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東京目黒から山梨へ育児のためにお引越し。40代高齢出産ママの雑記帳です。

不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か (米原万里)

2007年07月09日 | 本のこと
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いきなりなんて題名!

本書で語られているのは、「女性」ではなく、「言葉の扱い」です。

著者は昨年亡くなられてしまった元ロシア語会議通訳。
通訳の裏表について、面白おかしく、ときにまじめに語ったエッセイが
つぼにはまって以来、熱狂的ファンに。
この先米原さんの新刊が出ることはないのね、と思うと非常に寂しいです。

ところで、何でこの本が語学学習カテゴリーに入っているかというと
単に言語の本質に迫る内容だからというだけでなく、
コミュニケーションと言葉の役割というものについて論じられているから。

外国語を勉強していると、誰しもが経験することがあります。

「さて、・・・といいたいのだけど、○×語ではなんと言ったらいいのかな」

対応している言葉や表現があるのであれば、それらを覚えることが一番よい方法です。
ことわざや慣用句などでも、対応しているものはけっこうありますから。

でも、言葉のことですから、例外は、例外と言えないほどたくさん存在するし、
また例外でなくても、覚えていなかった場合にどうしたらよいの、という問題があります。
本書ではこの辺のところを、本人または師匠や友人通訳の例をふんだんに盛り込んで説明しています。

以下は、ご本人の失敗談の本書からの引用:

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・・・当然のことながら番組プロデューサーは怒り狂い、国家スポーツ委員会に直談判に及んだ。相手に会うなり、このプロデューサー、

「そういうのを日本ではね、『他人のふんどしで相撲を取る』というんだ」

と喧嘩腰。

私は、これをとっさに、

「他人のパンツでレスリングする」

と訳してしまった。相手は豆鉄砲を食らった鳩のような顔をしてポカーンとしていたのだが、・・・・・・・・しかし、一段落してから、よくよく考えてみると、ふんどしとはこの場合、力とか権威を意味するのであって、私の訳では不潔感しか残らないのではないかと反省することしきりであった。

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この後、では他にどのような言い方があったのかということを論じていくのですが、プロの通訳の方々の言葉や表現との取り組みを垣間見ることで、自分が外国語で話すとき書くときの姿勢を正すのに役立ちました。

ある程度、文法の知識や語彙が入っている方、そこからもう一歩先に進みたいという方向けの一冊です。