うたかたの夢暮らし 睡夢山荘にて(Dream life of Siesta hut)

夢から覚めた泡沫のごときだよ、人生は・・
せめて、ごまめの歯ぎしりを聞いとくれ

船戸与一 著 新・雨月(戊辰戦役朧夜話)

2013-02-27 13:59:13 | 本と雑誌

幕末~維新の激動を活写した時代小説を読了

戊辰戦争での会津藩及び奥羽列藩同盟 対 薩長を主力とした官軍との戦闘を描いている。  長岡藩家老 河井継之助などの優れた戦略家がいたにも関わらず、時勢の赴くままに東北諸藩が敗北していく様は痛々しいものであった。

旧態依然とした武士の論理に依拠して武士階級のみでの戦いは、この旧社会を乗り越えようと意識して立ち上がった革命勢力に対抗できる思想性ではなかったのであろう。

戦いの中でも、戦略を薩摩の西郷や長州の木戸が担い、戦術面での現場を伊地知や山県や板垣が活躍した官軍に対して、会津や列藩同盟諸藩には戦略としての発想も無かったようだと著者は描いている。

会津士魂という儒教的観念論にのみ固執し滅びの美学へ傾斜していく様は、後年の大戦における大和魂へ通じるもののようにも思える。

巻末解説の前田哲男氏に以下の文があり、歴史の暗合に慄然とする思いである。

「世紀をまたいで、東北地方は大震災に見舞われた。福島県からの県外転出者は59000人に達したという。この数字は戊辰戦争後、新政府によりなされた会津藩の下北半島転封処分以来最大の人口移動を示すものであろう。「白川以北一山百文」の時代が、またむめぐってきたのだともいえる。 慶応から明治にかけて時代が改まった維新以後も、会津藩では氏族農民問わず多くの人が故郷を捨てた。(行く先が荒無の地・下北斗南藩=現・”核のゴミ捨て場”六ヶ所村だったことも悲しい暗合だ)」

そして、今また原発災害で福島の人々は故郷を捨ててしまうような事態におり、今また時の政権は”安部政権という”長州閥”の系譜であるのもまた、不思議な思いである。

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