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世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

リリス

2013-12-09 08:51:24 | 詩集・空の切り絵

いやだ いやだ
こんな おんな
あたしより きれい
あたしより すてき

きらい きらい
こんな おんな
しあわせになんか なるな
ふこうに なれ
ばかに なってしまえ

のろってやる
つぶしてやる
ばかにしてやる
いやなこと
ぜんぶしてやる

いやだ
きらいだ
こんな
おんな



    ***

フェミニズムが、とん挫しがちなのは、
嫉妬を原理にしているからだ。

ブスの平等主義というものだ。

真の女性の救済は、女性自身が女性の美に目覚めることから始まる。



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キリストの逮捕

2013-12-09 04:13:57 | 虹のコレクション・本館
No,29
チマブーエ、「キリストの逮捕」部分、13世紀イタリア、初期ゴシック。

ゴシック期の美術では、チマブーエやシモーネ・マルティーニがよい。ジョットはあまりよくない。

ジーザスの肖像はそれはたくさんの画家が描いているが、われわれを満足させてくれるものは、ほとんどない。その中で、これは、われわれの気持ち的に、よい絵である。

ジーザスは暖かくも男性的な愛の持ち主だった。その容貌は、当時の美の基準としては、冴えなかったが、心の優しさがほほ笑みや眼差しにさわやかに咲いていた。

見ているだけで、ほっと安心するような、よい男だったのである。

この絵のキリストの目には、そのようなジーザスの愛に似た愛を感じる。立派なよい男に描いてくれている。それがうれしい。

磔刑図や、嘲笑の図や、鞭うちの図、十字架の道行の図などを、人間はたくさん描くが、時にわれわれには耐えられないような絵を見る。いまだに、彼はこうして、苦しめられているのかと、感じてしまう。

人間は、ジーザスを、もっと誇り高く、美しく描くべきである。彼の愛にふさわしい姿を、与えるべきである。





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ベルゼブブ

2013-12-08 09:11:29 | 詩集・空の切り絵

にんげんよ
やばいことは
もうやめろ
やりすぎだ

金と権力で
馬鹿のようにこき使ったやつらに
屁のように馬鹿にされるぞ

こんなものは豚だと
あざ笑ったやつらに
本気で仕返しをされるぞ

やばいぞ
権力を捨てて
逃げろ
見栄えのいいものはみな捨てて
尻をまくって逃げろ

当然のように
水を飲んでいた
愛の流れが もうない

神が
水源を
せきとめたのだ



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月を眺める男と女

2013-12-08 04:18:30 | 虹のコレクション・本館
No,28
カスパル・ダーヴィト・フリードリヒ、「月を眺める男と女」、19世紀ドイツ、ロマン主義。

ピカソの絵の後では、どんな作品もよく見えるような気がするが、さすがにこれはほっとするね。

美しい絵である。フリードリヒは思想的で繊細な絵を描く。描かれる人物はたいてい後ろ姿で描かれる。そのためにか、時代的な人間存在の矛盾やきつさが感じられない。彼はたぶん、こちらを向いた人間の顔を見れば、その目の中に、見たくない現実を見るので、できるだけ見ないようにしたかったのだろう。

この絵には、不思議な力がある。見ていると何か不思議なエネルギーがこちらに流れてくるようだ。愛が感じられる。暖かにもやさしい愛である。じっと見ていたくなる。

一組の男女がよりそい、月を見ながら、何を考えているのであろう。

人間本来の美しさを否定されていた19世紀、このようにふしぎなファンタジックともいえる絵の中で、芸術家は人間の魂を生かしていた。この絵の中では、本来の心が生きることができる。

そういうことを感じる絵である。




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アグネス

2013-12-07 08:25:44 | 詩集・空の切り絵

あたしひとりが
叱られた。
女のくせにって
しかられた。

兄さんばっかし
ほんの子で、
あたしはどっかの
親なし子。

ほんのおうちは
どこかしら。

    (「小さなうたがい」金子みすず)

    ***

女には三界に家がない。
どんなに才能がある娘でも、
その才能をどこにも持っていきようがない。

素直に表現しようとすれば、
みすずのように殺される。

みすずは、
純真な魂と清冽な表現力をもった魂だったが、
かわいらしい女だという理由だけで、
男に殺された女である。

かのじょはこのみすずにまなんだ。
みすずと同じ失敗はするまいと心がけていた。
ゆえにかのじょは、
男に逆らわなかった。
従順な羊になり、ひたすら男に尽くした。
賢い女性だよ。

忍耐などというものではない忍耐をせねばならなかったがね。



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魂を売る店

2013-12-07 05:22:19 | 月夜の考古学・本館

 それは、ある日の夕暮のことでした。
 ポムくんは、裏庭の松の木の根元に、干からびたじゃが芋のようなものを、こそこそと埋めました。
 それは歪んで、とても醜い、ポムくんの魂なのでした。自分の魂が、こんなに醜くて貧しいのだなんて、ポムくんはだれにも知られたくなかったのです。それに今では、カッコよくて、ぴかぴかで、すてきな魂が、お金さえ払えばいくらでも手に入るのですから。
 次の日、銀行でとらの子の預金を下ろすと、ポムくんは街の大きなデパートに向かいました。目当ての店は、地下の二階にあります。店の入り口をおずおずとくぐると、騒々しいトランペットのような店員の声が、はやばやとポムくんをつかまえました。
「いらっしゃいませ。どんな魂をお望みで?」
 そこは狭くて細長い箱のような部屋でした。スチールの棚がところせましとならんでいて、いろいろな魂が売られていました。木製のもの、陶製のもの、金銀サンゴやらでん細工、中にはメノウや象牙でできたものもあり、特に店の一番奥の高棚に飾られてある翡翠の魂は、一筋の傷も歪みもなく、形も色も完璧にしあげられ、見ているだけでため息がでそうでした。一体どんな人が、あんな魂を買うのでしょうか?
 店には、女のお客が先にきていて、きれいに結いあげた頭のてっぺんには、宝石つきのみごとな魂を、これみよがしにつけています。
「そろそろこれにもあきてきたから、違うのがほしいの。ダイヤじゃなくて、もっと品のいいのがいいわ」
 すると店員は棚の奥から見るからに上等そうなエメラルドの魂をもってきました。女性客はまるで櫛を取り替えるように軽々と魂をつけかえると、急にがらりと雰囲気が変わって、アイドル歌手のようにひらひら腰をゆらしていたのが、背筋をきりりとのばして、女博士のようにきびきびと歩き始めました。どちらにしろ最後までポムくんには一瞥もくれず、レジでお金をはらうと、つかつかと店を出ていきました。
「そ、それ、見せてください……」
 ポムくんは、その人がいなくなるのを待ちかねたように、ふるえた指で棚をさしました。ポムくんが選んだのは、小さなガラスの魂でした。本物の水晶なんて、高くてとても買えないからです。店員はにこにこと笑いながらその魂を棚からおろし、ポムくんに持たせてくれました。それは梅の実ほどの小さなクリスタルガラスで、光にすかして見ると、中には不思議な波もようが浮かんでいて、金や銀の小さな魚が泳いでいるのが見えます。
「お目が高い。なかなかのものですよ。こんな風に魚を泳がせるのは難しいんです」
 店員はとうとうと商品の説明をしましたが、半分以上ポムくんは聞いていませんでした。ポムくんの心は今、甘い夢の中を泳いでいたのです。
(こんなきれいな魂がぼくのものになったら、ぼくはどんなに得意なことだろう。みんなきっと、ぼくがどんなに美しい心の持ち主か、うわさするに違いない)
 その値段は、ポムくんがもってきたお金よりほんの少し高かったけれど、店員は今回だけ特別だと言って値引きをしてくれました。
「いいですか。魂を入れる時、ほんの少し苦しみますが、そこを耐えると後は夢のように楽になります。魂が体になじむまでは、とにかく耐えることですよ。苦しいのは最初だけですから」
 店を出る時、店員は念をおすようにポムくんに言いました。

 魂の包みを大事にかかえ、ポムくんは街の通りをうきうきと家に向かいました。とちゅう横断歩道の前で立ち止まった時、ポムくんは、ふと周囲の街を見回しました。するとポムくんには、魂を買った人と、魂の買えない人との違いが、明らかにわかったのです。買った魂の人は、まるで二百ワットの電球のように顔を輝かせ、流行の服に身を包み、ダンスをしてるみたいに軽やかに歩いています。でも魂の買えない人は、暗い顔でうつむいて、道のすみっこを自分が生きていることを恥じるかのように、ちょこちょこみっともなく歩いていました。
 ポムくんは、そんな暗くて貧乏なやつらのことを、心底から軽蔑しました。自分も昨日までは、あんなやつらの仲間だったんだと思うと、ほんとうにいやになりました。だけど、今日からはちがいます。ポムくんは生まれ変わるのです。おしゃれで、明るくて、個性的で、完璧な、新しい自分に!
 ポムくんは家に帰ると、さっそく包みをあけました。そして左側の耳にそっと手をやりました。魂の出し入れは、左耳の穴から、特別な道具をつかってやります。ポムくんは、その道具を、ひと月前に通信販売で買ったのです。それは小さなマニピュレーターのついた電動ドライバーのような道具で、最初はちょっとこわかったけれど、使ってみるとたいして痛くもなく、簡単に魂をとりだすことができました。はじめて自分の魂を見た時は、それはショックでしたが。
「あんなでこぼこな魂なんて、ぼくの魂じゃない」
 ポムくんは、機械を調整しながら、自分に言い聞かせました。そして、新しい魂を機械にとりつけると、目を閉じてそっと耳の穴におしつけました。スイッチを入れると、ぶーんと機械の音が近づいてきました。少し押しもどされるような感じがしましたが、かまわずに押しこみました。頭の奥で、かちりという音がしました。
 やがて、耳元でラジオの雑音のような、ざわざわという音が聞こえてきました。ポムくんは、わくわくしました。さあいよいよです。新しい自分の見る、新しい世界は、一体どんなでしょうか?
 けれど次の瞬間、ポムくんに訪れたのは、夢のような心地ではなく、とてつもない吐き気でした。背骨の辺りで、突然ばちばちと何かが破裂したような気がしました。次に、エンジンが爆発した車のように、体中ががくがくとゆれはじめました。
(く、苦しいのは、最初だけ、最初だけ……)
 ポムくんは、店員のことばを思い出しながら、くちびるをかみしめて耐えようとしました。はじめは、すぐにでも楽になると思っていたのですが、苦しみはおさまるどころか、かえって激しくなってきます。もう少しの辛抱だ、もう少しで、魂が体になじんでくると、どんなに自分に言い訳しようとしても、ポムくんの中で、何かが邪魔をして、どうしても新しい魂を受け入れることができないのです。
 ポムくんは、だんだん何かが違うような気がしてきました。生まれ変わって、人生を楽しくするために、魂を買ったのに、このすさまじい苦しみはなんなのでしょうか。肉も骨も内臓も、いいえ、まるごとの自分のすべてを、みんな吐いてしまいそうです。一体何が、ポムくんの中からポムくんを吐き出そうとしているのでしょうか?
(だめだ、こんなの、耐えられない! だれか、たすけて!)
 うすれていく意識のなかで、ポムくんは思わず叫んでいました。

 気がついた時、ポムくんの手の中には、血まみれの機械がありました。ガラスの魂は、半分欠けて部屋のすみに転がっています。苦しんでいるうちに、夢中で頭からぬきとったのでしょう。けがをした左耳はじんじん痛みましたが、もう吐き気はなく、気分は落ちついていました。
 静かな時が過ぎました。ポムくんは、しばし呆然と座り込んでいましたが、やがてのっそりと立ち上がり、とぼとぼと裏庭の松の木に向かいました。
 ポムくんは、松の木の根元をほりはじめました。干からびた芋のようにみにくい、でこぼこな魂は、まだそこにありました。
「やあ、げんきだった?」
 ポムくんは気まずそうに魂によびかけました。でも魂はじっとだまったまま、何も答えてはくれません。ポムくんは、部屋にもどると、炊事場で、魂をていねいに洗いました。そしてふたたび、自分の頭の中に埋めました。魂はきっちりと頭の中におさまりました。でも、胸の中では、ずきんと、重い痛みが灯りました。ポムくんは悲しくなりました。さみしくて、恥ずかしくて、みじめな気持になりました。でも、あんな苦しい思いをもうしないでいいのかと思うと、少し安らかな気持ちにもなりました。
「これがぼく。傷と、歪みだらけのぼく。でも、ぼくは、ぼく以外の、だれにもなれないんだね……」
 ポムくんはため息をついてつぶやきました。窓の外の空を見ながら、涙があふれました。
 と、その時です。不意に、海の底から、沈んだ船がいっぺんに浮き上がるように。何かがポムくんの中で大きく盛り上がってきたのです。まだ形もわからない、熱いものが、自分の中から、つんと生まれて、不思議な力が、体じゅうに満ちてきたような気がしたのです。
 ポムくんは、また魂を取り出してみました。すると、魂の一部が少しむけて、まるで種のように、さっきまでなかった小さな薄緑の芽が、中から突き出してきていたのです。
「ああ……」
 懐かしさが、潮のように吹き出して、気がつくとポムくんは、魂を抱いて、声をあげて泣いていました。
「ごめん、ごめんよ、気がつかなかったんだよ……」
 ポムくんは、部屋中が池になるかと思うほど、いつまでも、いつまでも、泣き続けました。そして、ふとふり返ったとき、部屋のすみに転がっているガラス玉は、もうただのこわれたゴミにしか、見えませんでした。

(おわり)



(2000年、ちこり19号所収。種野しづか名で発表。)





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子路

2013-12-06 08:58:26 | 詩集・空の切り絵

由、なんじにこれを知るをおしえんか。これを知るをこれを知るとなし、知らざるを知らざるとなせ。これ知るなり。
     (論語・為政)

    ***

いいか、がちがちの固定観念を捨てろ。
自分=正しい
というその数式を捨てろ。

鉄板に正しいと思っている、それそのものが間違っている。
そういうことが、世の中には蔓延しているのだ。

自分の土台、そのものが間違っている。
そういう発想をしてみろ。
それができないと、
いつまでも苦しいばかりだぞ。



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リゲル

2013-12-06 05:00:19 | 画集・エデンの小鳥
リゲル
2013年




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イザナミ

2013-12-05 08:58:44 | 詩集・空の切り絵

伊耶那美の命まづ「あなにやし、えをとこを」とのりたまひ、後に伊耶那岐の命「あなにやし、えをとめを」とのりたまひき。おのもおのものりたまひ竟へて後に、その妹に告りたまひしく、「をみな先立ち言へるはふさはず」とのりたまひき。
    (「古事記」より)

イザナミの命がまず、「ああ、なんてすばらしいお方」とおっしゃり、後でイザナギの命が、「おお、なんと美しいひとだ」とおっしゃいました。それぞれがおっしゃったあとに、おっとが妻に「女が先に言うのはよくない」とおっしゃいました。

    ***

結局は
人間は
いちばん好きな女が
いちばんいやで
いちばん好きな女を
いちばんいじめて

いちばん好きな
女ばっかり
追いかけてきたんだよ



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ベアタ・ベアトリクス

2013-12-05 04:32:36 | 虹のコレクション・本館
No,25
ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ、「ベアタ・ベアトリクス」、19世紀イギリス、ラファエル前派。

ラファエル前派は、目の付け所はよかったが、芸術運動としては、イギリス的趣味に流れて、絵画としてあまりよいものは生まれなかった。おもしろい作品はあるがね、絵画本来の使命を果たせるものと言えば、かろうじてこれくらいしか思い浮かばない。まあ、全部を見たわけではないのだが。

この絵のモデルのエリザベス・シダルは、不幸の匂いのする美女だった。よくいるね。美しいが、どこかさみしい影がある。男はこういう美女に興味を持つが、妻にしたいとは思わない。自分も不幸になるような気がするからだ。

そのとおり、シダルはやがて、ロセッティの心を、ジェインという女に奪われる。ロセッティは自分に尽くしてくれたシダルに答えるために彼女を妻にするが、ジェインに惹かれる自分の心を抑えることはできず、結局妻を、自殺かと思われる変死においやるのである。

この絵は、そういう妻に対するロセッティの呵責が描かせたものだ。

ジェイン・モリスは、ポーカーフェイスを決め込んで、かなり痛いことを平気でやれる女だった。男をとりこにし、他の女を破滅させることなど、何とも思わない。シダルのような女は、こういう女に苦しめられるのである。

ロセッティは、勉強不足から、不器用さをつかれる画家だが、ラファエル前派においては、もっともおもしろい画家である。この、ふたりの女に引き裂かれた男の描いた絵が、男の馬鹿さ加減を、絶妙に表現している。




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