崖っぷちロー

チラ裏的ブログ。ここは「崖っぷち」シリーズ・あん○ーそん様とは関係ありません。レイアウト変更でいろいろ崩れ中

ニコニコ生放送でイルカ漁映画『ザ・コーヴ(THE COVE)』放送

2010-06-18 23:06:55 | ニコニコ動画・ネットとか
イルカ漁映画『ザ・コーヴ』といえば、映画館での上映反対運動なども起きている、今話題の作品。
それがニコニコ生放送にて、ネット試聴会として2000人限定での全編放送がおこなわれた。

イルカ漁映画『ザ・コーヴ』が、ニコニコ動画で全編無料配信決定

映画の配信前には、ひろゆき氏が登場してこの映画の放送に対するユーザーの意見を紹介し、その上でユーザーに放送の是非を問うという趣向まであった。
アンケート結果は、放送賛成が89.7%、反対が6.7%、わからないが3.6%という結果。ひろゆき氏も「映画を見ずに批判するのはおかしい」というスタンスだったように見受けられる。

***
では、肝心の映画はどうだったか。
まず、この映画の構造や仕掛けについては東浩紀氏の解説が適切だと思う。

とりあえず言えるのは、一般に流布している「カルト団体による反イルカ漁映画」というイメージは不十分だということです。映画としてそれより数段よくできている。正直予想以上でした。太地町がこのキャンペーンに「反論」するのはかなりの努力を強いられるでしょう。

また、これは散々言われているけれど、「オーシャンズ11」ばりの(作中で登場人物自らその比喩を使う)エンターテインメント溢れる演出は確かにすごい。飛行船とばしたり特撮で隠しカメラ仕掛けたりする。そしてその長い引きのせいで、クライマックスであるイルカ「虐殺」の場面が印象に残る。巧い。

ま、つまりひとことで言えば、あちゃー、こんな映画作られたらもうかなわねえよ! というのが第一感想ですね。これは強力な映画ですよ。イルカ虐殺を延々と流してお涙頂戴、とかじゃないんですから……。

というか、ぼくがいちばん巧いと思ったのは、映画全体をリック・オバリーの「反省」「転向」に重ね合わせていることかな。ひとは転向の物語に感情移入しやすい。

http://twilog.org/hazuma/date-100427

しかし、その上で、この映画の効果・影響力について東氏ほど高く評価することはできない。
(東氏は、東京都の性表現規制問題でも同じようなことを言われていたが、少数者の論理が多数者の感情によって潰されることの危険性、そのような構図の中で少数者が勝つことの困難性を重く見ていると思う。)

私としては、「なんだこんなものか」というのが正直な感想である。
東さんが指摘している手法や「イルカ虐殺」シーンで日本人漁師の笑い声を被せる手法などを使っているとはいえ、思ったよりも虐殺シーンの表現もおとなしいものであった。まぁ、事前に東氏の感想を読んでいて映画の手法を知っていた・映画に対する期待が高まっていたせいもあると思うが……。

とはいえ、それでもこの映画を見た人の内で、それなりに多くの人が誘導されるだろうという気はします。


なお、ニコニコ生放送中の視聴者のコメントは、ほとんどが否定的であったように思う。なかには感情的な反発や中傷的なコメントもあったが、おおむね冷静に批判・反論されていたのではないか。

***
イルカ漁反対のロジックについては、特に目新しいところは無い。

 実況プレイ動画に適したゲーム?4(格闘ゲーム)

2010-06-17 09:55:30 | ニコニコ動画・ネットとか
以前私は、ゲーム実況プレイ動画に適したゲームとはどのようなものだろうかという趣旨のエントリを上げたが、その中で、一回性のある(自由度が高い)ゲームが適しているとした上で、

アクション・FPS、シミュレーション・RTS、シューティング、音げー、パズル、パーティーもの、レースゲームなどが、自由度が高く、一回性がある作品が多いように思われます。

と書いたことがある。(参照:実況プレイ動画に適したゲーム?2)

私としてはめぼしい物は列挙したつもりだったが、一大ジャンルを見落としていたことにふと気が付いた。それは格闘ゲームである。

つまり……

(1)実際の格闘技やスポーツがそうであるように、同じ状況・同じプレーが二度行われることはない。
 →一回性がある。

(2)他人との対戦やCPUとの対戦が重要なのであってストーリーはあまり重要ではない。
 →ネタバレによるダメージが小さい。

(3)そもそもアーケードではプレイを見る/見られるのは自然なことであり、他人のプレイを見ることでそのゲームの魅力が伝わったり、プレイするモチベーションに繋がったりする。但し、トッププレイヤーのプレイが商品や雑誌の付録になることもまれではなく、これはむしろ格闘ゲームのプレイ映像の商品価値を示すものでもある。
  →消極の方向にも働く(プロ化が更に進んだ場合はどうか?)

(4)とはいえ、現在ではゲームセンターが格闘ゲームの大会・イベント・試合をネット上で大々的に中継するなど、プレイ映像の配信・アップロードが公になされている。
 (中野TRFや西横浜ゲーマーズビジョンなど。)

(5)そして、大会やイベントの際には、それらはゲームセンター店員などによる「実況」を伴うことが多い(中継されなくても)。格闘ゲームの場合キャラクターの台詞などは他のジャンルと比べるとあまり重要ではなく、また、ゲームセンターなどは他のゲームの音楽などが当然のように混じる環境であり、「実況」という音声がゲームを阻害することは比較的少ない。

 むしろ、「実況」が視聴者・観客にとって有益なものとなりうる。(スポーツ中継にも解説実況が付き物)
 
(6)新作ソフトであってもプレイ映像(実況動画)のアップロードによる不利益が小さい。
 むしろ、ゲーム自体にリプレイ機能が付いているなど、メーカー側も「他人の試合を見る」ことを重要視している。プレイしている動画を流通させ、当該ゲームの魅力をアピールし、「盛り上がり」を演出することは販売戦略としても重要だと考えられる。
  (参照:【インタビュー】プロゲーマー梅原氏に直撃インタビュー(第2回))



というわけで、当然といえば当然のことだが、格闘ゲームはゲーム実況プレイ動画ときわめて親和性が高いということになる。
(同時に、上記の点は、「対戦物」「アーケード物」の特徴としても一般化されうる。)

***
GODSGARDEN online」は注目せざるを得ない試みです。

さらにそれぞれのプレイヤー・実況・解説が全て別の場所にいるという多元ストリーミングに挑戦、オンライン対戦実況の可能性を探ります。

また、試合映像のみと、実況・解説付きの2種類の動画を配信予定。
実況・解説を交えて楽しむもよし。視聴者が自ら実況に挑戦して視聴者を集めるもよし。
より多くの人が、より多彩な楽しめる方法を模索してみたいと思います。


普天間基地移設問題資料まとめ

2010-06-17 07:22:14 | ニュース系
普天間基地移設問題を考える際に参考になるもののまとめ。

一、条約・政府資料等
・日米安保条約 http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/jyoyaku.html
 前文:両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有する
 6条:日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ
    合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。

 
 ※日本の防衛に限定されていないことを確認する。
 ※なお、この6条では陸・空・海軍のみが対象となっており、海兵隊は対象外とされているようにも読めるが、入ると解されている。
  衆議院議員東門美津子君提出安保条約第六条の解釈に関する質問に対する答弁書

・防衛省資料:在日米軍及び海兵隊の意義・役割について(PDF:2MB)
 ※おそらく政府・防衛省の説明としては一番まとまっている。
  
 1米海兵隊の沖縄駐留の理由
  ○沖縄は、米本土やハワイ、グアムなどに比較し、東アジアの各地域に対し距離的に近い。
   →この地域内で緊急な展開を必要とする場合に、沖縄における米軍は、迅速な対応が可能。
  ○また、沖縄は我が国の周辺諸国との間に一定の距離を置いているという地理上の利点を有する。

 2在沖米海兵隊の意義・役割
  ○在沖米海兵隊は、その高い機動性と即応能力(※)により、我が国の防衛をはじめ、06年5月のインドネシアのジャワ島における地震への対応など地域の平和と安全の確保を含めた多様な役割を果たしている。
   →地理的特徴を有する沖縄に、高い機動力と即応性を有し、様々な緊急事態への一次的な対処を担当
    する海兵隊をはじめとする米軍が駐留していることは、我が国及びアジア太平洋地域の平和と安定に
    大きく寄与。


5月28日共同発表(2+2)
 SCCの構成員たる閣僚は,沖縄を含む日本における米軍の堅固な前方のプレゼンスが,日本を防衛し,地域の安定を維持するために必要な抑止力と能力を提供することを認識した。

  ※鳩山内閣の下で決定され、菅内閣でも踏襲される。
   ここでも、「日本の防衛」と「地域の安定の維持」という、二つの目的がある。

  閣僚は,2009年2月17日の在沖縄海兵隊のグアム移転に係る協定(グアム協定)に定められたように,
  第三海兵機動展開部隊(MEF)の要員約8000 人及びその家族約9000人の沖縄からグアムへの移転は,代替の施設の完成に向けての具体的な進展にかかっていることを再確認した。


  ※「かかっている」という表現。グアム協定でも同様の表現。
   外務省・日米安全保障体制のページにある各種合意なども重要。

普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価準備書
  ※いわゆる環境アセスメント。普天間代替施設の概要、運用が想定される機体の情報など。
   但し、MV-22(オスプレイ)はアセスメント対象外。

・防衛省資料:中国の軍事力近代化、海洋活動について(PDF:1,022K)

二、沖縄側見解・資料等
「普天間ヘリ部隊のグアム移転の検証について」説明資料(PDFファイル:1,324KB)
  ※宜野湾市長による見解。第36海兵航空群もグアムに移転すると主張。
   (但し、これに対する反論・批判がある)。
   その他宜野湾市のサイトにあるもの。

「沖縄からグアム及び北マリアナ・テニアンへの海兵隊移転の環境影響評価/海外影響評価書ドラフト(抜粋仮訳)
  ※上記宜野湾市長の見解の根拠とされるもの。
   アメリカ側が台湾までの距離を考慮事項にしていることにも注目。

2008年9月国防総省グアム軍事計画報告書(抜粋仮訳)
  ※これも宜野湾市長の主張の根拠とされる。但し、異なる読み方をする見解もある。

人種差別撤廃委員会の最終見解
  ※パラグラフ21が沖縄についての関心事項と勧告。

フリージャーナリスト岩上安身氏による川内博史衆議院議員へのインタビュー(動画)
  テニアン移設案を主張する川内議員へのインタビュー。
  但し、強い反論・批判がある。

三、WEB上での議論等
リアリズムと防衛を学ぶ-普天間移設、および軍事は政治の道具だということの意味(追記あり)
 軍事的なアプローチに引っ張られすぎないことの重要性を説いている。
 その他、「普天間問題」カテゴリ、『「抑止」ってなんだ?』カテゴリも参考になる。

週刊オブイェクト・「普天間基地問題」カテゴリ
 WEB上での普天間基地問題議論における、軍事的側面からのアプローチの理論的支柱。
 在沖縄海兵隊の役割(斬首作戦対策)、中国からみた在日米軍の意味、宜野湾市伊波市長の主張に対する反論、オスプレイの静音性、テニアン案を主張する川内議員への批判など。

軍事板常見問題&良レス回収機構-普天間基地問題Q&A
  普天間基地問題の議論の集積。

軍事板常見問題&良レス回収機構-◆台湾常見問題
  台湾問題についての議論の集積

北大路機関-在沖海兵隊の抑止力 普天間飛行場海兵隊航空部隊と日本周辺情勢
  台湾が中華人民共和国の勢力下に入った場合のシミュレーションなど。

まりたん日記-『日米地位協定』なるほど講座
  日米地位協定についてかなり噛み砕いた解説。

だよもん天による人民解放軍特殊部隊の台湾戦の侵攻想定
 台湾の中華戦略学会発行の中国人民解放軍特殊部隊および台湾侵攻時における可能行動の研究の要旨(10年11月29日追加)

四、紙媒体等
・防衛大学校防衛学研究会編『軍事学入門』(かや書房)
  軍事力の意義、抑止の意味、国家戦略の意味など。

・防衛大学校安全保障学研究会編『安全保障学入門』(亜紀書房)
  安全保障の非軍事的側面など。

・江畑謙介著『新版米軍再編』(2006年、ビジネス社)
  米軍全体の世界規模での再編についての考察と、その中での在日米軍再編についての考察。
  普天間代替施設滑走路についての検証など。

・『軍事研究』
 09年4月・6月・8月・10月・12月号、10年2月 福好昌治著「在日米軍の組織と部隊」
  前5回は各軍の編制等についてのまとめ。10年2月はグアム移転についてのまとめ。
 
 10年2月 青木謙知著「実戦で活躍!V-22オスプレイ」
  オスプレイの性能、過去の事故原因とその対策について。
  現在のオスプレイの安全性・信頼性に対する評価。

・7月29日追加
 守屋武昌『「普天間」交渉秘録』
 一当事者の見方ではあるが、交渉の内幕を知るものとして。

民主党参院選マニフェスト/普天間問題

2010-06-15 19:26:27 | ニュース系
民主党が参院選に向けてマニフェストを作り直したようで、その内容が報道されている。

民主外交安保公約判明 普天間「日米合意基づく」 中国に国防政策の透明性求める
米軍普天間飛行場移設問題は「日米合意に基づいて、沖縄の負担軽減に全力を尽くす」とし、日米関係にも配慮する姿勢を示した。日米同盟は「深化」を目指し、オーストラリアや韓国、インドとは防衛協力を推進、中国には「国防政策の透明性」を求めていくことを掲げた。これらは、菅政権の外交・安保のかじ取りへの不安感を払拭するため「現実路線」(党幹部)をアピールするねらいがある。

まさに現実路線である。
学問的には二大政党制の下では政策は似てくるとされているが、まさにそれを実証しているというところか。
民主党も自民党も、地に足をつけた政策を戦わせて欲しいところだ。

***
さて、鳩山内閣がつぶれた二大原因の一つとされる普天間基地移設問題だが、
それについて当の鳩山元首相が面白いことを述べている。

米軍普天間飛行場移設問題で迷走を続けたことについて「国家戦略局というがっちりしたものができていれば指導力を発揮できた」と述べ、国家戦略局の未整備が要因との考えを示した。 
国家戦略局未整備が原因=普天間迷走で鳩山前首相

この発言は、ある意味、迷走問題の(「普天間移設問題の」ではなく)本質を捉えた発言だと思う。つまり、鳩山内閣・野党時代の民主党には「国家戦略」というものがなく、したがって、物事を判断するための、大局的な見地に基づいた軸が無かったということだ。

もちろん、「国家戦略局」という国の組織を使えるのは政権をとっている間だけなのであるから、根本的にこの問題を解決するためには、民主党自身が国家戦略を考えるためのきちんとしたシンクタンクを持つ必要がある。
(当然自民党も)
 参照:普天間問題と政治主導のために足りなかったもの-リアリズムと防衛を学ぶ

***
迷走した背景にはもう一つ、単純に民主党・閣僚が勉強不足だったという問題がある。例えば岡田外務大臣が当初嘉手納統合案という到底無理な案を主張されていたように、過去の交渉・検証の経緯を全く考慮しない言動が多くなされていた。

もっとも、今ではかなり勉強されたようで、会見などを見ていてもきわめて堅実な考えを持たれているように思われる。

***
普天間基地移設問題を考える際には、
①日米両国の合意文書、関係省庁の文書・資料などを押さえる。
②<沖縄・普天間基地周辺住民の負担>と<日本の安全保障>という、
 二つの利益をどのように調和させるべきかを考える。

という二つのポイントを抑えれば、結論がどうであれ、おかしな議論にはならないと思う。