崖っぷちロー

チラ裏的ブログ。ここは「崖っぷち」シリーズ・あん○ーそん様とは関係ありません。レイアウト変更でいろいろ崩れ中

民主党・鳩山内閣の政策(3):途上国温暖化対策のための供出金

2009-11-17 21:38:00 | ニュース系
前回の続きです。

(3)温暖化対策供出金
 >小沢鋭仁環境相は16日、途上国の地球温暖化対策支援のため、日本が12年までの3年間に
 >総額90億ドル(約8千億円)を拠出する方針を明らかにした。

 途上国の温暖化対策、12年までに8千億円支援 環境相


 これに対しては、財政が厳しいこの時期に8000億円の支援を決めたとして、鳩山内閣を批判するものが多い。しかし、そのような批判をする人の多くは、この記事をちゃんと読んでいないように思われる。

 日本は08年から5年間で途上国支援策として総額100億ドル規模の「クールアース・パートナーシップ」を表明していた。小沢氏が打ち出した約90億ドルのうち80億ドル近くはこの支援策でまだ実行していない分とみられるが、鳩山由紀夫首相が9月の国連気候変動サミットで表明した新規の援助額を上乗せして衣替えした。

 なので、鳩山内閣が新たに90億ドル(8000億円)の供出を決めたわけではないと考えられる。
 (ただ、本当に新たな90億ドルの支援を決めた可能性も一応残ってはいる)

 そして、もともとの「クールアース・パートナーシップ」を打ち出したのは、言うまでも無く自民党政府だ。この点を忘れてはいけないだろう。

 福田康夫総理大臣スピーチ(平成20年1月26日、於ダボス)
 >その一つの方策として、我が国は、100億ドル規模の新たな資金メカニズム(クールアース・パートナーシップ)を構築します。 
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/bunya/environment/cool_earth_j.html

 麻生太郎内閣総理大臣の欧州における政策スピーチ
 >「クールアース・パートナーシップ」に基づき、排出削減と経済成長の両立を目指す、
 >途上国に対し、日本の環境技術などを活用して、支援を行います。

 http://www.de.emb-japan.go.jp/nihongo/info/bunka-osirase/090505vertrag_aso.html


 なお、この供出が「借款」ではないことを批判する人がいる。
 しかし、もともとの計画では、5000億円分は円借款であることに注意する必要があるだろう。
  >「気候変動対策円借款」を創設し、各国の地球温暖化対策プログラムの実施等のために特別金利で5,000億円程度の資金供給を可能とする。 
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/bunya/environment/cool_earth_j.html


 この前提を踏まえた上で、この時期に増額することが適切なのかどうか等について議論をする必要がある。
 

***
そもそも、この一連の「鳩山イニシアティブ」というのは、政策決定のプロセスがまったく見えない、独断的な政策提案である。しかもその内容は、公約のパッケージである「マニフェスト」では重要視されていないものである。このような独断での政策決定(しかも国際的なもの)をすることがリーダーシップだと思っているのであれば、それは方向性がズレていると言わざるを得ないでしょう。

また、鳩山総理の「鳩山イニシアティブ」といい、民主党の一部が活発に動いている「外国人地方参政権問題」といい、「マニフェスト」に記載された公約よりも優先順位が高いように見えるのはやはりおかしいだろう。

個々の政策の内容を検討する以前に、そもそも政策の決定プロセス等に問題があるといわざるを得ない。

民主党・鳩山内閣の政策(2):友愛ボートについて

2009-11-17 21:20:08 | ニュース系
前のエントリの続き。

(2)友愛ボート
 これについては、まず週刊オブイェクトさんの一連の記事を読んだほうがいいと思います。
  驚愕!友愛ボート構想なるものは実在していた(追記訂正)
  友愛ボート構想と米太平洋軍パシフィック・パートナーシップ(追記訂正)
  鳩山首相は友愛ボート構想=米国主導のパシフィック・パートナーシップへの参加と明言(追記訂正)

 この問題は情報がかなり錯綜して、評価も二転三転した問題ですが、今は一応落ち着いています。
 要は、米軍等が従来から行っていた「パシフィック・パートナーシップ」へ参加するという計画です。
 そして、どうやら輸送艦「おおすみ」を使うことを考えているようです。
  防衛省:友愛ボートに海自輸送艦「おおすみ」活用検討


 ①この問題については、今でもこの情報を知らずに、鳩山総理の非常識な提案であるとして批判をしている人が多くいる。
  中には「平和ボケ」の提案だという人もいますが、ならば、米軍も「平和ボケ」ということになるのでしょうか?

 ②また、災害派遣に自衛艦を使うのはおかしい(飛行機でやれ)という批判がある。
  しかし、飛行機と艦船では、使用する目的も状況も異なることに注意する必要がある。
  (スマトラ沖地震の災害復興支援では、各国海軍の艦船が集まっていたことを思い出すべきでしょう)

 ③更に、自衛艦に民間人を乗せるのはおかしいという批判もある。
  しかし、そもそも各種イベントや観閲式などで、民間人が乗る機会は「普通に」存在するし、
  各種報道などが航海に密着取材することなどもあるということを押さえる必要がある。
  というか、そもそも輸送艦は災害時等に民間人を収容することも想定されています。
 
 ④加えて、NGOや他国の人間を載せるのはおかしいという批判もある。
  しかし、この「おおすみ」は、タイ陸軍部隊等をアフガニスタン近縁のインド洋沿岸へ輸送したこともある艦ですが…と。

 少なくとも以上のことを踏まえた上で、計画の是非について議論するべきでしょう。

 なお、防衛省幹部は、「インド洋の給油活動撤退が近く、政府として人的貢献をアピールする意味がある<」と話しているようです。 
 しかし、「パシフィック・パートナーシップ」における人的貢献をもって、
 果たしてインド洋での給油活動=テロ対策支援における人的貢献の代替案とすることができるのかは疑問です。


***
ちなみ、友愛ボートの「友愛」という名称について突っ込むのは、ある意味で敗北宣言になってしまうと思います。
つまり、他の論点についてまともに批判することができなくなったから、
突っ込みやすい「名前」の問題に逃げたのだと評価されてしまうということです。

民主党・鳩山内閣の政策(1):事業仕分けについて

2009-11-17 21:09:55 | ニュース系
民主党が政権をとってからそれなりの月日が経ってきたところで、
民主党・鳩山内閣に対する批判もかなり強くなってきています。

(1)事業仕分け
 事業仕分けについては、議論がオープンにされており、ネット中継もされていることなどから、各方面から大きな関心をもたれている「イベント」だといえます。

 この事業仕分けの是非については、すでに多くの議論がなされていますが、私の感想としては、全面肯定でも全面否定でもなく、良いところも悪いところもあるというところでしょうか。 

 個別の議論については、ツイッター上での実況を含め、「仕分け人」に対してかなり厳しい評価がなされているように思われます。
 (なにかと「仕分け人」代表的に批判される民主党参議院議員の蓮舫氏だが、その発言・質問の全てがおかしいわけではない。クリティカルな斬り方をしている場面もあったように記憶している。また、HTVロケットが問題になった際には、ウィキペディアレベルのことすら分かっていない「仕分け人」もいた。要は、それぞれに複雑で特殊性もあるプロジェクトに対する判断を、あの短時間で大量に処理させるのは困難だということになるでしょう。)

 しかし一方で、予算を守る側=官僚のプレゼン能力の低さも多くの人が指摘しているところでしょう。
 (スパコンの世界一位でなければ意味が無いのか問題など。また、科学関係の予算では、基礎研究の重要性を「素人」に説明できていない場面が多かったように思われる。この点に付随して、元ライブドア社長の堀江貴文氏は、国家と科学技術の関係について、かなりラディカルな提言をされている。これについては、結局は国と安全保障の問題になっていくのかなという気がします。
  政府に頼るのをそろそろやめないか。)

 更に、根本的な議論として、そもそも事業仕分けの対象となるかどうかという仕分けが財務省によって行われていることなど、財務省主導の「茶番さ」を指摘する人も多い。
  参照:池田信夫さんのブログ→事業仕分けという人民裁判

 そんな中で出てきたのが財務省作成の「仕分け人用マニュアル」です。

 >事務局が極秘の査定マニュアルを作成し、民間有識者など仕分け人に配布していたことが17日、明らかになった。
 >財務省の視点に基づき、仕分け対象事業の問題点を列挙、
 >各担当省庁の主張に対する反論方法まで具体的に指南する内容。
 >政治主導を掲げた事業仕分けが、財務省主導で進んでいる実態が明らかになった格好だ。

  事業仕分けで極秘マニュアル=財務省の視点を指南-政治主導に逆行・行政刷新会議


 これが事実だとすれば、事業仕分け-行政刷新会議-鳩山内閣の政権運営の根本が覆されかねない重大な問題といえるでしょう。

11月10日予算委員会:佐藤正久氏質問

2009-11-11 02:58:08 | その他・趣味
「ヒゲの隊長」として有名な自民党参議院議員の佐藤正久氏が、11月10日の予算委員会で質問をされた。
NHKなどで中継がされなかったために、あまり広くは知られていないが、一部の新聞(web版)では報道されている。
また、佐藤正久氏のブログでは、質問の大まかな内容が紹介されている。
ヒゲの隊長、岡田外相にかみつく「あなたが若葉マーク!」
 (なお、参議院のインターネット審議中継のページで見ることができる。)

この佐藤氏の質問ついては、おおむね好意的な評価がなされているようだ。
しかし、私としては、むしろ気になる点が多々ある質問であったと思う。
一つ一つ検討するのは面倒なので、気になったポイントだけ書きます。

(1)福島みずほ少子化担当大臣に対する質問
 社会民主党の宣言の中で自衛隊は「明らかな違憲状態」であると書いていることにたいして、どのように「明らか」なのかという質問。
 この質問に対しては、専守防衛の観点から国外に行くのは問題があるという回答でつっぱねられてしまった。
 
 もちろん、質問の問いに対して真正面から答えていないのは福島大臣であるが、
 質問の仕方を工夫することでもっと巧くやれたのではないかとも思う。
 (同じ問答を繰り返すことになっていたので、時間の浪費だろうと思う。)

 おそらくは、一般論・規範として、まず「明らかな違憲状態」の定義を聞くべきであった。
 ここは「一見極めて明白に違憲無効」との境界など、法的な議論になる部分でしょう。
 そこで社会党の規範を明確にした上で、あてはめとして、自衛隊について聞いたほうがよかったのではないかと思う。。
 (先に述べた規範に当てはめなければいけない分、逃げにくいだろう。)

(2)死生観に対する質問
 これは、質問が漠然としすぎていて、答える側としてはどのようにも逃げられる質問になっている。
 また、着地点としても、単純に見解を聞くだけで終わってしまう構成だったような気がする。
 この質問によって獲得すべき成果とはなんだったのかについて、再検討をするべきだ。
 
(3)インド洋の給油回数について、海賊対策にシフトしている南部エリアでは給油の需要があるという指摘
 これはかなりまずい質問だと思う。
 目的と手段の転倒、法目的からの逸脱について、岡田外務大臣にクリティカルに反論されてしまっている。
 こうなると、海賊対策もテロ対策の一環だというしかなくなるが、それが妥当な解釈なのかは疑問がある。

(4)岡田外務大臣の若葉マーク発言について
 この質問については、岡田外務大臣が言葉の意味をすり替える答弁をして逃げ切ってしまっている。
 車にたとえて言えば、岡田外務大臣はAT限定をもって「若葉マーク」だといっているようなものであり、
 それは一般的な「若葉マーク」の用法=免許取得後まもなく、習熟していない という意味からは外れている。 
 
 これも、「若葉マーク」の一般的な用法から攻めたほうがよかったのかもしれない。


(5)インド洋での給油活動における、給油の燃料代についての質問
 これは、佐藤氏が冒頭で行った、インド洋で活動中・先日出航した艦船の名前を聞く質問とは性質がことなるものである。
 艦船の名前を聞く質問は、政府首脳の現場に対する認識の甘さ、現場をしらないという点をあぶりだすしつもんであるから、
 事前に通告しては意味が無くなる質問である。

 対して、この質問は、インド洋給油活動の是非とアフガニスタン民生支援の是非の前提となる質問である。
 なので、北澤大臣が苦言を呈したように、先に質問内容を通知しておくべき性質のものであったと思われる。

*** 
国会での質問をみていると、質問も何種類かのカテゴリーに区別することができるんじゃないかと思える。
例えば、事実の確認、見解の確認、見解に対する批判、自説の主張、支持者に対するパフォーマンス など。

このうち、一番重要なのは「見解に対する批判」だと思うが、これについては質疑応答の模擬戦をやるなどして、
もう少し練る必要があるように感じられた。

津田大介「Twitter社会論」読了

2009-11-08 06:57:53 | 小説・本
流行に乗って、津田大介さんの「Twitter社会論 新たなリアルタイム・ウェブの潮流」を買ってみました。

タイトルに「社会論」とありますが、著者自身が前書きで述べているように、
「社会全体の仕組みをシステム的に考察するもの」ではなく、
どちらかというと、ツイッターを巡る世の中の動きをわかりやすく解説したといった感じでしょうか。

内容としては、ツイッターの基本的な説明から始まり、その特徴の分析、ツイッターに関する事例の紹介、
ツイッターと企業の関わり方などなど。
解説本としてみた場合、きわめてバランスのいいものになっているといえるでしょう。

個人的に面白く感じた箇所をあげるなら、
(1)ツイッターの6つの特徴 28頁以下
(2)「tsudaる」技術 59頁以下
(3)ツイッターとジャーナリズム 80頁以下

の3箇所でしょうか。

ただし、(1)については、新書であるという本書の特性上、そこまで突っ込んだ議論はしていません。
専門家による更なる議論が望まれるところでしょう。
また、(3)はいろいろと考えさせられる問題を取り扱っています。
深くやろうと思えば、この部分だけで丸々一冊の本が書けるでしょう。

また、本書はツイッターの問題・課題や限界にも適切に言及しており、
決して手放しのツイッター賛美・肯定論ではないことにも非常に好感が持てます。


***
新書だから仕方ないと言えば仕方ないのですが、「ツイッター中継と著作権問題」の部分は、
やや正確性に欠ける記述があるように思われます(しかし、だからといって本書の価値が低くなっているわけではない)。
以下、細かい話。

1)講演が「言語の著作物」にあたりうることの説明について
 本書69頁では「物」として実体化したもののイメージがあるがという表現をしていますが、
 これは「実体化」ではなく「固定」という言葉を使ったほうが正確でしょう。
 まぁ、専門用語なので新書では使いづらいというのは分かりますけどね。

 また、「物」に実体化しているものの例示として音楽をあげていますが、
即興音楽など固定されてないものもあることに注意する必要があります。
 (ここで言いたいのはCDやレコードなどのことだと思います。)

2)著作物性に関する小倉弁護士の説明について
 これは元の文章を読んでいないので断定はできないのですが、
 おそらく小倉弁護士はこういう表現はしないだろうと思います。

 私としては、 
 発言の一部の抜き出したものであれば著作物とは「認められにくく」、中略、
 やりとりの流れが分かるものは(中略)著作物性が「認められる可能性が高くなる」

 という表現のほうが、小倉弁護士の説明に沿っているのではないかと思います。
 
3)侵害の態様について
 本書では「『公衆送信』することに当たり違法行為となってしまう」とだけ説明していますが、
 複製権及び翻案権の侵害の可能性についても言及したほうがいいでしょう。

4)講演内容の要約について
 要約すれば著作権侵害にならない可能性が高くなるという説明を小倉氏がしているという部分です。
 これは、著作権法は表現を保護するのであってアイデアは保護しない、
 翻案の範囲すら超えてまったく別の表現になっているのであればそれは著作権の保護の範囲ではないということでしょう。

 なので、これも断言はできませんが、
 発言内容の要素を抜き出してメリハリをつければ~という説明では、やや方向性が違うのではないかと思われる。  
 (仮に、津田氏の説明が小倉氏の説明と同じであるとすると、これは小倉氏の説明の問題となる。
  対象となる作品から抜き出す部分を選択することは一般に行われていることなのであって、
  その選別が直ちに著作物性の判断につながるわけではない。
  が、そもそも小倉氏の記述も『ゲームラボ』という雑誌に記載されたものなので、分かりやすさを優先した説明なのでしょう。)

 これに付随して、福井氏の説明として、「発言内容を噛み砕いてつぶやく場合は送信可能化には当たらず」という説明があります。
 しかし、これは異なる次元の話が混同されているように思う。
 元の著作物の内容を噛み砕いた(=その表現を利用しているとはいえなくなった)ことは、
 送信可能化という行為をしているかどうかとはまったく別の問題です。
 (また、ここで公衆送信のうちの送信可能化を取り出している趣旨も分かりません。)
 

***
これを書いた後にいろいろ考えてみたのだが、福井弁護士の上記発言は間違とまでは言えない気がしてきた。

おそらく、同一性の範囲でない→「その著作物」ではなく、かつ、要約=翻案の範囲を超え、二次的著作物にならないので、28条のルートもない
ということから、公衆送信権(送信可能化権)侵害が成立しないということを言いたいのだろう。


ニコニコ動画:「世界の新着動画」問題について

2009-11-04 20:06:40 | ニコニコ動画・ネットとか
このたびのメジャーバージョンアップの目玉の一つが、「世界の新着動画」。
しかし、この「世界の新着動画」をめぐっては、サービス開始当初から賛否両論、いろいろな議論が行われている。

その中でも、ニコニコ動画関係者や親会社ドワンゴの会長さんも交えてツイッター上で行われた議論が面白い。
「世界の新着動画」に関する議論のまとめ→ニコニコ動画「世界の新着動画」を巡る議論

なお、公式に発表されている対応策はこちら。
本日の変更点 ~要望掲示板ご意見より~
<世界の新着動画 紹介拒否機能>
 新しく投稿された動画を生放送で紹介する『世界の新着動画』ですが、この番組で紹介されたくないという声もある状況を受け、
「紹介拒否機能」の検討を行っています。


***
ポイントだけメモ。

世界の新着動画の目的
 新着動画が知られること。能動的に求めなくても、知ることができる(知られる)。
  →つまらない動画でもコメントをつけて楽しむという、ひろゆきの趣旨をどうするか?

背景
 動画投稿者の不満の積み重ね  
  →荒らし対策問題など

問題点
 世界の新着動画上で書かれたコメントが元動画に反映されること。
  ↓
 文脈の異なるコメントは、元動画にとっては荒らしである。
  (あくまでも重要なのは、文脈が異なるということ。
   真正同期/擬似同期というのは、文脈の差異による衝撃を増加させているだけ)

解決策
 1 コメントの反映をやめる
   →ひろゆきの趣旨を尊重するなら、これはだめ。
 2 コメントの反映を、元動画投稿者の選択にゆだねる
   →とりあえずこれが穏当では?
 3 各世界の新着動画の対象となるカテゴリを限定する
   →文脈の差異は小さくなるが、なくなるわけではない。
むしろ、誤配が生じる可能性が小さくなるので、世界の新着動画の趣旨にそぐわない。

もっとも、ドワンゴ会長の川上氏は、上記解決策に対しては消極的だ。
荒らし問題の程度としては、通常のニコニコ動画における荒らしのほうが問題であり、
リソースの配分として、上記解決策の優先順位は高くないとのこと。

***
と思っていたのだが、「後の祭り感」というフレーズを聞いて思い直した。

世界の新着動画という真正同期の現場で行われたコメントは「祭り」であり、
そのコメントを、元動画=擬似同期の場で見ても、過去の祭りの形跡をみていることにしかならない。
元動画を見ている私=擬似同期の場にいる私は、その「祭り」に参加することは絶対にできないのである。この寂しさ。

つまり、世新コメントのせいで嫌でも真正同期というものを意識してしまうことなり、
普段は忘れている擬似同期で満足できるのか問題が表に出てきてしまう。

「戦闘技術の歴史2 中世編」読了

2009-11-01 06:40:54 | 小説・本
その名の通り、戦闘技術の歴史に焦点を当てたシリーズの第2巻。
中世編なので、西ローマ帝国が滅亡した五世紀前半から、ビザンツ帝国が滅亡した15世紀半ばまでが対象。
ヨーロッパ全土という広大な範囲について、しかも1000年という長期間を対象として、
多くの戦例を分析して、戦闘技術の変遷を具体的に記述しようという意欲作。

戦闘技術というと、戦略や戦術とは異なる、個人の戦闘の手法というイメージがありますが、これに限られません。
武器や城塞の技術的な話、戦いにおける陣形や機動などの戦術的な話、編制・編成の話など、さまざまです。 

ただし、そういう軍事的な方向に偏っているので、歴史的・文化的な説明は最小限度に抑えられています。
ヨーロッパの歴史について最低限のことは広く浅く知っていた方がいいですし、
分からない事柄(事件や人物等)については随時ぐぐることができる環境で読んだ方が良いと思います。
百年戦争やノルマンコンクエストなど、それの歴史的な経緯を書くだけで一冊の本になるというような事件の説明が、
1頁~3頁くらいであっさりと書かれていますから。
 (但し、日本語で検索しても出てこないものも多い。)

で、この本、ハードカバー350頁、価格4500円、シリーズ全5巻という規模でありながら、
日本語監修者さんが序文で書かれているように、「入門書」ですw
取り扱う範囲があまりにも広いので、あたりまえといえばあたりまえですが。
戦史叢書みたいな細かさはありません。

シリーズ全部を集めるとなると相当大きい負担になるので、
私としては第2巻から第4巻まで買おうかなという計画。
無事に第4巻まで発売してくれると嬉しいのですが……。

なお、目次などは出版社が公開しています→http://www.sogensha.co.jp/book/2009/09/post-146.html

***
第一章歩兵の役割と第二章騎兵・戦車などが、この本の核だと思います。
分かっているようでいまいち分かっていない歩兵と騎兵の関係を理解することが出来る。

第三章指揮と統制は、もう少し体系立てて教科書的に書いても良かった。
モンゴル軍に関する記述がここで数頁ほどでてくるが、
僅かな分量であるにもかかわらず、お手上げ感というか絶望感が伝わってくるw

第四章攻城戦は、コンパクトにまとめられているという印象。
城や砦については、他に各種写真集や図版集があるので、
ビジュアル面をそれで補うと良いかも知れない。

第五章海戦は、ややおまけ感が漂う。
もっとも、ガレー船から帆船(コグ船)への移行は第四巻・第五巻に繋がる重要な部分。
ただ、各巻の海戦部分については、それをまとめて一冊にした方が良かったのかも知れない。

*** 
細かい部分について。

・外国語の固有名詞をどう表記するかという問題。
 日本語としての表記が固まっていないものについては、複数表記した上で、
 原語の綴りを書いてくれると嬉しい。

・野戦図の見にくさ
 これは既に他の方も指摘されていることですが、一見グラフィカルで取っつきやすくはあるの、
 戦闘の流れを見ようとするとなかなか見にくい。
 無理に一枚絵のカラーCGにする必要はなかったのではないか?
 見開きの一枚絵にこだわったせいで、挿入箇所が本文をぶった切ってしまっているあたりも残念。
 あと、ページの閉じてある部分が見にくい。

 単色or3色刷りくらいで、もう少し詳細に描いてあると個人的には嬉しい。

***09年12月30日追記
なにげなく10年01月号の軍事研究をめくっていたら、書評で本書が紹介されていた。
どうやら、次巻の近世編は10年の夏頃発売予定のようだ。
非常に楽しみである。