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ポリオワクチンに関するWHOのposition paperの更新

2016-03-26 | Vaccine トピックス

WER 2016, vol. 91, 11 (pp. 145–168) Polio vaccines: WHO position paper – March, 2016

今年の4月後半から2型ポリオウイルスを含む3価の経口生ポリオワクチン(tOPV)が世界的に使用できなくなり、IPVの1回接種が導入されるにあたって、WHOのポリオワクチンに関するポジションペーパーが更新されています。

WHOのポジション
世界中の全ての子どもたちがポリオの予防接種を完遂する必要があり、すべての国がポリオを根絶するための世界的な取り組みを支援するために、ポリオワクチンの高い接種率を達成・維持するために努めるべき。
1999年以降野生型ポリオウイルス2型の感染は報告されていないが、低いワクチン接種率に伴うtOPVの不十分な使用に起因した抗体保有率の較差が、cVDPVsの出現を高めることにつながっており、ポリオウイルス2型に起因するVAPPの症例は全体の26-31%となっている。
そのため、各国の予防接種プログラムに用いるOPVを、1型、2型および3種の血清型を含むtOPVから、1型と3型の血清型のみを含むbOPVに、同時に切り替えることが非常に重要である。
2015年の世界保健総会では、現在OPVを使用するすべての加盟国が、2016年4月に2型の血清型のOPVを世界的に廃棄するための準備をすることが決議された。
現存する全てのtOPVは流通過程から廃棄され、その廃棄についてWHOが確認する必要がある。

OPV+IPVのワクチン接種
国の予防接種でのOPVを使用するすべての国の対して、WHOはワクチン接種スケジュールに少なくとも1回のIPV接種含めることを引き続き推奨する。
このIPV接種の主な目的は、OPVから2型ポリオウイルスが除去された後、ポリオウイルス2型に起因するポリオの流行があった場合、迅速に免疫をブーストするための基礎免疫を誘導することである。
加えて、IPVを接種する回数やタイミングによっては、VAPP発症のリスクを減少させたり、1型及び3型の液性免疫及び粘膜免疫の両方を高めることができる。

ポリオ流行国などのハイリスク地域では、WHOはまず出生時にbOPV接種し、引き続き3回のbOPVの初回接種と少なくとも1回のIPV接種を行うことを推奨する。
出生時の接種は、その後の接種による抗体獲得率を高め、腸管内病原体が免疫反応に干渉する前に粘膜保護を誘導するため、できるだけ早く行われるべきである。 
また、最初のbOPVの接種を受ける乳児は、母体移行抗体による免疫があるため、少なくとも理論的にはVAPPから守られている。
周産期にHIV感染した症例でも、早期のbOPV接種は接種可能で、VAPPなどのリスクが高まるといった報告はない。
3回のbOPVとIPVの接種は、出生後6週間以内に開始され、bOPV同士の接種では4週間以上の接種間隔を置く。

1回のIPV接種を行う場合は、母体移行抗体が減弱し、免疫原性が高まる生後14週以降に接種を行うべきであり、bOPVとの同時接種も可能である。
予防接種プログラムの接種スケジュールは、生後4月前のVAPPのリスクを含む地域の疫学情報に基づき検討されるべきであり、その他の接種ワクチンのスケジュールと同時に接種も可能である。
例として、生後6, 10, 14週での接種(bOPV, bOPV, bOPV+IPV)、生後2, 4, 6月での接種(bOPV, bOPV+IPV, bOPV or bOPV, bOPV, bOPV+IPV)等がある。

出生後3月を超えて予防接種を開始する乳児は、最初のbOPVや他の定期接種ワクチンと同時にIPVを接種すべきである。
また、 筋肉注射によるIPVで接種を完遂する代わりに、皮内接種を用いてIPVの1/5の容量での接種も検討できるが、プログラム運営に関する費用や実現性についても検討が必要である。
IPVが不足している状況では、全ての小児がIPV接種を受けられるように、また接種間隔をあけることで1回を全量で接種するよりも高い免疫が獲得できることから、減量したIPVを2回接種することも考慮できる。
早期の抗体獲得のため、減量による皮内接種は生後6週と14週での接種が検討される。
減量接種は少なくとも4週以上の接種間隔を置く。
1回の減量接種は特に供給が限定されるアウトブレイク対応に特に利用できる。

IPVの供給不足のため、bOPV切り替えの前にIPV接種を実施できなかった場合は、製剤の供給が可能となったあらキャッチアップの予防接種を実施するべきである。
tOPV廃棄後にVDPV2が検出された際には、アウトブレイク対応として単独のOPV2とIPVが利用可能である。
新しい乳幼児の予防接種スケジュール(3回のbOPV接種+1回のIPV接種)の開始は、補助的な予防接種活動(SIA)の必要性に置き換わるものではない。
よって、定期接種の接種率が十分でなく、集団免疫の向上をSIAに依存している国では、定期接種の接種率が改善するまで、または世界的にbOPVの廃棄が実施されるまで、bOPVを使用してのSIAを継続すべきである。
 

IPVのみの接種
IPVのみの接種は、高い接種率を維持し、野生型ポリオウイルスの流入や伝播のリスクが非常に低い国で検討される。
IPVは通常、皮下接種では免疫原性が落ちるため、またその他の抗原を含んでいるため、筋肉注射により接種される。
3回の初回接種は生後2月で開始されるべきである。
それ以前に接種を開始する場合は追加接種を4回目として6月以上の間隔をあけて行うべきである。
 

渡航者の予防接種
ポリオの流行がある国に在住する者は、海外に渡航する前に、国の接種スケジュールに準じたポリオの予防接種を完遂し、腸管粘膜の免疫を高め、ポリオウイルスの排泄リスクを減少させるため、渡航の4週から12月以内に追加でIPVまたはbOPVの接種をを受けておくべきである。
ポリオ流行のない国では、ポリオ流行国からの渡航者に、入国ビザを与える要件としてポリオの予防接種を要求したり、入国時の追加接種を求めるかもしれない。
流行国への渡航者は、定期接種に基づく接種を受けておくべきである。
 

医療従事者の予防接種
全ての医療従事者はポリオの初回接種を完遂しておくべきである。
 

 



 

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