世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

10月の終わり

2013-10-31 04:52:53 | 花や木
2013年10月の花や虫。冒頭はコスモス。


チャバネセセリ


コスモスとチャバネセセリ


ヒメジョオン


フヨウ


ホトトギス


イヌタデ


イヌホオズキ


ノゲシ


ローズマリー


バーベナ・ハスタータ


マイマイ


オキザリス・トリアングラリス


ヤマトシジミ


キンモクセイ


ハラビロカマキリ


ヒメツルソバ


ランタナ


ヒロハホウキギク


アメリカセンダングサ





壺ばあさん

2013-10-30 04:12:24 | 月夜の考古学・本館

 昔々、あるところに、タップという、とてもとても、ひどいいたずらっ子がいました。

 どれだけいたずらっ子かというと、
 おとうさんの上等の釣竿で猫の鼻をひっかけようとしたり、
 ばんごはんのサラダに芋虫を山ほどいれたり、
 時計屋のお嬢さんのスカートをめくったり、
 それはもう、ひどいいたずらっ子なのでした。

 ある日のばんごはん時、タップがあんまり世間にめいわくをかけるので、おとうさんが、タップにいいました。
「タップ、そんなにいたずらばかりしてると、今に壺ばあさんにさらわれてしまうぞ」
「つぼばあさんてなに?」
 タップは大好きなばんごはんのソーセージをほおばりながらききました。すると今度はおかあさんがいいました。
「町はずれのザクロ山に住んでる魔女のおばあさんのことよ。そのおばあさんはいつも壺を持っててね、いたずらっ子を見つけたら壺に放り込んでさらってしまうの。壺ばあさんはね、いたずらっこの肝をとって、お酢につけて食べるのが好きなのよ」

「なんだ、そんなのうそにきまってら!」
 タップはまた大人がおどかしているんだと思って、まるで信じません。おかあさんはためいきをつきました。
「タップ、人のいうことをきかないでばかりいると、今にひどい目にあうから」

 さてその夜、タップは夜遅くまでおきていました。壺ばあさんがほんとうにいるのかどうか、確かめてやろうと思ったのです。だから、早くねなさいというおかあさんのいうことをきかないで、ベッドの上でぽりぽりお菓子を食べていました。もし壺ばあさんがあらわれようものなら、一撃かましてやろうと、大きなパチンコも枕の下にちゃんと用意していました。

 さてさて、夜もふけてきました。さすがに眠くなったタップが、窓の外に向かって大あくびをすると、ふと、空の月がくらりと動いたような気がしました。

 パシッ
 庭の木が悲鳴のような声をあげたので、夜なべの縫い物しごとをしていたおかあさんは、ふと目をあげました。
 何だか急に不安になったおかあさんは屋根裏のタップの部屋にかけあがりました。

 見ると、タップの寝ていたはずのベッドはからっぽ。開いた窓からふく風に、カーテンがゆれているばかり。どこからかかすかにお酢の匂いがします。

「ああどうしよう! とうとうつれていかれたんだわ!」

 おかあさんは外に飛び出しました。
 道に出ると、待ち構えていたように、お向かいの靴屋のポランさんがいました。

「おくさん、おくさん、夜なべ仕事をしていたら、あやしい酢の匂いがしたんで出てきたんだ。壺ばあさんにさらわれたのは、おたくのタップかい?」
「あああ、どうしましょう、うちの子がいないんです!」
「やっぱりねえ、いつかやられるんじゃないかと思っていたんだが。さあこうしてはいられないよ。はやくザクロ山においかけていかなければ。壺ばあさんはおそろしいやつだが、子どものしたいたずらを、親がかわりに謝れば許してくれるんだよ。でも夜明けまでに、全部のいたずらをあやまらなければいけないがね」
「わかりましたわ。行ってきます!」
 おかあさんは、すぐにザクロ山に向かって走り始めました。

 曲がりくねったザクロ山への道を、おかあさんは走り続けました。暗い夜道を、月だけが照らしてくれます。やがて、行く手に、灰色の、へんな形の扉が見えてきました。

 見ると真鍮の看板がかかっていて、壺ばあさんのしるしの壺の模様がかかれています。おかあさんは迷わずかけよると、どんどんと扉をたたきました。

「壺ばあさん、壺ばあさん! うちのタップをかえしてください!」

 すると、生木をぎりぎりねじあげるような、とても耳障りな声がかえってきました。
「夜遅くまで起きているような子は、酢漬けにして喰っちまうのがいちばんさ」
 おかあさんは扉の前にひざまずいて、あやまりました。
「ごめんなさい、もうしませんから許してください!」
 すると壺ばあさんはまた言いました。
「釣竿で猫の鼻をひっかけるような子は、酢漬けにして喰っちまうのが、世の中のためさ」
「ごめんなさい、ごめんなさい……」

 こうして、おかあさんは、タップのしたいたずらを、タップのかわりにあやまりつづけました。でも、タップのやらかしたいたずらの、なんとまあ多いことでしょう。タップは、おかあさんの全然知らないことまで、たあくさん、やらかしていました。
「時計屋のおじょうさんのスカートをめくるような子は……」
「大工のおやじの弁当にカエルを入れるような子は……」
「母親のいっちょうらのスカーフでガキ大将の旗をつくるような子は……」

 とくに、壺ばあさんが、教会にしのびこんで、マリアさまのおかおにひげをかくような子は……と言い出したときには、おかあさんはそのまま気絶してしまうかと思いました。
 こうして、壺ばあさんの、タップのいたずらを言い立てる声は、よっぴて続きました。おかあさんは一晩中、喉がかれるまで、あやまりつづけました。

 やがて、東の空がしらじらとあけはじめるころ、壺ばあさんが重くいいました。

「こんなに親に苦労をかける子など、酢漬けにして喰っちまうのが上等だよ」

 おかあさんは、もうへとへとに疲れて、すぐにはこえが出ませんでした。ふと、まったく壺ばあさんのいうとおりだと、思いました。こんなに苦労をするくらいなら、いっそ子どもなんて、壺ばあさんに食べてもらったほうがいいかしら……。

 でも、おかあさんは、涙をふりしぼって、かすれた声で言いました。
「だ、だけど、わたしの、たいせつな、たったひとりの、子なんです。どうか、どうか許してください……」

 すると、あたまの上を、びょうおお、と生暖かい風が吹きました。壺ばあさんの声が、遠くなりながら聞こえました。
「やあれ、子が子なら親も親だね!」
 いきなり、扉がばたんと開いたかと思うと、タップが、泣き叫びながら、おかあさんの胸の中にとびこんできました。

「おかあさん、ごめんなさい、ごめんなさいよお!」
「まあまあ、タップったら、なんてひどい匂い!」
 おかあさんも、泣きながらタップを抱きしめました。タップは、全身お酢でびっしょり濡れていました。なんせ一晩中、きゅうりやたまねぎといっしょにお酢の中に漬け込まれていたのですから。

さて、気がつくと、タップとおかあさんは、いつの間にか、ザクロ山でなく、わが家の戸口の前に立っていました。

まあ、あれは夢だったのかしら? ふたりは顔を見合わせました。さあどうでしょう。わかりません。でもこれだけは確かです。それからひと月の間というもの、どんなに洗っても、タップの体から、お酢とたまねぎの匂いがけっして消えなかったのです。

タップも少しはこりたかしら? みなさんも、いたずらばかりして、おかあさんをこまらせていると、壺ばあさんにさらわれちゃいますよ!

(おわり)



(2005年前後、読み聞かせボランティア活動において、パネルシアターに使用した創作童話)



 

パキラを見つめるうさぎ竜

2013-10-29 04:12:38 | 画集・エデンの小鳥

パキラを見つめるうさぎ竜
2013年




天国がおりてくる

2013-10-28 04:04:41 | 月夜の考古学・本館

天国が おりてくる
気をつけて
あなたが くつのかかとにかくした
鈍色の 銀貨が
魚のように 腐ってしまうよ

天国が おりてくる
気をつけて
あなたが しまうまの耳にささやいた
虹色の 嘘が
みんな ばれてしまうよ

気をつけて 気をつけて
天国が おりてくるよ




(2008年。入院中の日記より)



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ティルチェレ物語 15

2013-10-27 05:02:33 | 薔薇のオルゴール
 あとがき

 これは、天然システムと人間の自然なかかわり方を、彼女なりに表現しようとした、物語である。
 物語に出てくる妖精ファンタンは、月の世の世界における精霊にあたる。自然界の霊だが、非常に人間に好意的な存在である。村人もファンタンを信じ、大切にしている。

 かのじょは物語を通じて、人間と自然界の、自然な愛の結び方を、考えたかったのだ。

 かのじょがこの物語を書けば、それは美しい言葉で、細やかに書いたろうが、わたしが書くとこうなる。少しはおもしろかったかね。

 なお、彼女は、物語の陰の主役である妖精ファンタンの名前には、考慮を要するとしていた。ケルトやゲルマンの神話などを調べて、もっとそれらしい名前をつけたかったようだが、それができないうちに、こういうことになったので、第一段階で考えていた仮の名を採用した。

 ファンタン、という名は、どことなくフランス語的に気取っているが、それなりにかわいいと思う。





ティルチェレ物語 14

2013-10-26 05:04:35 | 薔薇のオルゴール
13 ツユクサ色の手紙

 ファンタンが帰って来てから、果樹園のりんごが太り始めた。湖の魚も臭くなくなった。村人たちはしばらく、お守りを持たず、コーヒーやお茶にどんぐりが入っているのを見つけるたびに、歓声をあげた。
 森も次第にきれいになった。クリステラの病気も治り、元の祠の管理小屋に戻った。

 グスタフは、教会でヨーミス君とアメットさんとお茶を飲みながら話をしていた。本当によかったねえ、とみんなで喜んだ。そうして、自分のお茶に口をつけようとした時、中にどんぐりが入っているのを見つけて、グスタフは、びっくりした。

 嬉しい気持ちを抱いて、教会を出るヨーミス君とアメットさん。ふたりはしばらく並んで村の道を歩いた。アメットさんは、ヨーミス君が好きなようだ。並んで歩いていると、とても幸せそうだ。ヨーミス君もまんざらではない。

 そうやって、二人が並んで歩きながら、道が、森の隅の野原に差しかかったときだ。ふと、野原に、たくさんのツユクサが咲き乱れているのを見つけた。ヨーミス君はびっくりした。確か、来るときには咲いてはいなかった。それに、ツユクサが咲くには、まだ季節が早すぎる。

「ファンタンのお礼よ、きっと」とアメットさんが言った。ヨーミス君は嬉しくなって、青いツユクサの咲き乱れる野原に飛びこんでいった。空から、おとうさんとおかあさんが、自分を見つけて、見てくれているような気がした。

 ツユクサの中に立ちながら、ヨーミス君は空に向かい、力いっぱい叫んだ。

「おとうさん、おかあさん、ぼくは元気です。がんばっています!!」

(おわり)





ティルチェレ物語 13

2013-10-25 04:26:26 | 薔薇のオルゴール
12 どんぐりの雨

 ヨーミス君とノーラさんは、ティルチェレ村行きの列車に乗っていた。ヨーミス君はうなだれている。実は、あのビル登りの騒ぎのあと、ヨーミス君は警察につかまって、こってりとしぼられたのだ。次の日に、身元引受人として、ノーラさんが警察に来てくれた。それでヨーミス君は解放されて、村に戻る途中なのだが、町を騒がせてしまったことを、とても反省していた。

 結局は馬鹿なことをやっただけで、ファンタンのために何もできなかったと思うと、涙が出て来た。そんなヨーミス君を見て、ノーラさんが言った。
「そんなにしょげないで。あなたがみんなのために、がんばってくれたのは、わかっているから」
 そう言われると、少し気持ちが明るくなってきたヨーミス君である。村の人の暖かさを思うと、自分は幸せだなと思った。両親もいない、身よりもいない自分を、こんなにも大切に思ってくれるのだ。

 帰ったら、ファンタンを助けるために、また新しい方法を考えよう、とヨーミス君は思った。そして、列車がティルチェレ駅についた。列車から駅に降りた時、ヨーミス君はこの村に初めて来た時のことを思い出した。不安でいっぱいだった。ひとりで淋しかった。でも空を見て、思った。いつか、ツユクサ色の屋根の家を建てよう。おとうさんとおかあさんがいる空から見える、青い屋根の家を。そう思ってあの時、ヨーミス君は明るく笑い、郵便局に向かったのだ。

 そうして、ヨーミス君が、ノーラさんと一緒に、駅舎を出た時だ。ふと、涼しくて気持ちのいい風が吹いてきたかと思うと、雨のように、どんぐりが降ってきた。ヨーミス君はびっくりした。ノーラさんもびっくりした。駅の前の広場に、ぱらぱらと、たくさんの金色のどんぐりが降ってきたのだ。ヨーミス君は叫んだ。

「ファンタンが、帰ってきた!!」

 (つづく)



ティルチェレ物語 12

2013-10-24 03:25:58 | 薔薇のオルゴール
11 トッケ君の憂鬱

 ビル・トッケ君は、ため息をついていた。手には、「残念ながら不採用」というある会社からの手紙が握られていた。トッケ君はまた就職に失敗したのだ。

 前の会社をやめてから、もう何年もたつ。親類の雑貨店を手伝って、少しはバイト料をもらっているけれど、どこかの会社に就職しなきゃ、お嫁さんももらえない。一緒に住んでいる両親はいつも、早く就職しろとせっつくし、妹には、無職のさぼり野郎と、毎日のようにからかわれる。

 就職情報誌を7冊も買いこんで読みながら、今日も汗をかきつつ、うなっているトッケ君なのだ。そんなトッケ君が、仕事探しにもちょっと疲れて、何気なくテレビをつけたときだ。テレビからさわがしいアナウンサーの声が聞こえてきた。画面には、ビルに登っているヘンな男の映像が映っている。

「なんだ、バカな野郎がいるもんだな」とトッケ君は言いながらも、テレビを見つめた。アナウンサーは、ビル登りの男がばらまいたビラの説明をしていた。

「変なビラですねえ。妖精を助けるために、ベックの本に四角を書けと書いてあるのですよ」
「ベックというと、あの最新作が大変売れていますね」
「外国でも有名な作家です」

 テレビからの声に、トッケ君はふと心をひかれた。
「ふうん、四角ねえ」
 トッケ君は、妹がベックの大ファンなのを思い出した。たしか新作も、本屋に予約して買っていたはずだ。トッケ君は、何となく、いつも自分をからかう妹に復讐してみたくなって、妹の留守の部屋に忍び込んだ。そして、件のベックの新刊本を取り出し、最後のページにペンで四角を書いてみたのである。

 そのときだった。トッケくんはいきなり本からあつい風が吹いてくるのを感じた。あっという間もなく、何か大きなものが自分の顔にぶつかって、トッケ君はもんどりうって床に倒れ、気を失った。

 しばらくしてトッケ君は目を覚ましたが、そのとき、自分の周りにたくさんどんぐりが落ちているのに気付いた。トッケ君には何が何やらわからなかった。

 あるビルメンテナンスの会社に就職が決まり、トッケ君が大喜びしたのは、それから十日後のことだったそうだ。

(つづく)



ティルチェレ物語 11

2013-10-23 04:08:36 | 薔薇のオルゴール
10 ヨーミス君の得意技

 アメットさんは、ファンタンを助ける方法を書いたビラを作り、学校の印刷機で大量に印刷した。コムと子どもたちが、そのビラを村中に配った。村人たちは首をかしげながらも、自分の持っている本に四角い窓を書いた。だがファンタンは出てこない。

 ヨーミス君は決意した。これができるのは、ぼくしかいない。ファンタンを助けるために、やってみよう。ヨーミス君は大きなリュックに詰められるだけビラを詰めた。そして駅から列車に乗って、都会に向かった。

 都会の町に降り立ったヨーミス君は、ビルを探した。人通りの多い道に面した、適当なビルを。そうとも、ヨーミス君の得意技は、ビル登り。5階建てくらいなら、楽に登れる。でも、できるならもっと高い、目立つビルがいい。ヨーミス君は町を探して、ある10階建てのビルを見つけた。自分が登れる高さより、はるかに高い。けれど、これくらい登らなければ、ファンタンを助けられないような気がしていた。ヨーミス君は挑戦した。

 5階までは、楽に上れた。けれども6階と半分くらいになると、さすがに疲れはじめた。腕がしびれてきた。だがヨーミス君はあきらめない。ビルを上り続ける。
 下の方では、ビルを上るヨーミス君を見つけて、人が集まり始めた。7階を過ぎると、一度手が滑って落ちそうになった。だが何とか体勢を取り戻して、ヨーミス君は登り続ける。

 下の騒ぎが大きくなった。近くのテレビ局から中継車が飛んできた。ヨーミス君のビル登りのニュースは、村にまで届けられた。テレビを見たノーラさんがびっくりしていた。

 そして、ようやく10階まで登ったヨーミス君は、リュックにしかけたヒモをひっぱった。するとリュックが開いて、中に詰めたビラが散らばった。

「ファンタンを助けてください!」と書いたビラは、町中に広がった。

 (つづく)



ティルチェレ物語 10

2013-10-22 04:36:08 | 薔薇のオルゴール
9 本の暗号

 グスタフは、ヨーミス君とアメット先生のところに、自分が買ったベックの本を持って行って、自分が見つけた奇妙な発見のことを教えた。なんと、本の中の文字が、虫のように動くと言うのだ。言われてよく見ると、並んでいる文字のなかで、一ページか二ページの間に一文字ずつという割合で、虫のように震える文字がある。

 アメット先生は、その震える文字を丁寧に見つけていって、それを並べてみた。するとその文字が、一つのメッセージになっているのを発見した。
 そのメッセージはこう言っていたのだ。

「ふぁんたん ほんに とじこめられた たすけて でられない」

 ヨーミス君は驚いた。なんと、ファンタンはベックの本の物語の中に閉じ込められてしまったのだ。

「どうしたら出られるの?」とヨーミス君は本に尋ねてみた。そうしたら今度は、文字が青く光り始めた。アメットさんがその文字を並べてみた。

「さいごのページに しかくいまどを かいて でられる」

 そこでヨーミス君は、その本の最後のページに、ペンで四角い窓を書いてみた。けれどもファンタンは出てこない。コムが言った。
「きっと、百万部の本の中の、たった一冊なんだよ。どれかに閉じ込められているんだよ」

 みんなは頭をかかえた。どうすればいいだろう。国中に売られたたくさんの本の中から、たった一冊の本を見つけるだなんて。
 みんなは頭を寄せ合って、必死に考えた。

 その頃、村の役場では村長さんが、ベックに電話をしていた。本が出てから、ファンタンが村からいなくなったと。そうしたらベックは言ったそうだ。
「何を言ってるんですか。妖精なんて、物語の中だけの存在でしょう」

 なんてことだ、と村長さんは言った。クリステラが悪魔だと言ったわけが、わかったように思った。いい人だと思ったのに、あんなに面白い話を書いたのに、本当はファンタンを信じていないなんて。あのいたずらでかわいくてやさしい、ファンタンを、嘘だというなんて。

 村長さんはあまりのことに、涙を落とした。ファンタンは、妖精を信じる心のない人たちによって、実在しないものとして、架空の世界に吸い込まれてしまったのだ。

 (つづく)