世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

6月も終わり

2012-06-30 07:32:58 | 花や木

6月も今日で終わり、今年も半分が過ぎましたね。最近、文章を書くことが多くて、花の写真を紹介する機会が減ったので、何となく、月の最後の日は、花の写真をいくつか紹介する日になってしまいました。
冒頭は、今年初めてであった、ツユクサ。青い花弁が透き通っているようできれいです。



これは、ハルシャギク。最近咲き始めました。何となく、この花を見ると、夏が近いなって思いますね。とても強い花で、ご近所のアスファルトの道と庭の間の隙間から生えてきて、たくさん花を咲かせます。花の中で何かが燃えているようだ。



この花は、名前は忘れてしまいました。前に何かで調べたはずなんだけどな。本当に良い花です。強くて、愛でいっぱいで。人間のために大切なことをしてくれる花。こんな花が、家のお庭にたくさん咲いているのは、とてもよいことだと思います。ときどき花にお礼を言ってくださいね。本当によいことをしてくれる花ですから。
近所のスーパーの店先で売っていたのを、勝手に撮らせてもらいました。



アサガオ。もう夏ですね。はす向かいのおうちのお庭に、張られたネットの上で、一つだけ咲いてた。アサガオはきれいだな。きれいな心の匂いがするな。美しいな。



エンジェルトランペット。和名ではキダチチョウセンアサガオと言うらしいです。これもご近所のお庭で咲いているのを見つけて、撮らせてもらいました。最近は、犬の散歩をするときも、カメラを持って行くのですが、花を見つけてわたしが写真を撮ろうとすると、犬はわかってくれるのか、しばらくじっとして待ってくれるようになりましたよ。


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2012-06-28 09:20:06 | 月の世の物語・余編

「なんですか?ややこしい罪びとができたら、ぼくのとこにもっていけとでもいう道理でもできてるんですか?」竪琴弾きは、日差しのように月の明るい林の中を速足で歩きながら、少し怒ったように言いました。青年がひとり、彼を小走りで追いかけながら、言いました。「いや、そんなことではないですよ。ほら、この前、あなたの担当していた人がひとり、圏外の地獄に落ちてしまったじゃないですか。それで空きができたからだと思うんですけど」
それを聞くと、一瞬、竪琴弾きの目に青い悲哀の影がさしこみました。「…そうですね、多分そのとおりだ」竪琴弾きは、ずれた帽子をなおしつつ、小さな声で言いました。脳裏に、ある女性の面影が浮かび、竪琴弾きは悲しげに目を伏せました。

竪琴弾きの後ろを追いかけている青年が、ふっと息を吐いて、手の中に書類を出しました。それを読みながら、彼は言いました。「たしかに、難しい罪びとですね。これはどうやって導いたらいいんだろう」竪琴弾きも、歩きながら青年から書類を受け取り、それを読みました。「…かなりいい人ですね。この人は、二千年は月の世に来ていない。このたびの人生でも大過なくやり過ごして、ほとんど罪らしい罪は犯していない。なぜ月の世に来たのか、自分でもさっぱりわからないでしょう」
「ええ、普通なら、この手の罪は、浄化することは今の人間には難しいからと、彼らが成長するまで待ってもらえるはずなんですが。なぜか今回、許してもらえず、まっさかさまに月の世の地獄に落ちてきている。原因はお役所でもわからないそうです。上部にお伺いしているところなんだそうですが」青年は腕を組んで歩きながら言いました。そして、ため息とともに付け加えました。「…人間は、何も知らないまま、物事をいとも簡単にやりすぎてしまうからなあ…」

竪琴弾きは書類を手元から消すと、言いました。「さて、どうするべきか。どこまで彼に話したらいいと思います?」「難しいですね。事情を全部説明したら、人間にはまだ教えてはいけないことまで教えなくてはならなくなる」青年は、困ったように頭をかきました。竪琴弾きは木々の間を縫うように歩きながら、木漏れ日のように足元に揺れる月の光を見つつ、考えていました。そうしてしばらく、白い月の光に目を浸していると、ふと、光る小魚のように、何かの直感のようなものが彼の頭の中を横切りました。竪琴弾きは言いました。
「…うん。これはもう、全て話すより仕方ないかもしれない」「すべて?」「ええ、確証はありませんが、神の御計画の流れの中で、何かが変わってきているのではないでしょうか」「ふむ…」「とにかく本人に会って話してみましょう。多分、何かの神の導きがあるでしょう」「そうですね」
ふたりは、無数の光りながら踊るこりすのような明るい月光の木漏れ日を浴びながら、林の中をどんどん進んで行きました。

やがて、月の光はだんだんと暗くなり、林も鬱蒼と濃い森に変わってきました。どこからか水の音が聞こえ、ふたりは、暗い森の中を流れる一筋の川のところまで来ました。青年がポケットから月珠を取り出し、あたりを明るく照らしました。すると、川向うの岸辺に立っている木々に、何千羽もの鴉が、闇を切り取って無数に貼りつけたように、とまっているのが見えました。鴉たちは、月珠の光に驚いて、がやがやと騒ぎだしました。竪琴弾きは竪琴を鳴らし、鴉たちに鎮めの魔法をかけました。すると鴉たちは騒ぐのをやめ、代わりに、ふたりをちらちらとみながら、何かひそひそと話をし始めました。竪琴弾きは鴉の群れる向こう岸の森に向かって、罪びとの名を呼びかけました。しかし答えはありませんでした。竪琴弾きは何度も彼の名を呼び、二十ぺんも呼んだところで、ようやく小さな声が返ってきました。

「…はい、おります。ここです」
すると、黒い森の奥から、青い羽根をした鴉が顔を出し、それはよろよろと飛んで、森の木々の中から向こう岸の川べりに降りて来ました。竪琴弾きは少し安心して言いました。
「やあ、出てきてくれましたか。お会いするのは初めてかな。ぼくが今回からあなたを担当することになったものです。月の世に来るのは、ほんとうに久しぶりでしょう」
竪琴弾きが言うと、青い鴉は、悲しげな顔できょろきょろとあたりを見回し、言いました。
「わ、わかりません。どうしてわたしは、月の世にきたんですか。悪いことなどした覚えはありません。辛い失敗をしたこともありましたが、ちゃんとそれも謝ってお返しもしているはずです」
「ええ、あなたは、人間的にはほとんど、罪らしい罪を犯してはいません。おっしゃるとおり、一度だけ女性とトラブルがありましたが、ちゃんと悔いて、お詫びをしている。本来なら、日照界にいくはずなのですが…」

そこまで言ったところで、竪琴弾きは隣の青年と目を合わせました。青年が片眼を歪めて、苦しそうな顔をしました。空を見ると、群青の空に雪のように白い月がかかっています。川の上を吹く風は何やらねばついて生温かく、どこかに何か、とても汚いものがあるような気配がしました。向こう岸の鴉たちは、青い鴉を見ながら、何か面白げに、くっくっと笑い始めました。鴉たちの笑いは木々をざわめかせ、暗い森が揺れて一斉に、青い鴉を嘲笑し始めました。竪琴弾きは、苦しげに目を閉じました。青い鴉は森や鴉が一斉に自分を責め立てる声を浴びて、石のように凍りついてそこで動けなくなりました。何が何やらさっぱり分からない様子で、青い鴉は助けを求めるように、震えながら竪琴弾きの顔を見上げました。

「どう、どうして、こうなったのです。ここの鴉は、みんなでわたしをいじめるのです。わたしは毎日、鴉にひどい悪口を言われるのです。森も鴉も、みんな、わたしの悪口を言うのです。なぜこのような目に会うのですか?わたしは」

青い鴉は竪琴弾きに訴えました。竪琴弾きは、目を開けてしばし鴉をまっすぐな目で見、少し考え込んだ後、もう一度月を見上げました。そして、心の中で神に祈り、竪琴をぽろんと鳴らしました。すると、弦の一本が、悲鳴を上げるように、ぴんと音をたてて切れました。竪琴弾きは驚いて、竪琴を顔の前に持ち上げて見つめました。切れた弦は引きちぎれた月光の糸のように、風の中を揺れながら、蝿の羽音のようなかすかな音をたてていました。驚いて声を失った竪琴弾きに、青年が小声でささやきました。

「それは、何かのおしるしなのではありませんか。あなたの琴の弦が切れるなど、滅多にないことだ」竪琴弾きは、竪琴を背中に回し、しばし沈黙の中に考えつつ、青い鴉を、見つめました。その間も、向こう岸の鴉や森は、しきりに青い鴉を汚い言葉でののしり、その故に風が汚れて、森の方から、何やら腐ったゴミのような臭いがただよってきました。

竪琴弾きは、やがて何かを決心したかのように深いため息をついて、言いました。
「…そういうことですね。これはたぶん、神よりの何かのおしるしでしょう」竪琴弾きは、身を引き締めて神に導きを願ったあと、真剣なまなざしで青鴉を見ながら、言いました。

「…青鴉さん、あなたは、多分、人間の中で、初めてこれを知る人になるでしょう。人間は、ほとんどみな知らないことですが、地球世界には、人間の知らない、『絶対にやってはいけないこと』ということがあるのです。あなたは、今回の人生で、それをやってしまったのです。普通なら、この罪を浄化するには、人間はまだ若すぎるので、それができるようになるまで、待ってくれるはずなのですが、なぜか今回は待ってくれずに、あなたはここに落ちてしまった。そして罪を償わねばならない」
「ぜ、絶対にやってはいけないこと? それはなんです?」青烏が羽を震わせながら言いました。
「あなたは生前、狩猟が趣味でしたね」
「ええ、それは好きで、犬をつれて、よく雁やウサギなどを撃ちにいったものでした」
「あなたは一度、その猟銃で、一羽の鴉を、気まぐれに撃ち殺したことがあるでしょう?」
「鴉を?さあ、あったかな。覚えていない。でもその鴉が、なんだというのですか?」

青年が苦しげに目を閉じ、小さく清めの呪文を唱えました。竪琴弾きは少し目を青鴉からそらし、眉間に苦悩のしわを寄せました。竪琴弾きは厳しい目で青鴉に向かって言いました。
「青鴉さん、それが、『絶対にやってはいけないこと』だったのです。鴉という鳥には、時々、特別な鴉がいましてね、その鴉は、絶対に殺してはいけないのです。あなたの殺した鴉は、その絶対に殺してはいけない鴉だったのです。なぜならその鴉は、森の天然システムを管理していた精霊の魂を持っていたからです」

青い鴉はきょとんとした顔をして竪琴弾きを見つめました。何のことやら、さっぱりわからなかったからです。天然システムという言葉さえ、彼は知らなかったのです。竪琴弾きは続けました。
「あなたがその鴉を殺してしまったために、精霊が人類を愛することに疲れ、森を放棄して、地球世界を離れてしまったのです。精霊がいなくなると、森の天然システムはバランスを崩し、次第に荒野と化していきます。木がそこに生えるのをいやがるようになるからです。森は少しずつ消え、そのおかげでたくさんの生命がそこで生きられなくなり、ある特別な種族の鼠が絶滅してしまいます。それは人類の運命にとても重い荷を負わせることにもなりかねないのです。つまり、その鼠がやっていた天然システムでの仕事ができなくなり、地球の天然システムのバランスの一部が崩れ、砂漠化が始まります。つまり…」
「まって、まってください! そんな、そんなことに、なるんですか?鴉一羽殺しただけで?」
竪琴弾きはしばし青鴉を見つめながら、苦しそうな顔をしました。ちぎれた琴糸の音が自分の身の痛みのように感じられ、彼は瞬間悲哀に溺れそうになりましたが、再び口を開きました。それはまるで、誰か自分とは違うものが自分の口を使ってしゃべっているかのようでありました。

「人間は、なんでも知っているつもりで、地球の秘密について、何も知らないのです。どれだけのたくさんの愛が、地球世界を支え、美しく維持管理しているか、人類が何も知らずにやってしまったことの後始末を、どれだけの間、どれだけたくさんの愛が辛抱強くやっているのか、…全く知らないのです。あなたが殺した鴉の管理していた森は、今、神と数人の若者が管理していますが、もうすぐ、新しい精霊がやってくることになっています。それで、何とか森の砂漠化を防げることは防げるのですが、決して元の森には戻りません。新しい精霊は、前の精霊と同じことはできないからです。鼠も滅びはしませんが、かなり数が減ると予想されています。…以上が、あなたの犯した罪のあらましです。わかりましたか?」

「そ、そんな、そんな、そんな…」青鴉は、ふるふると羽根を震わせながら、岸にへたりこみました。「…そ、そんなこと、ぜんぜん知らなかったんですよ。か、鴉が精霊だなんて…」

竪琴弾きは鴉の動揺の仕方を見て、胸の奥で、やはりまだ教えるのは早すぎたのではないかと、後悔しましたが、彼の口はその彼の気持ちを無視して、勝手に言いました。

「残念ですが、あなたは、その罪を、浄化しなくてはいけません。それは大変な苦労ですが、人間の段階に合わせて簡略な形にはなっています。あなたは今、鴉を殺して森を消滅させるという罪を犯したために、一羽の青い鴉となって、森やほかの鴉の罵倒を浴びていなければなりませんが、森の管理を引き継ぐ精霊が決まったとき、ほかの地獄に移されます。多分そこであなたは、数百年の長い月日を、森林浄化の石となって、ある森の地中深くにじっと埋もれていなければならないのです。そして、人間の無知が起こしたことを日々浄化している人たちと同じ苦しみを味わい、学ばねばならないのです」

青鴉は目を見張り、あっけにとられて、しばし息をすることさえ忘れていました。何か言おうと、くちばしをパクパク動かしましたが、声は何も出ませんでした。

竪琴弾きは岸辺で茫然としている鴉に向かって言いました。
「大丈夫です。神のお導きがありましょう。ぼくも時々、あなたを訪ねて様子を見にゆきますから。ひとりぼっちではないですよ。これも勉強と思って、どうか強い気持ちになってください」
竪琴弾きは言いましたが、青鴉はもう何も聞こうとせず、ふらりと背中を向けたと思うと、よたよたと森の中に帰って行きました。森の奥から、一言、刺のように痛い鴉の罵声が、聞こえました。

「竪琴、直さなければいけませんね」帰り路、明るい林の中を歩きながら、青年が言いました。竪琴弾きは黙ったまま、うなずきました。彼らの背中を照らす白い月の光が、弦の切れた竪琴を憐れむように触れていき、かすかに風に溶ける音を鳴らしました。
「おっと」いきなり青年が言ったので、竪琴弾きは振り向きました。見ると青年の手の中には一枚の黄色い紙が持たれていて、青年がそれを読んで少しびっくりしているのです。

「ああ、やっぱり。わかりましたよ。一部地域の人間はもう、地球天然システムについての勉強を始めなければならなくなったんだ。だから、ある程度自分に力がある人は、払える罪は払わされることになったんだ」竪琴弾きは、青年から黄色い書類を受け取ると、それを読みました。そして、文字の列に目を走らせながら、小さく、ひゅう、と口笛を鳴らしました。

「始まったんですね。でも早すぎやしませんか。まだ人間は知らないことが多すぎる」
「逆ですよ。本当は、遅すぎたくらいなんだ」
「…ええ、そうですね。人間は、地球天然システムに関して、無知に過ぎる。知らないということさえ知らないほど、無知にすぎる。これは、もう少しすると、大変なことになりますね」
「多分。人間は、苦しいことを味わうでしょうね」
「ええ、神の助けもありましょうし、多くの人は、きっと耐えて乗り越えてくれるでしょうが…」

二人が林の中を歩きながら、会話をしている頃、青い鴉は、黒い森と黒い鴉たちに周囲を囲まれて、ひそひそと虫のように耳の中に流れてくる汚いののしりの言葉に、青い翼で耳を覆いながら、必死に耐えていました。



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2012-06-27 08:05:34 | 月の世の物語・余編

「ずいぶんと広いですねえ。…予想以上だ」
一人の日照界の役人が、角ばった高い岩山のてっぺんに立って、眼下に見える風景を見渡しながら、言いました。そこには、はるか向こうの地平線まで、果てもなく続く、広い荒野がありました。石と岩と泥砂ばかりの茶色い大地がどこまでも敷かれ、所々に枯れかけた草むらや、刺だらけのイバラの茂みや、奇妙に歪んだ形のサボテンの行列などがありました。空は灰色で、月は白い薄紙で包んだミルク飴のようでした。

後ろにいた月の世の役人が、書類を手に風景を見回しながら、言いました。
「…ここまで規模が大きくなるとは、わたしたちも思っていませんでした。これは少々、大変なことになりそうだな」
「この地獄が完成するまで、どれくらいかかるのですか?」日照界の役人が振り向きながら尋ねました。すると月の世の役人は書類を、眉を歪めて見ながら、答えました。
「…二年、というところじゃないでしょうか。これも、地球浄化計画の一環なもので、相当、用意周到に、細部にわたるまで丹念に作られるそうです。何せ、ここに落ちる人間たちは、とんでもないことになりますから」

日照界の役人は腕を組んで、眼下の荒野を見渡すと、苦しそうに目を歪めながら、ため息をつき、首を振りました。その足元では、ふと小さな丸い石が鼠のように動き始め、彼らより少し後方の、棒状に立ちあがった奇妙な形の岩の上に登って、そのてっぺんでくるくる回ったかと思うと、ぽう、と鳥のような声をあげました。よく見ると、眼下の荒野でも、石や岩が、鼠や兎や山猫のように、自分の位置を探して、ころころと動きまわっていました。時々、笛のように鳴いて、他の石を呼び、荒野の上に並んで、星座のような印を描くものもありました。

「…むごいな。まあ地獄とはもともとそういうものではありますが…、しかし、これからどういう創造がなされてゆくのだろう。花や木や鳥はここには来ないのだろうか」日照界の役人が声に苦悩を混ぜながら言うと、月の世の役人が苦笑しながら言いました。
「…きてくれればいいですが、彼らは花や木や鳥なんぞ、目もくれないでしょうな。彼らにとっては、いても何の意味もないものだ」
「それは、そうかもしれません…、しかし花や木や鳥は罪びとを必ず愛してくれる。それが救いになることもある…」

月の夜の役人は、右手でさっと胸をこすると、手元の書類を消しました。そして自分の顔をなでながら、ゆっくりと眼下の荒野を見渡すと、かすかに、ああ、と聞こえるため息をついて、言いました。
「日照界では、もうすでに印が現れ始めている人がいるそうですね」
「…ああ、ええ、そうです。ほおや額や、特定の位置に、妙なアザができ始めている。ことこの件に関しては、日照界の男性も自分には関係ないと言ってはいられません。これは何せ、人類の男性すべての、罪ですから」
「ええ、女性を、軽んじすぎてきた。軽んじるなどというものではない。まるで人間とは思わず、自分の欲望を満たすためだけの肉塊のようにさえ扱ってきた。女性の苦しみはあまりにひどかった。そして男性は女性を惨く辱めてきた罪を、今まで一度も払ったこともなく、女性に謝罪したこともない」
「そうです。それです。だからこのたび、人間の男性は神によって試験を課されるのです。女性に、今までやってきたことの全てについて、謝罪することができるかと、人間の男性は神に試される。女に頭を下げ、謝ることができるかと」
「そしてその問いにNOといえば、この地獄に来ることになる。…むごい地獄だ。これを人間の男性が耐えることができるかと言ったら、正直、とても無理ではないでしょうか」
「耐えることができても、三日あたりが限度でしょうね。しかし、どんなに短い人でも、百年はここにいなければならない。そしてその間、彼らは性的飢餓感にもだえ苦しみながら、この荒野の泥にまみれて這いつくばることになる」

日照界の役人と月の世の役人は、顔を見合わせると、黙ってうなずきあい、指を回して一息風を起こすと、空に飛び上がり、岩山から下りて荒野に降り立ちました。そしてしばらくの間、荒野を歩き回り、要所要所を見回しながら、それぞれに、気付いたことを帳面にかきとめたり、キーボードに打ち込んだりしていました。その間も、石や岩はあちこちを転がりながら、所々に奇妙な石の印を作ったり、ピラミッドのような小山を作ったり、珍妙な迷路や複雑な紋章を作ったりしていました。

月の世の役人は、帳面を繰りながら、荒野の中に生えている、小さなイバラの茂みに、片手を差し込みました。鋭い刺が役人の手を傷つけましたが、役人は特に気にもせずに、イバラの茂みを少しかきわけて、中を覗き込みました。そのとき、イバラの根元から、突然小さな泥の塊を投げつけられたかのような、気味の悪い声が聞こえてきたのです。

「思い知るがいいわ」

月の世の役人は驚いて、思わず、汚いものをぬぐうように顔をなで、清めの呪文を唱えました。それは低い女性の声でした。役人は、刺に手を痛く刺されながらも、茂みをかきわけて、イバラの奥の根元の方をのぞき見ました。するとそこに、血のように赤い小さな女の唇があったのです。役人は声をのみ、あわてて帳面を取り、銀のペンを出して呪文を唱え、帳面にその唇の写真を焼き込みました。唇は花弁のようにひらひらと震えながら、思い知るがいい、思い知るがいい、と繰り返しました。月の世の役人がしばし呆然とその唇を見ていると、その声に気付いた日照界の役人がキーボードをかかえて、近寄ってきました。その間も、女の声は、まるでネコ科の猛獣の唸り声のように、繰り返すのです。

「思い知るがいいわ、思い知るがいいわ。どんなに、どんなに苦しかったか、つらかったか。全部、全部、思い知るがいいわ」

近くに寄ってきた日照界の役人も、しばし唇を見詰めながら、それを茫然と聞いていました。やがて唇はにやりと口の端をゆがめ、ははは、と声をあげて嘲笑いはじめました。彼ら二人は、声もないまま顔を見合わせました。そして彼らは再び荒野を歩き始め、あちこちにあるイバラや草の茂みや、奇妙な形のサボテンなどに、手や足で刺激したり、息をふきかけてみたりしました。すると草むらの奥やサボテンの根元に、花の咲くように赤や薄紅やオレンジ色の女の唇が現れ、それらはみな、女のうらみがましい声で、風に毒を振りまくように言うのでした。

「思い知るがいい。思い知るがいい。どんなに、どんなに、恥ずかしかったか、痛かったか、辛かったか、怖かったか。おまえたたちが、わたしたちに、何をしたのか、思い知るがいい」

役人たちは、目をとじ、地に膝をついて、しばし神に祈りを捧げました。そしてふたりとも、得られた情報をきちんと帳面やキーボードに放り込むと、片方は目を閉じて上を見あげほおに涙を一筋流し、片方は両手で顔をおおって、口を噛みしめて嗚咽をあげそうになるのを必死にこらえていました。

「…むごい。それが自らのなしたことの結果とはいえ、男は、性的興奮状態が持続したまま、ここに放り込まれる。そして長い月日をこの荒野で女性の声にののしられながら、性的飢餓感に苦悶していなければならない」月の夜の役人が言いました。「どう考えても、人間の男には耐えられないでしょう。七日もてばいいほうだ。必ず、死ぬか、狂うか、してしまう」日照界の役人が答えました。すると月の世の役人は言いました。「いや、そこは、修羅地獄と同じで、どうやっても死ねないようにされるらしいです。それに、死んでも性的飢餓感からは逃れられない。一層苦しいことになる」「女性を軽んじて、辱め続け、一切の負債を払わずにきた結果がこれか」「いや、正確には、結果の一つです。男の苦しみは、ほかにもまだある」

日照界の役人は、キーボードをカードに戻してポケットにしまうと、こめかみをもみながら、しばし考え込み、言いました。
「これは、男性たちに、教えておいたほうがいいでしょう。試験がどういう形で彼らにふりかかってくるかは、わたしたちに知ることはできはないが、もし試験に失敗したら、どういうところに落ちるかは、教えておいたほうがいい」
「ええ、わたしも、そうは思うんですが…。気になるのはこの規模だ。こんな広い地獄は月の世にも滅多にない。一体どれだけの男が、ここに落ちるのでしょう」
「確かに、広すぎる。実際にこの地獄が機能し始めたら、どういうことになるか、予測もできない」

そのとき、ふと、月の世の役人が目をあげて月を見、「おお」と声をあげました。
「…ごらんなさい。月が、衣を脱ぎますよ」
「ほお?」
見てみると、さっきまで薄紙をまとっていたようだった月が、その白い薄紙を風にさらりと脱がされ、その奥にある本当の色を見せたのです。それを見た日照界の役人は、驚いて思わず顔を背け、小さく呪文を唱えて目を清めたあと、急いで自分の記憶の中からその月の映像を消しました。月の夜の役人がねぎらうように云いました。
「どうしました。気分を悪くされましたか」
「いや、少し」
「わたしたちは慣れているので、それほどのショックは受けないが、確かに、気持ちのいいものではありませんね」
言いながら、月の世の役人は、もう一度月を見上げました。その月は、ほんのりと薄桃色をしていて、まるで女性のやわ肌のようになまめかしく、やわらかく見えたのです。そして風には女の肌の匂やかな香りがかすかに混ざり、まるで薄絹のようにふわりと、なまあたたかく吹くのでした。月の世の役人がその月を見ながら、帳面に何事かを記すと、月はやがて、もう一度、白い薄紙をさらりと身にまとい、元のミルク飴のような姿に戻りました。風もまた、元の荒野の風に戻りました。

荒野を並んで歩きながら、役人たちは語り合いました。
「この地獄が完成するまで、二年あるとおっしゃいましたね」日照界の役人が言うと、月の世の役人が「ええ」と答えました。日照界の役人は、月を背に荒野をまっすぐに進みながら言いました。「その間に、男性たちに、できるだけ女性に謝罪をするように、教え込んでおきましょう。でないと、ここはむごすぎる」
月の世の役人が彼と肩を並べて歩きながら言いました。「そうですね。我々にできる努力はしておいた方がいいでしょう。わたしも思います。男があれだけのことを女にしておいて、一言も謝らないのは、人間と言えません。男は、言わねばならない。やらねばならない」
「ええ、そのとおり」

日照界の役人が、口から石を吐くように厳しくそう言った時、ふと、彼の足が、小さな草むらを踏みました。するとまた、草むらの奥に花弁のように小さな薄紅の唇が咲き、微笑みの形をして、少女のような声で、冷たく言うのでした。

「絶対に、許さないわ」



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アグネス

2012-06-26 07:39:10 | 画集・ウェヌスたちよ

苦しいほど美しい女がいたら
男は愛してしまうのが苦しいから
みんなで馬鹿にして 意地悪をするのよ
美しくったって 男は女に
いいことなんか 何もしてくれないの
幸せになれる女は ほとんどいないわ
よっぽど良い男がいない限りね

きれいな女がいたら
男は女に見えないところで
馬鹿なことをやって
女を馬鹿なものにして
地獄に落として
みんなで遊べるおもちゃにするの
本当よ
そうやって女は
恐ろしいほど 辛いことをやらされて
いらなくなったら 捨てられて
最後には何にもなくなって 死んでしまうの

そんなことでもしないと
女に相手にされない男が
そういうことをやるのよ
大勢でね 一人の女をいじめるの
信じられないかもしれないけれど
男は何千年と 同じ手を使って
女をいじめてるのよ
それも美人ばかりね

自分の力で 何とか立派なことをして
美しい女と一緒になりたいなんて
そんな男は ほとんどどころか
皆無よ

男はみんな 
裏でいろんなことを巧みに操作して
自分をカッコ良く見せて
みんなで女を騙して 自分の相手をさせるの
やってることは それだけよ


(ジュディス・エリル詩集「ミネルヴァの嘲笑」より)



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君子重からざれば

2012-06-25 07:31:13 | てんこの論語

子曰く、君子重からざればすなわち威あらず。学べばすなわち固ならず。忠信を主とし、おのれに如かざる者を友とするなかれ。過ちてはすなわち改むるに憚るなかれ。(論語・学而)
先生はおっしゃった。君子は小さなことでおろおろしているようでは人に軽く見られる。勉強をすれば自分本位に偏りがちなものの見方を改善することができる。何事にもまことを尽くすということを、自分の心の柱とし、友人を選ぶなら優れて学ぶべき人を選びなさい。間違ったことをしてしまったら、すぐに反省し、それを改めなさい。

   *

これは、ある人に言いたいことなんですが、仮にその人を、Aさんとしましょう。Aさんは今、悩んでいます。大きな壁にぶつかり、その壁をどうやって乗り越えたらいいのかわからなくて、悩んでいます。とにかく今、大変なことになっていて、本当に困っているのですが、どうしていいかわからず、ただ毎日を、おろおろと過ごしているのです。
問題をなんとか解決したいのだが、どうしてもAさんにはそれができない。それはなぜかというと、理由は簡単、自分のしたことが、間違っていたのに、それを認めたくないからです。
実に残念なことなんですが、人間、多くの人は、こういうときは本当の現実に目をつぶる。そして毎日ただ、悩むだけで何もしないでいるうちに、状況はどんどんひどくなって、結果、だいたいは、本当に大変なことに、なりすぎてしまうのです。

自分の過ちを認め、素直に頭を下げ、自分のするべきことをする、つぐなうべきことはつぐなう、そういうことを、真心を持ってやれば、問題はたとえ全部とはいかなくても、かなりなんとかなるものなのです。本当に大切なのは、人にも自分にも、「忠信」をつくすということだ。真心でもって対応する。本当に正しいことをする。それがどんなに苦しくとも、自分のやるべきことを、正しい方向に求めてゆく。

学べばすなわち固ならず。…すなわち、正しいことを勉強していれば、自分本位に偏りがちな固い心を改め、しなやかに頭を切り替えることができる。つまりはです。いつまでも、なんでこんなことしてしまったのか。どうしてこんな馬鹿なことをしてしまったのかと、うじうじと悩んでいるよりは、すっぱりとその悩み迷う心を切り捨て、どこからみてもそれが正しいということをしなければならない。すなわち、ケチくさいプライドを捨て、土下座をしてでも謝って、全て自分で何とかしてみますと言って、自分にできることをすべてやってきなさい。

その壁を乗り越えられないのは、やはり、Aさん、どう言い訳しても、あなたが、自分のことしか考えていないからです。こんな恥ずかしいことをしてしまったという自分の過ちを、認めたくないのだ。できるなら、なんとかうまいやり方を考えて、自分の過ちをなんでもないことにして、自分のプライドも何もかも傷つかない方法で、上手にこの状況を乗り越えられないかと、虫のいいことを考えていませんか。

以下に再び述べます。
これは、あなたが、この問題を乗り越えるための、最後の方法です。はっきりと言います。先方の人のところに行って、頭を下げ、何もかもを正直に申し上げ、すべて責任はとります、できることは何でもやります、申し訳ありませんでした。…と、心より謝って来なさい。そして、迷惑をかけたその人のために、自分にできることはすべてやりなさい。

Aさん、言っておきますが、今のまま、何もしないでいては、後々に、もっと恥ずかしいことになります。

最近のわたし、だいぶきついですね。昔はもっと優しかったような気がするが。何か知らないが、わたしの中に、もう一人のわたしがいるようだ。そのわたしは、ずいぶんと、何かに腹を立てているようです。

とにかくだ。正しいことをまっすぐにするということ、間違いに気づいたら改めると言うことが、どんなに大事なことかということを、どちらの道を選ぶにしろ、Aさん、今回のことで、あなたは大きく学ぶことでしょう。





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天使

2012-06-24 06:37:18 | アートの小箱

少し前のことですが、天使をテーマにした活動をしている、あるコミュニティをふと覗いたとき、ブーグローの絵が看板にあげられているのを見て、わたしは一瞬、うわ、と思わず声をあげてしまいました。何ですか。最近は天使がいろいろと流行っているのでしょうか。いろんな活動があるみたいですがもし、天使をテーマに扱うなら、頼むからブーグローの絵を使うのはやめてくれとわたしは叫びます。わたしも天使を描いた絵は好きだけど。テーマがテーマなだけに、ほんとにまじめにやるなら、ほかのもっとましな画家の絵を選んでくれと言いたい。で、ちょっと軽い衝撃を受けてしまったので、今日は、天使の絵をいくつか選んで並べてみました。

冒頭の絵は、メロッツォ・ダ・フォルリ(15世紀、イタリア)の「奏楽の天使」。これは本当に美しい。かわいらしくて、純真で、職人の整った良い心が見えて、心地よい。これは本当に天使そのものといっていい名作だと思います。で、下のが、ウイリアム・ブーグロー(19世紀、フランス)の「聖母子と天使」。



こうして並べてみると、何となく、違いがわかりませんか。ブーグローの描く天使は、きれいすぎるほどきれいには描いてあるけど、天使じゃない。白すぎるほど白く描いてあるけれど、何かが違う。みんなにせものだって気がする。

で、次が、ヤン・ファン・エイク(15世紀、フランドル)の「受胎告知の天使」。



これもわたしは好きです。天使の顔が優しく、瞳が温かい。北ヨーロッパの絵画の、南方よりもどこか光の薄らいだ画面全体の陰りや、彫像のように時を止めた人々の静謐な雰囲気もいい。そのせいか天使もとても気高く美しく見える。これも、本物の天使だ。

最後はサンドロ・ボッティチェリ(15世紀、イタリア)の「受胎告知」(部分)です。



神の子を受胎したと聞いて驚き惑うマリアを、気遣う天使のやさしく真摯なまなざし。思わず差し伸べる手。問題は、やっぱり、「愛」ですね。良い画家の描く天使には「愛」が灯っているのが見える。画家はまことに美しいものを描きたくて、本当の自分自身の心と手で描いたんでしょう。本当の自分とは愛だから、きっと自分の描いた絵の中の天使にも、自分の愛の火が点るのだ。

けれども、ブーグローの描く天使は、天使じゃないのです。彼の絵の中の天使は、まるで安物の女優に最上級の衣服を着せて、本物そっくりに化けさせて並べたように見える。まるでほんものそっくりに、それは美しく描いているけれど、まるごとうそっぱちだってわかる。それはなぜかというと、彼は、本当の自分が、絵を描いているんじゃないからなんです。少々ファンタジックなたとえをすると、前にも言ったけど、下手な画家が、魔法使いに魔法の筆を貰って、上手に描けるようにしてもらったという感じの絵なんだ。だから一見、とても美しく上手に描いているように見えるけれど、本当は、ものすごく下手なんですよ。これ、分かる人いるかなあ。時にいますね。すごくうまいけど、すごく下手な人。輝かんばかりに、白く描けば描くほど、汚れて見える。こうして並べてみると、わかりませんか。他の天使と比べると、どことなく、ブーグローの天使って、汚くて、嘘っぽいでしょう。

わたしだけかなあ。こんなことを感じるのは。

まあとにかく、わたしは、メロッツォ・ダ・フォルリの方が、ブーグローよりよほどいいと思う。最近はどうも、何かにつけきついことを書いたりしてしまうのですが、本当に、天使のような心で、天使のようないいことをしようと思うのだったら、ブーグローの絵を看板に使うのはやめたほうがいいと思う。ブーグローの描く絵が美しく見えるのなら、それはちょっと、心の勉強が必要だ。と、わたしは思う。

まあその、よけいなおせっかいかな。好き好きだから、別にいいのかもしれないけど。



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彼方より

2012-06-23 08:15:16 | 歌集・恋のゆくへ

彼方より きこゆる君の 魂を割る 叫びに我は 飛ぶ鳥となる


己が身の 骨を腐らせ 泣く君を 燃やす痛みの そはいかならむ


つたへたき 愛の響きを 君が背に ちひさき貝の 琴の音にそへ


胸の屋に ともる焚火に よりたまへ 菜の粥をやろ 歌うたひやろ


常に痛き 傷をまとひて 暗き野を 月を恨みて さまよふ人よ


風すさぶ 長き暗夜の 道なりて 夢のごとしと 今君はいふ


欲しきもの すべてえたりと いふ者の 胸を貫く 孤独のこほり



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星の言葉・2

2012-06-22 07:33:58 | 詩集・貝の琴

ゆうべまた
星が わたしのところにきて
自分の代わりに どうしても
みんなに伝えてほしいことがあると
わたしに言うのだ

遠い昔から
みなにそれを伝えられないことが
とてもつらく
長い長い間 星は悲しく
苦しんでいたというのだ

だからわたしは
星の代わりに言わねばならない
星は言った

戦争とは 大体
どんなものだと思いますか

わたしは言った
ああ それは
本当にむごいことだと思います

すると星は
悲しみと憐みに染まった瞳で
かすかに笑い わたしにこう言ったのだ

戦争とは
人殺しと 泥棒を
みんなでいっしょにやることです




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什さん

2012-06-21 07:45:38 | 画集・ウェヌスたちよ

男性を描いた切り絵のシリーズもこれが最後です。この人は、月の世の物語・余編「什」に出て来た、什さんです。

変わった名前ですが、実はこの名、昔わたしが見た夢から来ています。
いつだったかな、夢の中で、白いスーツを着た、とても背の高い美しい男性がわたしのところを訪れて、こういったのです。
「君があんまり小さくてかわいいというので、会いにきた」と。

で、私はどうやらその人のことを知ってるらしくて、なぜかしら、「ああ、什さんがきてくれた」というのです。そのわたしは、什さんと比べると本当に小さくて細くて、背丈は彼の半分くらいしかないのです。顔も胴の細さもまるで子供のようなのだ。

目を覚まして、「什」という字が、十字架に人をはりつけた図を表していると、なぜか気づいた。そして、夢の中に出て来た人が誰であるのかがわかった。

はたして什さんは、ほんとうにわたしのもとにきてくれたのか、それはわかりませんが。

この什さん、とても美しく描けました。男の人の絵を描いて、しばし見とれてしまったのは、「釈尊」の絵を描いて以来ですね。



今回はサービスで下絵もあげてみました。こっちの方がきれいに見えるなあ。







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聖者

2012-06-20 07:22:12 | 画集・ウェヌスたちよ

おなじみの白髪金眼の聖者です。わたしもこの人は好きなので、よく描くのですが。月の世の物語の中では、本章「青」「望」「愛」、上部編「桜」「菊」、余編「旗」に出てきます。

髪の毛は真っ白で、目は金色で、背は非常に高いという設定。
そのほかのことは、今までにもいろいろ書いてきたので、ここで書く必要もないでしょう。

こうして見ると、目はまるで猛禽類のようだ。人間ではないことがひとめでわかる。


   *

てんこ注、投稿内容の内容に、少し不快を覚える方もいると思い、書きなおしました。





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