加地尚武の佐倉新町電気街

「福音の少年 Good News Boy」シリーズ(徳間書店 徳間デュアル文庫)著者による電脳生活と意見。

【ぶんがく】生きるって、地下鉄に乗るより難しい? 「地下鉄のザジ」

2005年11月23日 01時18分03秒 | 本のこと。
生きるってことは、むずかしいな、と思う。

長いこと生きているけれど、生きることに慣れない。
よその星からやってきて、ぶかぶかの宇宙服を着て船外活動をしているような気がする。
メールや電話は、まるで小惑星への着陸確認のようだ。
町を歩く。「豊饒の海」と皮肉な名前で呼ばれる月面の砂ぼこりが舞う。
ぼくは、なにしにここにいるんだろう?

そうだ、この感じを長編小説にしようと思っていたんだっけ。とにかく今書いている小説を書き上げたら、考えてみよう。

地下鉄のザジ

中央公論新社

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ふと、上の小説の事を思い出した。ずいぶん前に読んだのだが、ひどく記憶に残っている。マンガチックな表紙に騙されてはいけない。これは、ひとくせもふたくせもある小説なのだ。ザジという少女が、あこがれの地下鉄に乗るために田舎から出てくるが、肝心の地下鉄はストで動かない。あれこれするうちに、いろんなユニークな大人たちと出会う、というストーリー。

薄っぺらく(厚みが、である。けっして内容がではない)、すぐ読めてしまう。「小品」といった感のある作品なのだが、作者は書き上げるのになんと5年もかかったという。
主人公のザジという少女のガキっぷりも楽しいが、ひとくせもふたくせもあるような大人たちの生態がおもしろい。

大げさに悩みまくった大長編より、こんな小説の方が人生について考えさせられる。