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原始惑星系円盤に2つ目のリングギャップを、すばる望遠鏡が発見

2015年08月09日 | 宇宙 space
すばる望遠鏡による観測から、若い恒星の周りにある原始惑星系円盤に、
2つ目のリング状のギャップ構造が見つかったんですねー

この構造は、過去に見つかっていたリング状のギャップ構造の内側にあり、
惑星系の誕生の謎に迫るうえで、重要な観測成果になるようです。
“うみへび座TW”の周りに存在するチリの円盤(イメージ図)


若い恒星を取り巻く円盤

約180光年彼方に位置する“うみへび座TW星”は、
年齢が約1000万年の若い恒星です。

その周囲には、水素とヘリウムを主成分とする、
ガスとチリでできた円盤状の構造“原始惑星系円盤”が広がっています。

これほど若い恒星の中では太陽に近いので、
これまでに様々な観測が行われてきたんですねー

2013年に行われた、
ハッブル宇宙望遠鏡をもちいた近赤外線の観測では、
原始惑星系円盤内の、中心星(恒星)から約120億キロ離れたところに、
リング状のギャップが発見されています。


ギャップ構造で惑星が作られている

こうした原始惑星系円盤の中で、惑星が誕生すると考えられています。

でも、太陽系を含め惑星系の成り立ちを理解するためには、
中心星のすぐ近くの観測が必要不可欠になるんですねー

そこで今回の研究では、
“うみへび座TW星”の原始惑星系円盤の細かいチリを、
すばる望遠鏡で観測。

すばる望遠鏡の、
地球大気の揺らぎによる画像の乱れを補正する補償光学装置と、
最新鋭の高コントラストカメラ“HiCIAO”の優れた性能を活用しています。

さらに、観測方法やデータを厳選することによって、
ハッブル宇宙望遠鏡よりも、さらに中心星に近い領域が観測可能にしています。
“うみへび座TW”の周りに存在するチリの円盤。
左は2013年にハッブル宇宙望遠鏡で観測した画像。
右の図は今回すばる望遠鏡で観測した画像。

観測の結果、半径約30億キロのところに、
新たなリング状のギャップ構造を発見するんですねー

これは太陽系で言えば、太陽から天王星までの距離に相当する位置で、
ハッブル宇宙望遠鏡で発見された構造と合わせて、
同じ円盤に2つのリング状のギャップ構造が、撮影されたことになります。

この恒星の若い年齢を考慮すると、
複数のリング状のギャップ構造は、惑星系を形成する途中の段階だと考えられ、
太陽系も昔は似たような姿をしていたと推測できます。

原始惑星によって、リング状のギャップ構造が形成される理論予測もあり、
今回の観測成果は、惑星系誕生の謎に迫るうえで重要なものになりました。

いま“うみへび座TW星”では、
中心星からいくつかの異なる距離に、
同時に複数の惑星が形成されているのかもしれません。

また、惑星とは言えないまでも、
やがて惑星の基になるチリが大きく成長している段階だとも、
考えられるんですねー


さらなる解明には電波観測を活用

アルマ望遠鏡では、
“うみへび座TW”よりも若い別の恒星“おうし座HL星”を取り囲む、
多重リング構造の撮像に成功。

円盤内部にある大きなチリの分布を明らかにしています。

また電波を使うと、
木星のようなガス惑星や地球の大気の材料になるガスも、
観測することができます。

なので、すばる望遠鏡と電波観測のデータを組み合わせて、
円盤の3次元構造を明らかにできれば、
惑星の形成メカニズムの解明が進みますね。


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