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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

ネオニコの空中散布のない長野市茶臼山は昆虫の天国。ルリボシカミキリも(妻女山里山通信)

2015-07-22 | アウトドア・ネイチャーフォト
 梅雨明けの妻女山へ。招魂社の境内であちこち探しましたが、オオムラサキは1頭も確認できませんでした。樹液が出始めたので、そちらへ行っているのでしょう。胸の黄色いトンボがたくさん舞っているのですが、留まってくれないので同定ができません。おそらく大きさと色からコオニヤンマだろうと思うのですが・・。ただこれもネオニコ散布の千曲市との境から林道を600m下った長野市側の話で、境に登っていくほど生物はいなくなります。それは悲劇的に顕著です。

 今回は、そろそろルリボシカミキリが出る頃と思い、やってきたのです。たぶんこの辺にいるだろうという場所に行ってみると、いました。これぞ国の甲虫といわれる美しい昆虫ですが、この綺麗な青色は生きている時にしか見られません。死ぬと赤褐色になってしまいます。胸に小さな赤い虫が付いていますが、タカラダニでしょう。
 赤松に登り始めたところで、不用意に近づきすぎてしまいました。すると自らボトッと地面に落ちました。これが一番手っ取り早い逃げ方なのでしょう。飛ぶのはあまり得意ではありません。以前は千曲市側にもいたのですが、空中散布以降全く見なくなりました。

 先日、長野森林組合に人達が長野市側で赤松の伐採をしていた長坂峠。こちらは千曲市側。正面には、オオムラサキの幼虫の食草であるエノキが何本かあり、樹液が出るコナラの大木もあるのですが、今年はオオムラサキが全くいません。左手には数本の大きなコナラの樹液バーがあります。昨年まではカブトムシ、ミヤマカミキリ、アオカナブン、オオスズメバチなどが集まっていたのですが、今年は何もいません。死の森です。ここから空中散布をした天城山から鞍骨山の千曲市側は、全てこの様な状況で、昆虫がほとんど姿を消しました。仲間の蝶の研究家も、気候変動や経年変化による範囲を遥かに逸脱している異常事態と言っています。かれは2年前にウラゴマダラシジミを300頭羽化させて放したのですが、後日確認に行ってみると、1頭も確認できなかったと。こんなことは通常ならあり得ないことです。

 妻女山展望台から茶臼山を見て、比較のために行ってみることにしました。昨年も比較して、その違いに愕然としたものです(花と昆虫であふれる茶臼山。昨年の記事)。

 信里小学校の向かいの道を入って旗塚下の駐車場へ。いきなり数頭の蝶が出迎えてくれました。草むらからは、たくさんの虫の鳴き声がします。妻女山では全く聞かれません。ベニシジミやハナアブも見られます。ミツバチもいました。大池の向こうに冠着山(姨捨山)。左手遠くには蓼科山も。
 棚田へ下りる日陰には、ドクダミの群生地があり満開でした。花をぎっしり小瓶に詰めて米酢を注ぎます。これを塗ると水虫が治ります。湿疹やかぶれ、虫さされにも。汗の臭いも取れます。葉を天日干しして作るドクダミ茶も高い効能があります。ドクダミは十薬という優れた薬草です。

 ノリウツギでヨツスジハナカミキリ(四條花天牛)が交尾中。翅の模様はハチの擬態。中は、ミナミヒメヒラタアブ。上がオスで9ミリほど。下がメスで8ミリほどと小さく。撮影はなかなか困難を極めます。今回は飛翔しながら交尾中の珍しいカットが撮れました。オスはメスの翅ごと抱えているので、メスの体重を支えながら飛んでいるわけです。あっぱれ。
 右は、ツバメシジミのメス。妻女山にもネオニコになる前は、いくらでも見られたシジミチョウですが、今は全く見られません。特に千曲市側は全滅状態。千曲市の空中散布は、生物殺戮の犯罪行為と言っていいでしょう。(まだ、たくさんの昆虫がいた2013年7月の妻女山山系の記事。昨年から激減し、今年は何もいない。2012年はこんなにたくさんのゼフィルスがいたが全滅状態)

 虫倉山が見えるお気に入りの棚田へ。昨年までは稲が作られていたのですが、耕作放棄地になっていました。ユキノシタ科チダケサシ属のトリアシショウマの白っぽい花穂が風に揺れています。総苞が粘るノアザミもあちこちで咲いていました。やはりたくさんの昆虫が見られます。オニヤンマもたくさん飛んで、時には縄張り争いの空中戦も見られました。シオカラトンボも。一面ヤマフキの野原を通ると、ミヤマフキバッタ(アオフキバッタ)が足元から無数飛び出しました。妻女山ではほとんど見られなくなりました。翅が退化して飛べないので地域による変異が大きいのです。妻女山と茶臼山でも、微妙に色合いなどが異なります。

 虫倉山。神城断層地震で、山頂が4割も崩壊してしまいました。崩れた跡が生々しく見えます、左手前のさるすべりコースは、登山禁止のままです。本当にいいコースなので、迂回路を作るとかなんとか復活して欲しいものです。
 鮮やかに咲くヤブカンゾウ。ニッコウキスゲの仲間ですが、若芽や蕾は食べられる山菜です。干したものは、金針菜といって中華の高級食材。おひたしや天ぷら、炒めものなどで。 ビタミンB1、B2、C、カロチン、鉄分、 たんぱく質、βカロテンが豊富。鉄分はほうれん草の20倍とかで、特に女性には嬉しい栄養たっぷりの野草です。私は菜園で栽培しています。じつは在京時代は、アウトドアもですが。主に女性向けの雑誌やムック、単行本の編集アートディレクターをしていたので、女性に関する健康、メンタル、化粧からファッション、料理から子育てまで結構詳しいのです。もっと若い頃はアイドル雑誌のデザインや撮影のディレクションもやっていましたけれど・・。それでハロプロとかBABYMETALも好きなのですが。ひたすら頑張る女性が大好きなフェミニストです(笑)。
 総苞が粘るノアザミ。夏から秋にかけて咲くノハラアザミは粘らないので、触ると区別がつきます。よくザトウムシの脚だけがこれに付いていることがあります。くっついた小さな虫を食べに来て、ミイラ取りがミイラになるパターンです。しかし、ザトウムシは脚が一本欠損しても普通に暮らして行けます。ザトウムシは座頭虫と書きますが、目はあります。脚が異常に長く月面探査機の様ですが、クモよりもダニに近い森の掃除屋さんです。こちらに、いくつか写真を掲載しているのでご覧ください。自然界に不必要な生物は、ひとつとしてありません。全てがデリケートな相互連関というバランスの上に成り立った共生関係を作っているのです。

 葉先に留まったミナミヒメヒラタアブのオス。本当に小さいので、まず見つけるのが大変です。中は、ミヤマフキバッタですが、右の後ろ脚の半分から先と左は全部ありません。何かに襲われたのでしょう。翅が退化して小さく飛べないので、襲われやすいと想像できます。メスは、真夏に土にお腹を半分ぐらい差し込んで産卵します。
 茶臼山の登山道。蝉の声が妻女山とは比較にならないぐらい多いのです。他には、ミドリヒョウモン、ベニシジミ、コミスジ、アサマイチモンジ、オオヒカゲなども。バッタの仲間もたくさんいました。これが正常な里山です。
 興味のある人、関心を持った人は、この夏機会があったら妻女山と茶臼山に登ってみてください。両山とも登山口まで車で登れるので登山歴がなくてもハイキングのレベルでも大丈夫です。妻女山への生き方はこちら。茶臼山へは、茶臼山動物園への道から信里小学校向かいの道を入って、旗塚下の駐車場から20分です。『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林に、詳しい地図が載っています。本にも書いていますが、両方とも古代科野国や川中島合戦にまつわる遺構の残る素晴らしい里山ですが、その厳しい現実を見比べてみてください。

 茶臼山の北アルプス展望台から。残念ながら北アルプスは、稜線が雲の中でした。やはり想像通りでしたが、ネオニコ空中散布をした妻女山山系としていない茶臼山では、昆虫の状況に驚くべき大きな違いが見られました。そして、その差は年々広がっていくようです。
 危険極まりないネオニコチノイド系農薬については、ブログのひとつ前の記事をご覧ください。妻女山山系で、オオムラサキなどの保護活動などをしている「妻女山里山デザイン・プロジェクト」の仲間には、蝶の研究家もいるのですが、このままでは再生不可能になるかもしれないと警告を発しています。
 長野県シニア大学の講師をしたのですが、4クラス計470人の講座でも、ネオニコチノイド系、グリホサート系農薬の話は、里山の放射能汚染の話とともに高い関心を呼びました。有機リン系も危険ですが、神経毒である前者は比較にならないほど猛毒です。実際、散布の後に健康被害も出ているようです。たかが赤松のために自然を破壊し、住民の健康を損なう必要性などどこにもありません。千曲市や坂城町は即刻中止すべきです。続ければ水俣病などの様に訴訟沙汰にもなるでしょう。フランスでは、その残留性や毒性で裁判でモンサントが敗訴しています。欧米では製造販売や使用に規制がかかっている国が多々あります。

千曲市森の杏が最盛期、朝採り杏で焼酎漬。松枯れ病が深刻。ネオニコは農薬でなく農毒!(妻女山里山通信)
妻女山山系のゼフィルスが壊滅状態なのは千曲市による農薬の空中散布だと断言するKさん(妻女山里山通信)
松枯れ病の原因は、本当にマツノマダラカミキリのセンチュウだけなのか!?(妻女山里山通信)
松枯れの原因は松くい虫じゃなかった。大気汚染で土壌が強酸性化したことによる(妻女山里山通信)

◉必見!新農薬ネオニコチノイドが脅かすミツバチ・生態系・人間(要保存のPDFファイル)

天敵を利用して、マツノマダラカミキリを駆除しようという研究長野県の例野鳥利用した松くい虫被害の防除。ネオニコ農毒の空中散布だけは、絶対に止めさせなければならない。これはあなたの近くの里山でも行われているかもしれない。あなたが使っているかもしれない殺虫剤やペットのノミ取りにも使われている。決して無縁のものではない。チェックを!

林野庁の、森林の放射能汚染に関するレポート。これは読んでおいた方がいい。杉はセシウムを溜めやすい
 基本的に高汚染された森林の除染は不可能だと分かる。

『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。長野市や松本市の平安堂書店さんでお求め頂けます。東京は銀座の長野県のアンテナショップ「銀座NAGANO しあわせ信州シェアスペース」にも置かれるそうです。最近は、首都圏から信州の里山に登りに来る人も多いですから。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。この夏は、信州の里山を歩いてみませんか。

 本の概要は、こちらの記事を御覧ください

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