと考えられる。

現在でも完成品については国会図書館への収納で大部分がカバーされている。
しかし、ここで保存・閲覧に供するべき物は、「完成品」に限られるものではない。
(また、国会図書館のキャパの問題もある。)

例えば、映画の脚本や完成品には使われなかった未使用フィルム、
マンガの生原稿やアニメのセル・背景・コンテ・レイアウトなど、
製作のプロセスにおいて作られた物も資料として保存する必要がある。

これは、文学作品の生原稿や、絵画の完成画の下に隠された下書きの
重要性について考えれば、特に突飛な話だとはならないだろう。

現在の我々は、失われた過去の文豪達の生原稿の発掘がなされるたびに驚き喜んでいるが、
ならば、そもそも現在及び将来の物が失われないようにする方法を考えるべきなのだ。


***
作者や民間の製作会社や出版社が保存すればいいという意見は当然あり得る。
しかし、物理的な問題があるし、現に製作現場では多くの資料がすでに放棄されている。

また、この厳しい経済情勢の中で、会社等は常に倒産のリスクがあるわけで、
そうなってしまえば資料が散逸・喪失してしまう可能性は極めて高い。

***
現実的な話としては、宮崎駿亡き後のジブリスタジオはどうなるのか?
その時、宮崎駿が作成した数々の資料はどこまで保存されるのか?
(あるいは、現状で、どこまで残されているのか?)

ジブリはまだ美術館を独自に持っているから良いとしても、
他の著名クリエイター達はどうか?

現在無名でも、後世において評価が高まったクリエイターがいた場合、
その人に関係する資料はどうなってしまっているのだろうか?

ゲームラボ6月号「ゲーム実況超入門ガイド」/実況野郎文芸部(B-TEAM)

2009-05-23 13:37:21 | ニコニコ動画・ネットとか
雑誌「ゲームラボ」の6月号の特集は「ゲーム実況超入門ガイド」。
そういうわけで買ってみた。(これも発売からは結構経っているのかも)

この特集に全部で11頁も裂かれていたのが驚き。
今回の特集を作成するにあたっては、実況野郎文芸部(B-TEAM)が協力しているとのことで、
これまた驚き。


*** 内容的には
1.ゲーム実況動画の歩き方
 hacchiさんや囲炉裏氏、ゆうきななえさん達の動画を紹介。
 動画の特徴ごとに分類してその代表を……といった感じ。

2.実況動画名作劇場
 もるひね氏や幕末志士さんらの動画を紹介。
 上とあわせて18シリーズほど。

 また、ゆっくり実況とマリオと遊戯王のMAD的動画もおまけとして紹介。

3.ゲーム実況動画ができるまで
 ルーツ氏宅でゲーム実況プレイ動画の作成の様子を密着取材。
 使用している機材なども乗っているので、これから動画を作ろうという人にもいいかもしれない。
 
4.生配信を楽しもう
 動画をアップする手法ではなく、生で配信する方法についてRevin氏が説明している。
 
5.実況小町
 加藤氏が、ゲーム実況プレイ動画に関係する質問について答えるQ&A。
 ブログのコメントレスみたいな感じです。

6.実況者座談会 ニコニコ動画は実況者の戦場?
 構成はたろちん。B-TEAMの4人が座談会をしています。
 ニコニコ動画のコメントについての部分なんかはおもしろい。


***
実況野郎文芸部(B-TEAM)の活動の幅が広がっていて結構驚き。
出来た頃はあんまり注目していなかったので、今更ながら慌ててぐぐったりしました。

アライユキコ氏がいろいろ頑張っているようですね。
アライユキコ氏がゲーム実況プレイ動画にはまっているらしいということは以前から知っていましたが、
まさかこのような具体的な行動に結びつくとは思いませんでしたw
「ニコニコ動画」の有名実況プレイヤー4名が、Webマガジン幻冬舎で連載開始


ニコニコ動画の人気ゲーム実況者たちに聞く-大ブームの「ゲーム実況動画」ってなんですか?
こちらのインタビュー記事では、Revin氏が濱野さんの「アーキテクチャの生態系」にも触れている。
そういえばRevin氏は東浩紀の本も読んでいたよなと思い出しました。

涼宮ハルヒの憂鬱 2期新作話放送「笹の葉ラプソディ」

2009-05-22 01:46:47 | その他・趣味
テレビ和歌山等のミス(あるいは戦略的リーク)によって、新作話の放送がされるという話が
確度を持って以来の盛り上がりというのは見ていているだけでも面白い。

アニメ自体の感想としては、
内容がテンポ早すぎて盛り上がりに欠けるとか、
声優の声が微妙に変わっていて心配だとか、
キャラデザが変わっていて違和感があるとか、
作画(キャラの身体のバランス等)が微妙におかしいだとか、
EDのインパクトはやはり一期のアレを超えられなかったとか、
そんな感じでしょうか?
でも、そういう話はどうでもいいというか。

個人的には、最速放送を見るために地方に泊まりに行くという、
そういう発想があるということを知っただけでも満足です。
良い意味で馬鹿すぎます。
 (ホテル内の写真がpされている)

地方局2局だけでの放送のわりには某掲示板も盛り上がっていましたし、
「涼宮ハルヒの憂鬱」というブランドのプレゼンスの強さを再確認。

今期は一人勝ちに近いかと思われていた「けいおん!」を喰ってしまう可能性もあるかもしれませんね。


これから各レビューサイトで感想がアップされまくるのだろうし、
(本当はいけないだろうけど)キャプチャ画像を使った考察的なものも多々行われるんでしょう。
そのとき、「けいおん!」と「涼宮ハルヒの憂鬱」の勢力図がどのようなものになるか?
とても楽しみです。


***
まぁ、だからといって「けいおん!」と「涼宮ハルヒの憂鬱」を対立させるということではないのですが。

***ホテル組の方は無事に見ることができたようです。
413 風の谷の名無しさん@実況は実況板で  sageDATE:2009/05/22(金) 01:41:51 ID:eS9IPbvQ
ホテル組だが、実況早すぎてどうにもならんかったわw

http://imepita.jp/20090522/028840
http://imepita.jp/20090522/048620
http://imepita.jp/20090522/052600
http://imepita.jp/20090522/051860
http://imepita.jp/20090522/053260
http://imepita.jp/20090522/046210

何か貼りまくってすまん。

とにかく笹の葉が流れて嬉しかったよ。 
今日はみんなお疲れ!!

以上、ホテルオークラ神戸よりお送りいたしました。


メーカーによるゲーム実況プレイ動画/デッドボールPメジャーデビュー

2009-05-21 10:30:10 | ニコニコ動画・ネットとか
1.メーカーによるゲーム実況プレイ動画
ゲームメーカー公認でゲーム実況をやるという話、あるいは、
ゲームを作った人間自身が実況をやるという話は以前に書いたとおりですが。
 ゲーム実況プレイ動画の発展2
 ルーツ実況動画は黒歴史?

私の知らない間に、またしても新しい展開があったようです(もう3ヶ月も前の話)。

『セブンスドラゴン』プレイ動画 前編
DSのためのRPG『セブンスドラゴン』広報宇田が、本編のプレイ動画をお届けします。
プロデューサー小玉理恵子、ディレクター新納一哉、通りすがりのセガ社員ミヤザワが、
リアルタイムに突っ込みをいれる実況動画になっています。
グダグタ動画をお楽しみください。初公開のドラゴン戦など、新情報も満載です。


これは、ゲームメーカー自身が、自分のゲームの実況プレイ動画を作ってしまったというもの。

もちろん、この一事をもって、
<ゲームメーカーがゲーム実況プレイ動画の宣伝力を認めた>などと言うことはできない。
広報のやり方の一つとして実験していると見るのが無難でしょう。

さて、この動画についてのざっくりとした感想としては、
①実況するゲームの選択についてよく考えられている。
②ニコニコ的2ちゃんねる的な反商業主義との摩擦を少なくしようという意思が見られる。
③その意味では、ニコニコ市場に商品を貼り付けるのが常に得策であるとは言えないだろう。
って感じですかね。

直接的な売上げアップにどれほどつながったのかは不明ですが、
前編で7万再生近く行っているというのは、それなりの成功なのではないでしょうか。
但し、後編が2万6千再生にまで落ち込んでいるのは、工夫の余地があるということかもしれない。

動画としてのクオリティが高く、販促効果も十分に発揮しながら、
ユーザーの反商業主義を刺激しないように気を付けるというのは、なかなか難しいのでしょう。

今後、セガが他のゲームソフトでもゲーム実況プレイ動画を利用した広報を行うのか?、
また、他のゲームメーカーの中で後に続くところが表れるのか?
なかなか楽しみです。
(他のゲームメーカーでもやってるところがあるとかいう記事を見たような気もするのだけれど……)


***
2.デッドボールPメジャーデビュー
あのボーカロイド界隈で有名なデッドボールPことタケポンのメジャーデビューCDが発売になった。
「EXIT TUNES PRESENTS THE VERY BEST OF デッドボールP loves 初音ミク」
amazonnで予約してたら前日に来ました。

いやぁ、まさかこういう形でCDが出るとは思いませんでしたね。
しかもオリコンデイリーで8位らしい
めでたいかぎりです


このエントリで同時に書いたのは、デッドボールPもゲーム実況プレイ動画をうpしていたから。
びっくりw
今回のCDの販促用ゲームの実況として撮られたものらしい。
なんか声が落ち着いているというか、以前よりも大人な感じがします(?)

これも、ゲーム製作者側の人間が実況しているという点では、
メーカーによるゲーム実況プレイ動画としての意味も見いだせるのかもしれません。
まぁ、ルーツ氏との間くらいの位置づけになるでしょうか?


***5月21日12時追記
ゲーム実況プレイがビジネスとして成立させる上での様々な障害
 さて、最近注目されている実況プレイですが、
プレイしているところを利用するプロモーションというのは最近始まったことではなく、
『ゼルダの伝説時のオカリナ』以来、任天堂が芸能人を使ってやっているCMがあります。
そして最近では「みんなのニンテンドーチャンネル」内で、お笑い芸人がそれをやっている動画が見られます。


この方の指摘ももっともな様に思う。
が、任天堂が芸能人を使っているCMとの共通点・相違点を考える作業をするほどの知識は私にはない。

「みんなのニンテンドーチャンネル」というのは、存在自体知らなかったのですが、
DSやwiiを持っていないと見られないようですね。
残念です。

ただ、ここで紹介されている「5番6番」という芸人さんはゲーム好きで有名な方でして、
そういや「FEZ メルファリアANNEX」もゲーム実況プレイだわと言うことを思い出しましたw

現在のところ私は、
①ゲームを現に作った人間(製作者)がゲーム実況プレイをする。
②ゲームを作った制作者側の人間がゲーム実況プレイをする。
③ゲームを作った制作者からゲーム実況プレイを依頼される。
④ゲームを作った制作者にゲーム実況プレイをすることを公認される。
という4つの形を区別しているのですが、これが意義のある物なのかというと……。

現実とアニメ-「けいおん!」

2009-05-18 08:35:33 | その他・趣味
「そういえば先日取り上げたユリイカの論考の作者と東浩紀が対談している記事があったな」と、
ふと思い出し、再読してみた。

「ユリイカ2008年6月号 特集*マンガ批評の新展開」に掲載されている、
東浩紀・伊藤剛・金田淳子「失われた成熟を求めて マンガ・オタク・批評」という鼎談記事。
昔読んだ時はサラッと流していたのだけど、今読むと案外面白く感じられた。

その中で気になったのが、「70-80年代で止まるアニメ・マンガ」という部分。
アニメやマンガで書かれる風景や環境が現実について行っていないのではないかという話。

伊藤 たとえば、住宅街のそこらじゅうにコインパーキングがあるいまの風景は
 マンガやアニメで描かれうるの?とかいった話ですね。

伊藤 いま、われわれの日常の中にある様々なものを「物語」に登場させようとするときに、
 無意識の「検閲」みたいなものが働くといったような話だと思う。
 例えば、携帯電話をマンガは小道具として使い切れていない感じがあるんですね。

東 マンガやアニメが最先端の想像力ではなくなっているのではないかと言ったけど、
 それ以上に、彼らは70年代とか80年代の日本を舞台にしないと
 物語を作れなくなってきているのかもしれない。
  

「たしかに」とも思う。
携帯電話をマンガは小道具として使い切ったのだって、マンガやアニメではなく、
ヤンキー(郊外型進家族)と親和性の高いケータイ小説でしょうし。
 (速水健朗「ケータイ小説的。」とかでしか知りませんが。)
 

***
ただ、最近のアニメの様子、
とくに現在放送中のアニメ「けいおん!」なんかを見ていると(正確には、視ている人を観ていると)、
どうもこういう分析から少しはずれた物も出てきているのではないかとも思えてくる。

現実に存在する風景を作品の舞台として持ってきているのは周知の通り。
かなり多くの人がいわゆる「聖地」探し的な見方を楽しんでいる。
 2009年春アニメ「けいおん!」の舞台
 2009年春アニメ「けいおん!」の舞台2

もちろん、「聖地」が現実世界にあるというのはこの作品に限ったことではなく、
アルプスの少女ハイジやフランダースの犬の頃から有る。

ただ、「けいおん!」の場合、そういう背景(舞台)としてのリアリティ以上に、
作品世界そのものが現実世界と強くつながっているように見える。

それは、作中に登場する小物類(楽器・ティーセット・雑誌・カメラ・携帯など)が、
異常なまでに悉く現実に存在するアイテムを元にして描かれているから。
 けいおん!まとめサイト-作中登場の小物他

ここまでくると、意識的な「検閲」は当然あるとしても、
「無意識の『検閲』」という問題はクリアしているのはないかと思えてくるし、
<けいおん!はゼロ年代の日本を舞台にすることが出来たアニメだ>
と言わざるを得ないのではないかとも思えてくる。
 (もちろん、他にもそういうアニメがあるのかもしれないが、詳しくないので私には分からない)


ただし、そのような舞台の上で動くキャラクター達は、
典型的なアニメ・漫画的キャラクターのように見えるので、
過去と現在がハイブリッドになったアニメだと言うのが適切なのかもしれない。

「図説 交易のヨーロッパ史」読了

2009-05-10 07:34:09 | 小説・本
ヒストリエの五巻を買いに本屋に行った。
売ってなかった。
気付いたら本書を手にしていた。

A.プレシ/O.フェルターク著、高橋清徳編訳「図説 交易のヨーロッパ史 物・人・市場・ルート」
(東洋書林、2000年)3800円。

本書は、ヨーロッパで行われてきた商業の有様を古代~現代という長いスパンで広く記述したもの。

編訳者のあとがきの言葉を借りるなら、
「一般の読者を想定して基礎知識を過不足なく提供しつつ、
 ヨーロッパが歩んだ長い時間とヨーロッパ空間の歴史的形成を一つの視野におさめて、
 分かりやすく概観した」
ものである。

また、タイトルに「図説」という言葉を使っていることからも分かるように、
多数の地図、イラスト、写真が掲載されているので、
書かれている内容についてイメージを持ちやすくなっている。

特に、付図として掲載されている8つの地図及び解説は交易路や主要都市、取扱商品等を
視覚的に分かりやすく整理してくれていて便利。

それなりに読みやすい本文と図版があいまって、
ヨーロッパの商業の様相のアウトラインを理解するにはもってこいの一冊だろう。


ただし、本書には残念な点もある。
①本の厚さの割には値段が高いこと。
 これで2800円ならば文句はなかった。

②原著が掲載していた「豊富な」カラー図版が入れ替えられているらしいとのこと。
 原著のカラー図版に加えて本書の図版が掲載されているのであれば、
 3800円でも良いような気がする。
 また、ページの綴じ込みの関係で一部図版が見にくい部分があるのも残念ではある。

③参考文献が記載されていないこと(図版の典拠はある)。
 もちろん私が外国の文献を読むことはないと思うが、必要な人には必要だろう。
 ただ、原著にない、語句の索引や訳註があるのは喜ばしい。


***
上述のように、時間的にも空間的にもかなり広く書かれているから、
自分の興味のあるいろんな地域・時代と紐付けて読むことができる。

スカンジナビア諸民族の略奪=商業ルートに関する記述や
付図3「ヴァイキングとヴァラングの商業路」などは、「ヴィンランド・サガ」と関連して。

また、第2章の「ロンドンの覇権」あたりは、「エマ」と関連して。

などなど。
もっとも、詳しく知りたいのであればそれぞれについて専門に書かれたものを読むべきなのでしょうが。
(でも、遍歴商人やシャンパーニュの大市に焦点を当てた(日本語の)本なんてあるんでしょうかね?)

 
***
同じく長い時間・広い地域を対象にしたものとしては、
斎藤寛海「中世ヨーロッパの貿易」『中世史講座 第11巻 中世における地域・民族の交流』(学生社、1996年)
も面白く読めた。

これは13~16世紀の地中海・大西洋における貿易を概観しており、
また、ヴェネチアやジェノヴァの貿易のあり方についてもコンパクトに書いている。
それに、「2新しい貿易 (二)経営方法の発展」では、
定着商業(商会)が行っていた通信や清算の手法についても触れられている。
 (シャンパーニュの大市に象徴される遍歴商業の衰退後の商業のあり方として)

例えば、15世紀初頃に遠隔地の支店からとあるヴェネチア商人(本店)に送られた通信文書を見ると、
価格報告書、購入量報告書、勘定報告書、一般書簡などが用いられていたことが分かるという。
本論文ではその内容なども解説されている。


***
ところで、狼と香辛料第11巻で登場した正教徒の慣用句「足の埃を」というのは、
現実世界から着想を得たものなのでしょうか?

本書73頁には、
大市は時間・空間の点で需要と供給を集中させ、たえず移動している「ほこりまみれの足」の商人たちに、
便利で確実な出会いの場所を提供した。

という記述がある。

ここで「ほこりまみれの足」という語句が括弧書きにされていることからすると、
なにやら意味のあるフレーズか定型句・慣用句なのではないだろうかと思えてくるし、
ここから変形されたものだろうかという想像もできる。

狼と香辛料第11巻読了

2009-05-10 00:37:45 | 小説・本
狼と香辛料の最新巻(11巻)が発売された(公式の発売日は10日らしい)。

既出の短編2つと、書き下ろしの中編が1つという構成。
以下、感想みたいなもの。


1.狼と黄金色の約束
 「これぞ狼と香辛料である。」という一話。
 商売の話あり、歴史的な小ネタあり、ホロとロレンスの掛け合いあり、
 そして、ホロの知恵で問題を克服するという、まさに「これぞ」。

 今回の話でホロが使った問題解決の手法
 =殴るなどして子どもに強烈な記憶を残させるというのは、
 現実の中世世界でも用いられた手法のようだ。

 阿部謹也「中世を旅する人びと」(ちくま学芸文庫)28頁など。
 「幼いころのこうしたショッキングな体験のなかで境界の石の記憶は
  終生忘れられぬ出来事としてのこり、ひとたび境界争いが起こると
  70歳を超える老人が半世紀以上もまえの石の位置を正確に証言しうるのである。」

 
2.狼と若草色の寄り道
 あとがきの言葉を借りると、「激甘仕様」。

3.黒狼の揺り籠
 以前出てきた女商人「エーブ」の過去話。
 かわいらしいエーブが、あの「エーブ」になるまでの経緯(というかその始まり)が書かれている。

 160頁もあるので、読み応えもある。
 内容的にも、よちよち歩きのエーブの雰囲気が出ていていい。
 話の仕掛け自体も面白いのだが……

 契約書の写しを作らないのはおかしいという部分は読者なら誰でも分かる。
 しかし、契約書(注文書)の文言を改ざんしてしまうというのは、
 その物語世界で使われている文字や単語が分からない以上、
 分かりにくいし伝わりにくいような……。
 やや、狐につままれた感がある。

4.あとがき
 ノーラの中編が読めるのか読めないのか。
 なんともヤキモキさせられるw
 
<<前:「狼と香辛料」第10巻読了 狼と香辛料第12巻読了:次>>

「狼と西洋文明」読了

2009-05-07 00:33:45 | 小説・本
クロード・カトリーヌ ラガッシュ , ジル ラガッシュ著, 高橋正男訳 「狼と西洋文明」(八坂書房、1989)を読んでみた。

amazonnのカスタマーレビューで適切に紹介されているように、
西洋(フランス)と狼の関係について広く書かれたもの。
西洋社会から見た狼のイメージや伝承、狼による被害、狼と人間の戦いなどなど。

数多くの言い伝えやエピソード、書物や新聞・公文書等を参照しており、
非常に細かい部分まで調べられている。

読み物としても、また、資料としても、大変興味深いものとなっている。


***
本書では、第六章「狼を殺せ」で、狼狩りの制度や方法などを紹介した後、
第七章「狼の復権」、第八章「狼は復帰するか」で狼のイメージに対する変化や
ほとんど全滅に近い状態の狼の保護などについても触れている。

ここで筆者は、狼と友情の絆で結ばれるにいたる人間が登場する「青少年向けの最近の作品」についても言及し、
「狼を理想化してしまう」ような「この種の物語は狼を復権させることはできない」と言う。
それは、犬と人間との間に結ばれるような友情が、
あたかも狼と人間との間にも成立するかのように描いてしまうところに「嘘」があるからだろう。

この点、マリ・コルモン著「ビーバー親父」(フラマリオン社)という絵本で描かれている
少女マルラゲットの冒険のエピソードは示唆的である。
 (もっとも、本書の構成としては、フリッツ・メニテール著「幽霊狼」の方が直接的なのだが)

この絵本の中で、少女は一頭の大きな狼との間に友情を育む。
しかし、少女と狼にとって、別れは避けられないものである。
「彼女は、おたがいはそれぞれの掟に従わなくてはならないこと、
 そしてそれぞれの道を歩まねばならないことを悟る」
のである(231頁)。

さて、私たちが親しんでいる「狼と香辛料」はどのような結末になるのだろうか。
「狼と香辛料」の物語が終わる時、それはラガッシュ氏の目にはどのように映るのだろうか。

***
本書では羊飼いが狼から身を守るため唱える「狼への祈り」なども紹介されている。
これはキリスト教的な信仰に基づくもので、その内容も明確である。
「狼よ、私はここにまします大神の名においてお前を祓う。
 大悪魔が聖なるミサに祈りを捧げる司祭に何の力も持たないように、
 お前は私にも私の動物たちの上にも、力を持たないだろう」
(14頁)

狼と香辛料第2巻で羊飼いノーラがした旅の安全祈願のお祈りが
「羊飼い自身も本当の意味はしらない」(98頁)とされていることとは対照的に見える。

ただし、狼に対する祈りは他にも多々あり、異様なものもあるようようだ。
本書では、狼人間に対するわけのわからない祈り(まじない)も紹介されている。
「キリストの内なる健全な人の決まり文句は
 いつも、ア、ア、ア、狼男に反対。
 そして、この世から、オ、オ、オ、出て行け。
 オン、オン、アン、アン、そして狼男は死んだ。」
など(109頁)。


ニコニコ動画での有料動画配信について

2009-05-02 15:41:19 | ニコニコ動画・ネットとか
なんと、私の知らない間にニコニコ動画では有料動画の配信サービスが着々と進んでいるらしい。

有料チャンネルでの有料配信はだいぶ前からあったらしく、
無料チャンネルでの有料配信も1ヶ月ほど前から始まっていたらしい。
【公式ch】有料動画はじめました。

今更気付いたのは、天体戦士サンレッドの動画の再生数の低さに疑問を感じ、
動画を選択してみたから。

で、サービスの概要などを見てみて、「こりゃぁだめだろ…」と思ったのですが、
流石に1ヶ月も前の出来事なので、書きたいことはすでにあらかた書かれている。
ニコニコ動画で有料動画配信が始まったわけですが

なので、「ぼくのかんがえたさいきょうのにこにこどうが」でも書こうかと。
黒字化案やらなんやらでさんざん書かれているでしょうけど。


1.大前提
 ニコニコ動画から動画だけを抜き出すことができないようにする。
 あるいは、現在よりも技術的に困難にする。

2.アニメの本放送を公式チャンネルとして配信する。
 現状、アニメの放送は非常識な時間帯(深夜というか早朝)にされることが多く、
 また、放送局が限られていることから地域によって見られない場合が多い。
 たとえ地方で視聴できたとしても、最速放送の地域から数日~数週間遅れることもある。
 これではネタ消費を妨げるだけだし、アニメの違法交換・違法投稿を誘発するだけである。


 重要なのは、本放送の最速と同時に(或いは数時間のタイムラグ)で配信することでしょう。
 新作アニメが最速放送とほぼ同時に全て(全番組・全話)適法に視聴できるとなれば、
 既存のアニメ配信事業との違い(ニコニコ動画の利点)と相俟って、
 相当数の固定客を維持することができるでしょう。

 なお、この段階で視聴をプレミアム会員に限定するのは一つの戦略としてありでしょう。

3.1~3話は(半)永久に無料配信とする。
 有料配信を目論むのであれば、その番組に対して注目を集め、興味を持たせる必要がある。
 現状でも、サンレッドなどは1話は常時無料のようですが、それでは不十分でしょう。
 非常に面白い番組であれば1話だけでも十分に視聴者の心を掴めるでしょうが、
 通常の番組であれば、3話ほど見せて「続きが気になる」状態にさせる必要があるでしょう。
  (魅力のない番組ならそこで切られて当然)

4.それ以降は有料配信とする。
 これは通常どおり。
 無料配信し終わった話数を順次有料配信していく。

 但し、その際、最初に放送した動画の再生数・コメントを引き継ぐ必要がある。
 前出のブログでも指摘されていますが、疑似同期が愉しめないならニコニコ動画のアドバンテージは無いに等しい。
 
 加えて、無料放送時の再生数・コメントがいわゆる「サクラ」の機能を果たすでしょう。