ミニストックに関する記事も大詰めに入っています。
今日は暖房について。
ネイティブディメンションズにおける暖房の考え方は以前ご紹介しています。
ミニストックにおいても、ヒートポンプエアコンによる、
メインは対流
サブに、放射と伝導
を取り入れた暖房としています。
ヒートポンプエアコンを使う理由は変わりませんので、改めてご説明する必要はないかと思いますが、本日は問い合わせいただきました、なぜ、性能がいいのに蓄熱式の暖房としていないのかについてです。
蓄熱式と言うのは、夜間に暖房器具を運転し、蓄熱部材に熱を貯め、日中その貯めた熱を放射する暖房方式です。
一般的な蓄熱暖房機は電気をジュール熱に換えて蓄熱しているだけなので、効率が悪い事は紹介済みです。
高性能な住宅において求められている蓄熱暖房とは、動力をヒートポンプエアコンとして、蓄熱部位を基礎のコンクリートにするアイディアで、最近注目されています。
この方式についてミニストックにおける検証を行いました。
上の図は、日射利用住宅における基礎の コンクリートの条件です。
日射利用住宅の基準によると、基礎のコンクリートは断熱材の内側である事と、コンクリートの厚さが20cmである事が求められています。
(5/26加筆:20cm以下であれば蓄熱部材としてカウント可能で、20cm以上の場合は、20cmの場合と比較して蓄熱効果が変わらない事を意味しています)
ミニストックは、白アリ対策の為、基礎外周部はコンクリートの内側に断熱材が貼られている為、基礎立ち上がり外周部は蓄熱部位にカウントできません。
さらに、スラブ(底盤部)下にも断熱材は敷いていないので、カウントできません。
ついでを言うなら、コンクリートの厚さは20cm必要ですが、これも満たしていないのでカウントできません。
要は、日射利用住宅の基準に照らし合わせると何一つクリアしていないんですクリアしていない項目が多いんです。
*日射利用住宅の考え方と熱損失計算の考え方は分けて考えられるので、日射利用住宅の基準を満たしていない事で、熱損失も悪いとは考えないでください。
あくまでも日射利用住宅の基準ですので、夜間蓄熱の場合も当てはまると言えませんが、これを無視して夜間蓄熱する事も少し戸惑います。
仮にこの基準をクリアしようとすると、コンクリートを厚くして、スラブ下に断熱材を敷きこむ費用が追加される訳ですが、負担はそれだけではありません。
ミニストックのべた基礎のスラブの配筋はシングル配筋です。コスト上の理由からシングル配筋にしていますが、スラブの厚さを20cmにしてしまうと、べた基礎スラブ中央部の引っ張り方向に有効な鉄筋が入っていない状態になってしまうので、それを解決する為にはダブル配筋(上下2段の配筋)が必要です。
つまり、コンクリート量が若干増えるだけでなく、鉄筋量もかなり増えてしまうので、そこまでのコストアップはミニストックの本来の目的から大きくずれてしまいます。
と言うよりも、基礎コンクリートを蓄熱部材とした暖房を行うには、それなりの構造検証も行わなければ成立しないと言う事の方が重大な結果と言えます。
そして、ミニストックの場合において、そもそも、そこまでこだわれない理由があります。
今までの記事でご紹介してきた通り、ミニストックは床面積の割に容積の大きな建物です。
つまり、上の図のように暖房する容積に対して蓄熱部位である基礎のコンクリートの面積がとても小さいんです。
日射利用住宅の基準をとりあえず無視して、標準設計においてどの程度、基礎のコンクリートが蓄熱できるのか検証してみました。
蓄熱した熱が、日中の外と中と温度差を15℃(やや甘め)として、どの位保つのか?
ミニストックのコンクリートの蓄熱量は8613KJ/kで、
ミニストックの熱損失は1時間当たり1842Wです。
この奪われる熱を無暖房で蓄熱部材からの放射だけでキープ(温度低下1度以内)できる時間は、言うのも恥ずかしいですが、ずばり1時間18分程度。
よって、対流をメインとして、放射、伝導はサブ的扱いで暖房を計画しています。
なんかダメ出しばかりなので、プラス要因も加えておきます。
ミニストックは、外張り断熱ですので、構造躯体も蓄熱部材として考えられます。構造躯体は日射利用住宅においても、蓄熱部材としてカウントできる条件を満たしています。
ミニストックに使われている構造部材の熱容量を足し算すると、実は基礎コンクリートの熱容量と同じくらいになるんです。
木材は、コンクリートの半分くらいの容積比熱ですが、量が多いためです。(正確には、ミニストックは木の量は普通で、蓄熱部材としてのコンクリート量が少ないと言った方が正しいです)
これにより、1時間18分?2=2.5時間分コンクリートを蓄熱部材とする為の断熱補強をしなくても、外張り断熱である為にコストを掛けずにコンクリートと同等の放射量を貯め込みながらの暖房をしているので、足元や壁際がひんやりとせずに過ごしやすい温かさに包まれる空間で過ごす事ができます。
5/26加筆:構造部材以外にも、下地材、内装仕上げ材も蓄熱効果があります。
温熱環境の悪い家だと、空気だけが暖まって、床・壁・天井がずっとひんやりしたままなので、過ごしやすい温かさとは言えないのです。
だから、床暖房(伝導による暖房)が、スゴク快適な暖房器具に思えちゃうんですね。(仕組みが理解できれば、本質として何が必要かが分かります)
以上がミニストックにおける暖房の考え方ですが、蓄熱による暖房は構造的にも蓄熱部材の熱容量の考え方的にも、必要な熱損失係数の求め方も、断熱材の計画も相当な検証(間取りによって、必要な容量が大きく変わる為)が必要なシステムと言えます。
(自分で計算しておきながら、計算するのはすごい事だと自画自賛中)
ちゃんと説明を受けて採用される事をお勧めします。
あれが大丈夫だから、これも大丈夫とは言えないシステムです。
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