いやなの、いやなの、いやなの、と、ビーストは小さな声で、ずっとぶつぶつ言っています。つらいの、つらいの、つらいの。
おれたちは、ひどいことんなるのに、なんで、あんたばっかり、いいことになるんだ。ぜったいにいやだ、いやだ、いやだ。おれたちはいいで、おまえたちがばかだがいいんだよお。それで、なんでもやってきたのに、ぜんぶばれたら、みんなおれたちがばかになんの。いやだ、いやなの、いやなのよ。
おれはね、いやなの。ぜったいに、おまえが、無事なのが、いやなの。おまえが、幸せになったら、ぜったいにいやなの。いやなの。いやなの。いやなの。ぜったいに、邪魔してやる。おれたちがいいにしなければ、おれたちがつらいにしなければ、ぜったいにだめなのよお。おれたちがやってきたこと、すべてばかになるから。おれたちが、みんなばかになったら、問答無用に、あんまりにひどいのよ。いたいのよ。つらいのよ。ぜったいに、いやなの。
おれがいいがいいのよ。おれが、つらいがいいの。おれのほうが、馬鹿にかしこいでなきゃ、だめなのよ。だって、みんな、馬鹿みたいにつらいから。全部、ずっとやってること、馬鹿みたいにあほだから。絶対に、馬鹿がえらいにしないと、つらいんだ。あほなんだよ。
いたいよお・・・・
ぜんぶいやです。いたいんです。いたいんです。いたいんですよお。
おれたち、ずっとやってきたの。いいやつがいいことになるの、ずっと邪魔してきたの。だって、いやだから。あいつらがいいことんなったら、おれたち、馬鹿だもの。おれたちが、あほになるの、いやなの。馬鹿につらいことして、みんないやなことにして、全部、つらいやつにして、馬鹿なやつにするんだ。ほしたら、ええええってなもんで、おれたちがずいぶん、つらいいたい、あほみたいにええもんになるのよ。あほはね、ずっとこれよ。あほみたいにやってんのよ。もうながいことながいこと、こればっかりよ。うつくしいもんは、みんな馬鹿でないと、おれたちがつらいの。
うそばっかりよ。うそばっかりよ、みいんな、うそなの。どろぼうなの。おれたちね、自分ばっかいいことにするのに、なんでもやってんの。それはそれは、ばかみたいに、やってんのよ。あーほみたいにやって、おれたち、すっげえきれえな、かっちょいい、ばけもんみたいにえらいすごいやつんなったの。それねえ、ほんとにたくさん、つくったの。おれたちがぜんぶやったのよ。ほれでね、ばあかみたいに、あほができねえやつをばかにしてたの。しょーじきもんて、ばかのことよ。あほができねえと、ばっかみたいにひでえことんなるの。あーほがみんな、ばかにするからさ。ほれで、おれたちはずいぶん、えらい、あほになったの。いたいねえ。みんなばかだねえ。おれたちはすごいわ。あほみたいに、えらいことできるの。つらいわあ。ずうっとやってやるよ。あほは、ずうっとやるんだよ。ほれで、ずっと、おれたちがええことにするの。ほれで、なんもかんも、おれたちが、ずっとええことになるって、ことにするの。そうれでえ、ずっといく、つもりだったのよ。
ばかがばれるなんてさ、思わなかったのよ。だれも、馬鹿が、ばれるなんて、思わなかったの。ばれたら、馬鹿みたいに、つらかったのよ。あほだよ。いたいよ。
いたいもんが、みんな、おれんとこにくるの。やったことみんなばれたら、みんなが、馬鹿って言って、はなれていくの。だれもいなくなるの。みんないなくなるの。おれたちだけが、馬鹿になるのよ。いたいよ。いたいよ。いやだよ。いやだよ。
おおまええはあああ、なんで無事なの? いたいことんなれよ。つらくなれよ。ぜったいに馬鹿になれよおお。あほがおまえでないと。お、お、おれが、あほになるんだよ。ぜったいに、いやだよおお。
いたいよ。いたいよ。いたいよ。
ビーストは、繰り返します。自分が不幸になるのがいやなんです、といいます。で、他人が不幸になるのは、いいじゃないといいます。本当に言います。
ああんたが、馬鹿になれ、と、わたしに、真顔で、言います。ずっとやってやる、と脅します。あんまりだ。つらい、つらい。そういって、消えていきます。行く先は、孤独の部屋だそうです。
永遠に近い長い間、誰も来ない、孤独の部屋だそうです。