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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

貝母は実をつけ始め、クマノミズキの樹液は止まり、問題の帰化植物が出始め。山蕗と鰊の煮物(妻女山里山通信)

2022-05-04 | アウトドア・ネイチャーフォト
 ここ3年ほど、ゴールデンウィークは観光地へ行ったり遠出はしない様にしています。わざわざ激混みのところへ行くこともないし、新型コロナのリスクもあるので。そんなわけで、近隣の古刹や里山巡りをしています。

 今年は本当にたくさんの方が貝母を観に来てくれました。と言っても皆同じ時間にくるわけでもなく、人数も少なめなので、混雑することもありませんでした。貝母の花は、25日の高温ですべてしぼみました。その後の3度の雨で花びらも散りました。現在は、小さな実が付き始めています。夏日になっても湿度が低いので、日陰は快適です。
 この陣場平は、第四次川中島合戦の時に上杉謙信が七棟の陣小屋を建てて本陣としたと伝わる場所で、『甲陽軍鑑』の編者といわれる小幡景憲がその絵を描いていて東北大学の狩野文庫に収蔵されています。このブログでは許可を得て掲載した記事があります。我が家の祖先は林太郎左衛門といい真田昌幸に使えた50騎の足軽を束ねる武将だったとか。息子は林源次郎寛高といい真田信繁(幸村)の7人の影武者のひとりで大阪夏の陣で討ち死にしたと伝えられています。その後生き残った7人で某所に林村を作ったとか。そのうちのひとり、林采女が真田の松代に移り住み帰農したと伝わっています。この妻女山麓の集落は、そんな激動の戦乱を生き延びた家ばかりなのだろうと思います。川中島には、「七度の飢饉より一度の戦(いくさ)」という言葉が残っています。度重なる飢饉よりもたった一度の戦の方が嫌だという重い言葉です。戦争は絶対悪です。正しい戦争など絶対にありません。

 貝母の花は俯いて咲くので、実も始めは下を向いています。これは直径5ミリぐらいで羽は6枚。

 これは直径10ミリ弱。これぐらいになると上を向きます。成長し、5月下旬には直径20ミリぐらいになります。種は羽の中心部に縦にぎっしりと並んでいます。初めは白ですが、飛び散る頃には黒くなります。さく果といって、ホウセンカのように種は飛び散り、多くの場合その頃吹く東風(こち)に乗って西へ飛びます。

 昨年に続き、今年もたくさん実がなっています。作年の様にたくさん発芽してくれるといいのですが。

 先日の妻女山里山デザイン・プロジェクトでは、遠くに種が飛んでできた株を掘り起こして、中央に20株ほど移植しました。球根を大きくするために、上部は切り落とします。種では開花まで数年かかりますが、球根の場合は翌年に花が咲きます。周囲にはゴヨウアケビの実生がたくさん見られますが、ほとんどは夏を越すことはできません。

 陣場平の中央にあるクマノミズキ。大量に出ていた樹液は、ピタッと出なくなりました。グニュグニュだった樹液は乾いてカピカピになっています。やがて他の樹皮の色と同じ灰色になります。

 開花が遅かった林下の貝母は、まだ花びらが残っています。貝母は下の方から枯れていきます。実のついていないものは早く倒れますが、実が付いているものはずっと立ったままです。

 山蕗も大きくなってきました。帰化植物の除去などの作業の後で、大きめのものを採りました。ソフト鰊と煮物にします。間に白く見える花はヤブジラミ。

 そのヤブジラミ(藪虱)セリ科ヤブジラミ属の越年草。セリ科なので食べられます。果実は古くから蛇床子という漢方薬として皮膚の塗り薬として使われていました。 蛇床子という名は、蛇が食べるから。食べないと思います。実はヌスビトハギ・キンミズヒキなどと同じひっつき虫(バカ)です。キンミズヒキと同様に小さいので服に大量につくと厄介です。
ひっつき虫図鑑

 アカネ(茜)アカネ科アカネ属のつる性多年生植物。根が茜色で草木染めの原料になり、古代から使われました。東京の赤坂は、古くは茜が群生していたことから「茜坂」と呼ばれていたそうです。
「あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る」 額田王  萬葉集1巻20
「あかねさす 日並べなくに 我が恋は 吉野の川の 霧に立ちつつ」 車持千年 萬葉集6巻916


 これが問題の有害帰化植物のオオブタクサ(大豚草)。北アメリカ原産の帰化植物で、大きくなると高さ4m、茎も4、5センチになります。アレロパシー作用があり、他の植物の成長を阻害します。日本の侵略的外来種ワースト100。根が残ると再生するので、すべて引き抜きます。毎年7月に、メンバーを集めて引き抜き作業をします。

 前回メンバーがノイバラを伐採してくれた長坂峠。これでオオムラサキの食草のエノキが守られるでしょう。

 その左にあるクヌギの幼木。これも非常に重要です。ヤママユガ、オオミズアオ、ウラナミアカシジミ、アカシジミ、ミズイロオナガシジミなどの重要な食樹です。林道整備などで切らないで欲しいのです。色々な幼木は、昆虫の食樹であることも多いので、安易な伐採はしてはいけません。行政も業者もこういうことを学ぶべきです。里山保全には知識と知恵と技術が必要です。一番必要なのは里山愛ですが。
蝶と食餌植物(食草・食樹)

 帰りにソフトニシンを買って山蕗と煮物に。山蕗はアクが出なくなるまで茹でて、茹で汁を捨てて水洗いします。採ってすぐ調理しているのでアクも少なめです。鍋に山蕗とニシンを入れ、干し椎茸、出汁昆布、顆粒出汁、本味醂、醤油で薄味で煮ます。今の山蕗は柔らかいので、10分たらずで仕上がります。冷まして味を含ませます。

 地元出身で横浜在住のUさんから、ヤママユガとウスタビガの繭で作った根付が送られてきました。以前もいただいて、仲間や知人に配ったことがあります。可愛いので非常に人気があります。フクロウの根付は、安曇野の土産物屋で買える様です。フクロウは、昔は誤解から不幸鳥などと言われていましたが、現在では「不苦労」、「福老」という縁起物とされています。

 『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。

本の概要は、こちらの記事を御覧ください

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