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マラリアワクチン 第三相試験結果

2011-11-03 | Vaccine トピックス
背景
現在、毎年マラリアで78万1000人がマラリアで死亡し、その大部分が乳幼児であるとされる。
マラリアに対してアフリカの医療費の40%が使われているとされる。

第三相試験の内容(詳細は論文参照)
2009年3月~2011年1月まで15460人の6-12週、6000人の5-17カ月の乳児がアフリカの7か国、11施設で第三相試験に参加。
今回の報告結果は主に6000人の5-17カ月の乳児のデータ。
参加者を3回のワクチン接種群、コントロール群(6-12週の乳児に髄膜炎菌ワクチン、5-17ヶ月の乳児に狂犬病を接種)に振り分け。
アウトカムは接種後1年間の臨床的マラリア感染の有無。
結果、初回接種から14か月で臨床的診断のマラリアがコントロール群で0.55エピソード/人・年に対してワクチン接種群では0.32エピソード/人・年に低下した。
ワクチンによる効果(マラリア感染率減少)は包括解析後、50.4%。
重症マラリアに対するワクチンの効果は包括解析後、47.3%。
Bill and Melinda Gates Foundationから出資されたPATH Malaria Vaccineと共同で試験を行っている。

ディスカッション
髄膜炎がマラリアワクチン接種群に多かった(11/5949 vs 1/2974)。
大規模試験で10人しか死亡が出ていない(死亡率の減少なし)→早期診断と適切な治療の効果?蚊帳や防虫スプレー等、その他の介入の効果?
CDCが試算するモデル研究では実存するコントロール対策を継続しながらワクチン接種を行えば、数百から数千の命が救われる。
理想的な接種対象年齢は6-12週の乳児であるが、その他の重要なワクチン接種と同時期になる。
12か月後の予防効果に低下がみられることから、追加接種が必要な可能性がある。
第二相試験と大きく変わらない半分程度の予防効果に関する報告については、ゲイツ財団のフォーラムに合わせた政治的な意図があるとの意見も…

ワクチン
ヒトの原虫疾患に予防効果を示した最初のワクチン
RTS,S/AS01はHBs抗原とスポロゾイトの表面蛋白を結合してできている。
熱帯熱マラリアの原虫が感染時に血流もしくは肝臓に入る段階で免疫学的な効果を発揮する。
ワクチンはアジュバント(AS01)を含み、温度管理を要する。

今後
6-12週の乳児のデータが2012年に出る予定。
追加接種の効果、長期の予防効果を含めた第三相試験の最終結果は2014年に出る予定。
GSKは既に300万USドルの投資をワクチン開発に行っていて、さらに50-100万USドルが投資される。
製造を拡大する間、価格を抑えるために、アフリカやインドの製造工場での製造に頼ることになる可能性。
最終結果次第でWHOは2015年にもアフリカ諸国で実用化したい考え。

結論
マラリアワクチンのみがマラリア根絶のための唯一の鍵ではないが(部分的な予防効果のみ)、新しい大きな一歩。
今後、ワクチンの効果の持続期間、2次感染予防の効果、追加接種による効果、全体の費用についての検討が必要。

References:
NEJM 2011. First results of phase 3 trial of RTS, S/AS01 Malaria Vaccine in African children
NEJM 2011. A vaccine for malaria
Lancet 2011. A vaccine for malaria prospects and predicaments
BMJ 2011. trial shows vaccine halves malaria episodes in children in Africa

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