No,29
チマブーエ、「キリストの逮捕」部分、13世紀イタリア、初期ゴシック。
ゴシック期の美術では、チマブーエやシモーネ・マルティーニがよい。ジョットはあまりよくない。
ジーザスの肖像はそれはたくさんの画家が描いているが、われわれを満足させてくれるものは、ほとんどない。その中で、これは、われわれの気持ち的に、よい絵である。
ジーザスは暖かくも男性的な愛の持ち主だった。その容貌は、当時の美の基準としては、冴えなかったが、心の優しさがほほ笑みや眼差しにさわやかに咲いていた。
見ているだけで、ほっと安心するような、よい男だったのである。
この絵のキリストの目には、そのようなジーザスの愛に似た愛を感じる。立派なよい男に描いてくれている。それがうれしい。
磔刑図や、嘲笑の図や、鞭うちの図、十字架の道行の図などを、人間はたくさん描くが、時にわれわれには耐えられないような絵を見る。いまだに、彼はこうして、苦しめられているのかと、感じてしまう。
人間は、ジーザスを、もっと誇り高く、美しく描くべきである。彼の愛にふさわしい姿を、与えるべきである。