高円寺北口の青果店には、桜桃がたくさん並んでいた。思わず購入して、客席のテーブルごとに置いた。
『桜桃』の一節を頭の中で、繰り返してみる。
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子供より親が大事、と思いたい。子供よりも、その親のほうが弱いのだ。
桜桃が出た。
私の家では、子供たちに、ぜいたくなものを食べさせない。子供たちは、桜桃など、見た事も無いかもしれない。食べさせたら、よろこぶだろう。父が持って帰ったら、よろこぶだろう。蔓を糸でつないで、首にかけると、桜桃は、珊瑚の首飾りのように見えるだろう。
しかし、父は、大皿に盛られた桜桃を、極めてまずそうに食べては種を吐き、食べては種を吐き、食べては種を吐き、そうして心の中で虚勢みたいに呟く言葉は、子供よりも親が大事。
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来年こそは、桜桃忌に『桜桃』を読もうと、決めている。
あなたは来年、どの作品を読みますか?
たくさんのかたにいらしていただいて、笑っていただけたと思う。
太宰の道化の精神に、少しでも応えるような読みが、できていたのかなと思う。
来年もまた、笑っていただくために
拳を握りながらでも、笑って生きようね
なぁんてね