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世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

ビーストは燃えている

2008-09-05 13:51:58 | フェアリィウィスパー

ビーストは、常に、人の心の中に、「いやだ」とささやいています。そうすれば、人間が苦しむからです。

たとえば、仕事をしているとき、ビーストが心の中で「いやだ」と言えば、人はそれを自分のささやきだと思いこみ、ほんとうに仕事がいやになってきます。そして、仕事をやめるか、早くきりあげようと、あせります。そういうことが、ずっと続くので、人間はいつも、自分は何もできない、怠け癖のある馬鹿な人間だと思いこみ、ずっと、生きるのが、苦しかったのです。

ビーストは、こうして、見えない心の世界から、人間を堕落させ、悪いことをさせ、いやなものにしてやろうと、あらゆることをしてきたのです。心の世界からやれば、いとも簡単に、人間を支配できると、考えていたのです。確かに、簡単にビーストの手に落ちる人間はたくさんいました。けれども中には、敢然と刃向う人間もいました。そういう強い人間には、心の弱い人間に集団でいじめさせ、つぶしてきたのです。そうして、ビーストは、この世界を、自分たちが好きにできる、嘘ばかりの世界にしたかったのだそうです。

しかし、人間が心の世界に目覚め、魂の進化を果たすと、もはやこのビーストの手が、通用しなくなりました。心の中でささやく不穏で不快な声が、自分の声ではないと、とうとう気づいたからです。

現代の自己は分裂していると、心理学などで言われていたことが、実に、ビーストの仕業であることに、人間がとうとう気づいたのです。

そして、ビーストがどんなに人間の心を支配しようとしても、容易に言うことをきかなくなったので、ビーストはとても苦しんでいます。そして、逃げ始めているのです。この世界が、もう、自分たちの思い通りの世界にはならないと、わかってきたからです。

人間は、苦しみに耐えて学び、乗り越えていく、すばらしいものになっていく。進んでいく。そういうものになられては、もう誰も、ビーストの言うことをきかなくなるからです。

痛いと感じ初めてきた、見えないビーストたちが、大勢、この世界から、逃げ始めているそうです。それはそれは、大慌てで、逃げているそうです。にげなければ、自分のしでかしたことの責任の一切をとらされるからです。つらい、つらい、つらいといって、一斉に、逃げているそうです。

そこで困るのは、人間に化けているビーストです。彼らは、見えないビーストたちが助けなければ、本当に大変なことになってしまいます。馬鹿なことになりきってしまうのです。けれども、もはやだれも、助けてはくれません。人間世界にいるビーストは今、丸裸になっているのです。今まで、悪運が強いなどとうそぶいていたことが、まるで、嘘だったかのように、何もかもが悪くなっていきます。その悪くなりようも、たまらなくひどくなっていくのです。痛すぎるというものではないことになっています。ビーストが、すべてを嘘にするべくやってしまったことが、あまりにひどかったからです。

ビーストは今、燃えています。見えない業火に、焼かれているのです。そのさまは、凄惨です。一見、何の変りもなく、生きて、歩いているようにみえながら、もはやだれも、そこにはいないというとてもおかしな所に生きている。いやなことは何もないよ、という顔で、普通に歩いているようで、もう一切が、ひどいことになっていることが、自分でわかっている。それでも、何もできない。すべてが馬鹿なことになるのがわかっていながら、もう何もない。それでも、生きている。ずっと、生きている。生きていないはずなのに、生きている。それはあまりにも、すさまじく、馬鹿なことなのです。

ビーストは今、絶対にいないはずのものに、なっているのです。いれば、世界中のすべてのものが痛いと感じるものになってしまっているのです。それなのに、いる。それはすなわち、いながらに、別世界のものになりはてために、すべてが馬鹿になってしまうというものになったのです。

存在しながらに消えていく。それはどういう意味か。愛が、逃げていくのです。すべてをやさしくつつみ、あらゆるものを助けてくれる美しい愛が、すべての創造の親である愛が、逃げていくのです。信じられないことなのです。痛いというものではないことなのです。愛がなければ、一切は存在すらできないのに。愛をいじめすぎたために、ビーストたちは、存在の根幹を切り裂くような矛盾の叫びに、落ちていくのです。いやだ、といわれるのです。世界中のすべてのものに。

ビーストが燃えています。燃えつきることのない存在を燃やしつくすために、自ら燃えています。

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夏のおさらい・5

2008-09-05 09:13:03 | 箱庭写真集


今日のは、お盆を過ぎたころ、実家に帰省したときに写した写真です。カードを入れ忘れてしまって、少ししか撮れなかったのですが、カメラのメモリの中に傑作が多く残っていました。 夏の、怒りの真っ盛り。空も大地も、頭にきている。すごく怒っている。

トップは、空。すがすがしく美しい空にも、何かがおそろしくはげしく動いているような感じがします。沈黙して微笑んでいるようにすら見える、その後ろで、何かが暴れている。それが、見えないところで、千万の手を振り回しながら、嵐のようにあらゆる物事を処理している。すべては、ずっと後にわかる。わたしたちにはわからない、風景の後ろで、痛い光のこどもを無数に生み出している。

これは、稲。花が咲き始めているころですね。美しいけれど、心底怒ってるって顔してるでしょう。わかりますか。

すごく怒ってる。稲は、とても美しい植物です。気高く、清らかに、高い魂を持っている。彼らは、気高い仕事をする人たちに、食べ物を与えるのを、喜びとしています。はたらきもので、なんでも喜んでしてくれるような、やさしい人間たちに、おいしいものを食べさせてあげられることを、うれしいと感じてくれる植物。

忍耐強く、美しい彼らも、怒り心頭に達するようなことがあったのです。嘘にまみれたものたちが、平気で美しい顔をして、正義と真実の旗を高々とあげているのが、たまらなく醜いのに、もう我慢できなくなっている。そして。何かをやり始めている。



こちらは、カラスウリの花です。実家の近くの農家の、マキの生垣にからみついていました。これもまた。とても怒っています。牙をむき出して、かみついてきそうだ。とんでもないことになっているのに、まだ愚かなことをやめないものたちに、どうしてやろうかという顔でいる。そして、もはやたまらないことになっている。



光る虫。稲の先っぽにつかまってゆれているのを撮ってみたら、こんな風に写りました。何か起こっている。そんな予感を痛いほど感じる。けれどそれが何かと尋ねてみると、決して教えてはくれない。

君は、知らないでいい。そう言っている。知らないほうがいい。すべては、わたしたちが、やっていることだから。

同じく、稲の周りのあぜ道の、草むらの中で見つけた芋虫です。何の幼虫がはわからないのですけど、この姿勢のままじっとしていました。この虫も何かをやっている。世界の後ろの、見えない魂の世界で、何かに向かって苦い風を吐き続けているようだ。

世界が怒っている。無数の怒りを吐いている。もはや、どうにもならぬところまで来てしまったのに、まだおまえたちは、馬鹿をやるのか。

変わったことなど、ほとんどなかったような、平常通りの夏を、営々と噛んでいる、その向こうで。何かが起こっている。さて、それが何かがわかったときには、すべてはもう、終わっている。

怒っている。怒っている。

世界が、怒っている。

 


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