住宅設備機器のお話が続いていますが、一つだけ触れていない機器がありました。お気付きでしたか?
今日は調理器についてです。
給湯器がガスなのでファーストチョイスはガス調理器ですが、実は簡単にガス調理器を選択できる訳ではありませんでした。
建築基準法には内装制限という基準があります。
住宅において、この制限が適用される場所は主にキッチン。
火(ガスコンロ)を使う部屋は燃えにくい材料を使わなければいけませんが、裏を返せば、キッチンで木は張れないと言う事。
しかも、キッチンがリビングダイニングと一体となった部屋であれば、リビングやダイニングも木を張る事ができません。
ただし、緩和規定もあり、キッチンとリビングダイニングの境目に天井から50cmの壁を垂れ下げればリビングダイニングに木を張る事は可能です。
しかし、ミニストックは全室がほぼワンルーム化した一体空間なので、キッチンからは大分離れていますが、合板仕上げの天井部分があり制限に引っ掛かります。しかも、キッチンの天井は2m20cmしかないので、そこから50cmの壁を垂れ下げるとはっきり言って邪魔です。
そこで、もう一つの緩和規定を使います。
調理器回りの定められた範囲に特定不燃材料を使用すれば、範囲以外の部分には木を張る事ができます。
ミニストックはこの緩和規定を利用する事で、内装制限をクリアしていますが、雑誌等では緩和規定をクリアしているかどうか怪しいキッチンも良く見かけます。(壁・天井に木が張り巡らされたキッチン)
とある施工事例では、設計士の自宅で自己責任において木を張り巡らせ、そこにガス調理器を置いたと紹介されていました。(つまり、その設計士は内装制限の基準を理解しています)
自己責任なら使っていいのかという、コンプライアンス上の話を百歩譲ったとしても、万が一、調理器が原因の火災で大切な家族が犠牲になった場合、自己責任と言うからには、保険も使わずに家を諦め、かつ家族を失った事に対しても「しょうがないか」で済ませる事ができる、私とは違う感情を持った特別な人なんだなと感心してしまいました。
私は家族を思いやる気持ちで住宅を設計したいと考えています。
ちょっと話が硬くなってしまいましたが、次はもう少し柔らかい話です。
「totogastable.pdf」をダウンロード(ガス調理器のカタログです)
ミニストックでは、上のカタログの一番左の調理器を標準仕様としています。
何かが物足りなくて、何かが余計です。
お打ち合わせの際、これをご提案すると女性陣の半数位からは同意を貰えます。
それは「魚焼きのない調理器」
とにかく魚焼きの部分は掃除に手間もかかるし、寿命を迎える前でも魚焼き部分が汚れきってしまったからコンロを交換する例もよく聞きます。
それであれば最初から魚焼きが付いていないコンロにすれば、悩みが一気に二つ減ります。
魚焼きそのものについてですが、数千円でロースターが購入できます。
「数千円ですし、買い替えが楽ですよ」と説明をすると、不思議なもので「いつでも買い替えられる安心感」があるものには、いつまでも使い続ける日本人の習性みたいなのが働きます。
私の中では「勿体無い理論」と言っています。
操作部が上面にしかないので、小さい子供のイタズラ防止にもなりますし、バーナー部分が4口ありますので、同時作業のバリエーションも増えます。
結局、私の中ではいい事だらけなので標準仕様としました。勿論IHクッキングヒーターへの変更も可能。
もともとIHクッキングヒーターは深夜電力(オール電化)とは関係ないので、お好きな方を選択してください。
キッチン一つを取っても、法律から日頃の手入れまで、考える事は盛りだくさんで住宅は本当に奥が深いなと思います。
*給湯器と同じ様に、調理器についてもガスとIHどっちが優れているというのはありません。好きな方を選択するのが、一番の解決方法です。
参照記事:信楽「幸村めし鍋」’09.09
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