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建築を旅する

姉歯

2005-12-05 08:25:32 | Weblog
姉歯問題で、日本の安全神話みたいな物がまた一つ崩されてしまったように思う。
牛海綿状脳症(BSE)などの食の安全などや、少し古いが雪印の不正などもそう。
それにJRの脱線事故。
医師や教師の不正などもある意味近いのかもしれない。
衣食住やそれに近い根幹にかかわる部分が信頼できないのは、社会システムが成り立たない事に繋がる。
そんな不安感から一級建築士などに対する免許更新などの話も出ているらしい。

これは、自分個人にとっても大きな関心事である。
医師や弁護士など、人の人生や生命を左右する職種は免許の更新や、免許取得に対する審査の厳格化は昔から誰しも思うことだと思うが、未だ更新などは存在しない。個人的には更新すべきだと思う。
建築士も人の命を預かる部分の設計をしているのだから、更新も必要かと思う。
しかし、建築士という免許が実際に社会的に効力を持っているかと言うと、実はほとんどが形骸化したものに過ぎない(一級建築士免許があるからといって、即、社会的に業種的に責任を取れる指導的立場になれるとは限らない、というよりなれない。医師や弁護士資格とは国からの報酬の保護などが無い部分も含め、全く異なる)為、建築士自体に厳しい規制をかけたとしても、姉歯の様な事件が減る事は考えにくい。姉歯はたまたま一級建築士資格を持っていただけである。
一級建築士が実際の意味で力のある資格にならない限り、建築士を縛る意味が無いと思う。

実際構造設計をする人や、建築設計をする人も一級建築士ばかりではない。
ならば建築に携わることや、建築という物に対する日本人の意識を変えないとならない。
人の生命や人生を預かる意識や、文化として芸術としてプロ意識を持つ、または持てる業種になっていく必要があると思う。


最近レーモンドの「私と日本建築」という名著を読んだ。
日本の美意識や、大工の棟梁などの技術、知識、プロ意識についての賛美が繰り返されている。
日本にはそもそも設計士は存在せず、いかにその依頼者や地域に最適に作るかという事を知る技術者がいるのみであった。
それが大工の棟梁であり、そこにはいい物を作れるから職人として認められたという当たり前の徒弟制度もある。
金沢の金箔職人が、嘘偽りではいい物が作れない様に、建築も同様の資質がないと本来作れないものであったから当然である。

ただ今は、建築という非常に莫大な金額が動く事業としての側面に着目されている部分がある。
それに建築といっても、ひとくくりに出来ないほど現在は広がりを持っているし、住宅などで無い限り一人の人間がチェックできるレベルの物ではなくなって来ている。

建築士云々という事が解決出来る問題はとっくの昔に終わっている世界なのかも知れない。

今回の姉歯問題の本質は、建築と言う物を通じ、人の人生や生命を利用してでも自分の既得権や利益を確保または増進したいという、人間の弱く黒い意識の現れであったのだし、官僚も天下りなど同様の意識から民間の検査機関を設立した経緯があることが明白なので、そもそも建築士へ意識をもっていくのは、単なるスケーブゴートなのかもしれない。

国の中枢にいる政治家が「これ以上責任が何処にあるか追求すると日本の不動産業界が破綻するので止めた方がいい」などと驚くべきと言うか、犯罪的な発言をテレビでしておるのを見るに付け、さらに根源的な責任追及をどこまでもすべきだし、そんな事で破綻する様な責任能力のなさならば、既に業界として破綻しているではないか!利用する庶民をなめるな!と強く思うところである。国の政治家は当然経済的にも世界戦略的にも日本を立ち行かせる責任があるが、そもそも何の為に、誰の為にその事を行うのか、誰から何を期待されて国政に代表として送り出されたのか考えるべきだ。政治家は(官僚も)あくまで公僕である。

様々ネットなどでも情報があるので、見てみると、民間の検査機関などは基本的に官僚の天下り先の確保を目的に作られていると思える事実が出てくる。酷い話である。

下記はその中の引用です。

【本質的な構造問題】
Q. 日本以外の先進国では、どうやって不正建築を防いでいるの?
A. 損保会社に建築設計確認を兼務させることが多いです。
  もし建物が崩壊すると損保会社が大損をするので、設計確認が厳格になります。
Q. どうして、日本では損保会社が建築設計確認を兼務していないの?
A. 日本では、損保会社が建築設計確認業務を兼ねることが禁止されているためです。
  建築設計確認業務が一種の利権となっており、
  国交省からの役員天下りや、検査担当者は元公務員であるといった実情があります。
  問題が起きても、大損もしないし、責任を負えない立場のイーホームズ等が
  建築設計確認をするという構造に、本質的な問題があります。