崖っぷちロー

チラ裏的ブログ。ここは「崖っぷち」シリーズ・あん○ーそん様とは関係ありません。レイアウト変更でいろいろ崩れ中

朝まで生テレビ:東浩紀退場劇

2010-07-26 19:11:16 | その他・趣味
遅ればせながら、先日放送の「朝まで生テレビ 激論!若者不幸社会」の感想でも。
(うろ覚えなので正確ではないと思いますが)

議論の出発点となったのは、レスター大学による幸福度調査。日本は90位。
幸福度を測る要素としては、
1.家族関係   
2.家計の状況  
3.雇用状況  
4.コミュニティと友人  
5.健康 
6.個人の自由  
7.個人の価値観
などがあるらしい。http://keddie.cocolog-nifty.com/sunny/2010/04/post-4316.html

番組の前半は、主に経済的側面の議論。
景気の低迷、充分に働くことができないこと、家計などを問題視。

これに対して、東さんが「つまらない。そういうことは前提で、その先の話をしたい」旨の発言。
これをうけて、堀紘一さんが「人のことを批判する前に話せ」と返し、エスカレート。
堀紘一さんの「じゃあ帰れよ」発言を受けて、東浩紀さんがあっさり退場という流れ。
(東さんのツイートを見るに、youtubeに退場シーンの抜粋があるようです)

おそらく、最初の東さんの発言は、去年と同様、意図的なパフォーマンスでしょう。
そして、あっさり退場したことも、(ブロックを多用する等の)ツイッター上での東さんの振る舞いからすると、
その延長線上にあり、想定の範囲内というところではないでしょうか。

***
東浩紀さん自身も、ツイッターで朝生について少し言及されている。
http://twilog.org/hazuma

>ぼくが言いたいのは、国家百年の計には文化論とか社会論「も」必要でしょう、
>財政の技術論「だけ」するのはやめようと、という当たり前の話ですよ。

http://twitter.com/hazuma/status/19534925088

これは幸福度を測る要素に何があるかを見れば分かるように、ごく当然の話。
「4.コミュニティと友人」や「7.個人の価値観」にも関わってくるでしょう。

また、福嶋麻衣子さんが村社会を肯定的に捉えなおす趣旨の発言をされていたと思うが、
これも「4.コミュニティと友人」に関わるものであり、当然出てくるべき話でしょう。

***
個人的には、番組最後の、猪子寿之さんの発言が端的で良かったように思う。

私なりに理解するところでは……

古い世代は、日本経済が右肩上がりだった時代の枠組みで「2.家計の状況」や「3.雇用状況」を重視して「幸福」を考えている。しかし、今後経済的に上を向くことが極めて困難な日本では、技術的な操作を試みたところで状況が大きく改善することはないし、人々が「幸福」だと感じるようになることもない。
その枠組み自体が失効しつつある。

ならば、経済が停滞することを前提に、「4.コミュニティと友人」や「7.個人の価値観」を重視する新しい時代の枠組みで、別の方向から人々の「幸福」を増大させることが必要なのではないか。

失効しつつある古い枠組みを新しい世代に押し付けるべきではない。

というところでしょうか……?

***参考
[社会]ブロードバンドの通信速度にいまさら感動したりしないように、現代の若者にとって「経済的豊かさ」と「幸せ/不幸」はあんまり関係がない(朝生感想)

小林章夫「イギリス貴族」読了

2010-07-15 16:37:55 | 小説・本
小林章夫「イギリス貴族」(講談社現代新書、1991年)読了。

目次
プロローグ 大英帝国の先頭に立つ者
第1章 貴族は稀族
第2章 貴族の豊かな生活
第3章 貴族の教育
第4章 ノブレス・オブリージュ
第5章 金と暇が生み出したもの
第6章 貴族の生き残り作戦
エピローグ されど、貴族

イギリス貴族の生活をいろんな局面で切り取ったもの。
中世というよりも、近~現代の貴族がメイン。
プレップスクール・パブリックスクールでの教育や、
スポーツと貴族とのかかわり、現代貴族の生計などが取り上げられているのも興味深い。

文章も、エッセー風の軽妙な語り口で、きわめて読みやすい。

また、専門書ほどの深みにはあえて入らないようにされているものの、資料や文献からの引用も多く、
巻末参考文献もコメントつきで、読書案内としても使えそうだ。

***
興味深い記述など。

・24頁 貴族の人数
 17世紀初め 約60人
 17世紀末  170人
 19世紀   300人~400人
 1987年   王族公爵5人、公爵26人、侯爵36人、伯爵192人、子爵126人、男爵482人、女伯爵5人、女男爵13人
       →885人(「英国を知る辞典」からの引用)
 
・34頁 イングランドとウェールズにおける土地所有(1870年代)
 400人の貴族が全所有地の17%にあたる572万8979エーカーを所有。(1エーカーは約1200坪)
 3000エーカー以上の地主が1288人いて、全所有地の25%所有。
 1000エーカー以上3000エーカー以下の地主が2529人いて、全所有地の約13%所有。
 →全土地所有者数のうち0.44%の人間が、全所有地の約55%を所有。

・46頁 使用人の数
 中世後半期において貴族や高位聖職者の世帯の人数は通常、100人から200人の間であった。
 使用人の大部分が男だった。(中世のノーサンバランド伯爵家では、男女の比率が166対9)

ヨーロッパ全体の貴族社会について>>「貧乏貴族と金持貴族」読了

『ヴェルサイユ宮殿に暮らす-優雅で悲惨な宮廷生活』読了

2010-07-03 11:25:02 | 小説・本
ウィリアム・リッチー・ニュートン著/北浦春香訳 ヴェルサイユ宮殿に暮らす-優雅で悲惨な宮廷生活 読了。

本屋で偶然見つけた一冊。
多くの人がイメージするヴェルサイユ宮殿の豪華絢爛な生活とは反対の、
こつこつとした、あるいはジメジメとした、生活の裏側に焦点を当てたもの。
目次を見ただけでも、そこらへんにあるヴェルサイユ宮殿物とは違うことが分かる筈だ。

プロローグ
住居-居住不足に翻弄される貴族たち
食事-豪華な食事は誰のものか
水-きれいな水は必需品
火-寒い部屋は火事の危険と隣り合わせ
照明-窓と鏡と蝋燭だのみの薄暗い部屋
掃除-清潔さとは無縁の宮殿
洗濯-洗って干す場所を求めて右往左往
エピローグ



冒頭、「住居」から驚きの連続である。
金と権力を持ち、勝手気ままに振舞っている印象のある貴族たちが(官僚達が、使用人たちが)
国王の寵愛を受けその権力の恩恵を受けるために、ヴェルサイユ宮殿の小さなパイを巡って、
優雅さとは程遠いイス取りゲームを繰り広げている。

しかも、その小さなパイは、本書を読み進めていけば分かるように、決して住み心地のいいものではない。
暗い、狭い、古い、汚い、くさい、寒い、暑い……
私には、現代日本の安アパートの方がよっぽどマシなように思える。
「なるほどこの住環境の悪さも革命の遠因の一つなのかもしれない」と思わせるに足るものである。

本書について不満があるとすれば
・図表が少ない
・22頁にも及ぶという原注がカットされている
というあたりか。
とはいえ、値段も高いというわけではなく、文章も読みやすい。

ヴェルサイユ宮殿に観光に行く際には、予習として読んでおくといいのではないだろうか。


***
綺麗な(中世)~近代ヨーロッパが実は汚いということはそれなりに知っているつもりであったが、
本書に書かれているエピソードはそれを凌駕するものであった。

例えば、「宮殿にトイレが無く、貴婦人達も庭で用を足していた」というようなことはよく目にしていた。
だが、「王族棟」であるにもかかわらず使用人たちが廊下や階段で用を足していたというのは驚きだ(95頁)。

***
(中世)~近代ヨーロッパ的な宮殿をフィクションとして描写する際にも、
本書のような視点を一つ二つ取り入れれば、より深みのある世界が書けるのではないだろうか。
あるいは、本書で書かれているような問題点を克服するような仕組みを考え、完璧な世界を構築するもの一興かもしれない。

***
著者のウィリアムさんには未邦訳の著書がまだまだあるようで、そちらの方も是非出版していただきたいものです。