宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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急激に縮んでいく木星の大赤斑

2014年05月21日 | 木星の探査
木星のトレードマーク大赤斑は、大気表面で吹き荒れつづける巨大な暴風の渦です。
この大赤斑が、近年急激な勢いで縮小しているんですねー
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した木星の大赤斑。
1995年、2009年、2014年の画像を比較すると、縮小しているのが分かる。

大赤斑は、大気中で起こる高気圧性の突風が長年持続しているものです。
かつてその幅は4万キロを超え、直径約1万3000キロの地球がすっぽりと3つも収まるほど巨大なものでした。

でも1930年代から、大赤斑が縮小しているのが観測され、
1979年の探査機“ボイジャー”1号と2号のフライバイ観測で2万3000キロ、
1995年のハッブル宇宙望遠鏡の観測では2万1000キロ、同じく2009年には1万8000キロと年々小さくなっているんですねー

さらに2012年からは、1年間で930キロという急激な勢いで縮み、最新のハッブル宇宙望遠鏡の観測では幅が1万6500キロに…
その形も、楕円から真円に近いものに変わってきているんですねー

ハッブル宇宙望遠鏡の観測では、微小な渦が大赤斑に取り込まれているようすもとらえられていて、
この現象が急激な縮小に影響している可能性があるようです。

1930年代から縮小していることが分かっていた大赤斑、2012年から縮小のペースが速まった理由を知るには、もう少し詳しい調査が必要ですね。

超強力な磁場を持つ天体“マグネター”

2014年05月20日 | 宇宙 space
超新星爆発の跡に残った、超強力な磁場を持つ天体を“マグネター”といいます。
この“マグネター”の不思議な形成過程が、かつてのパートナーとみられる天体の発見で明らかになってきました。
超強力な磁場を持つ中性子星の一種“マグネター”

とても重い星が、みずからの重力で崩壊して超新星爆発を起こすと、
その跡には中性子星かブラックホールが作られます。

元の天体がより重い場合に作られるブラックホールほどではないのですが、
スプーン1杯程度で10億トンという質量の中性子星も、想像しがたい高密度天体なんですねー

そんな中性子星の一種“マグネター”は、その名のとおりひじょうに強い磁場を持ちます。
天の川銀河では20数個発見されていて、
その1つが“さいだん座”の星団“Westerlund 1”にある“CSOU J164710.2-455216”になります。

1600光年彼方にある散開星団“Westerlund 1”。
高温の青色巨星が集まっているが、星間がガスやチリを通して赤く見えている。

これまでの研究から、
この“マグネター”が、太陽40個分の重さの星が超新星爆発を起こしてできたものと分かっています。
でもこのくらいの重さの星は、中性子星でなくブラックホールを残すはずなんですねー

では、なぜ“マグネター”が作られたのでしょうか?

考え出された説は、
「この“マグネター”が、2つの大質量星のペアの相互作用でできた。」っというものです。

ただ問題は、“マグネター”の位置にパートナーの星が見つかっていないことなんですが、
チリにあるパラナル天文台の超大型望遠鏡“VLT”の観測で、星団の中で特異な動きを見せる暴走星が見つかります。

見つかった天体“Westerlund 1-5”は、
“マグネター”を作り出した超新星爆発ではじき飛ばされた、と考えられるような猛スピードで移動していたんですねー
また、軽くて明るい、そして炭素が豊富という特徴は、もともと連星の片割れだったということを示していました。


“Westerlund 1-5”の発見で、“マグネター”が形成された以下のようなシナリオが成り立ちます。

まず、ひじょうに接近した2つの星の連星のうち重い方が(後の暴走星)が一生の終盤にさしかかり、
外層のガスが伴星(後のマグネター)に移り始めます。
質量が降り積もる勢いで伴星の自転は加速、この高速回転が“マグネター”の超強力な磁場のもとになります。

次に、降り積もる物質を受け取りきれなくなった伴星は、今度は物質を放出し始め、その一部が元の天体に戻されることに…
こうした物質のやりとりが、“Westerlund 1-5”の奇妙な組成を生んでいるようです。

そして、物質を放出した伴星は再び軽くなったので、超新星爆発が起こった際にブラックホールでなく中性子星が作られたということです。
今回の成果で、“マグネター”の形成過程の謎を解く手がかりがつかめてきましたね。

ロシアの月基地は2030年に完成?

2014年05月19日 | 宇宙 space
2030年に月の南極に有人月基地を建設する、という計画案がロシアにあるんですねー
まず前段階として、旧ソ連の月探査機“ルナ”の後継機を2025年までに4機打ち上げるようです。

ルナ・グローブ周回機(イメージ図)
ロシア連邦宇宙庁、ロシア宇宙科学研究所、モスクワ大学がまとめた計画案では、
2016年から無人の月探査機を連続して打ち上げ、技術実証を行うことになります。

そして、2030年までに月へ有人の遠征隊を送り、月の南極付近に基地を建設して資源の採掘を開始。
2040年ごろまでに月面天文台や観測施設を完成させます。

月基地建設の候補地を月の南極付近に予定しているのは、
北極に比べて水が多い可能性があることと、天の川銀河の観測を行うのに南極が適しているから。
水素と酸素を含む月のレゴリス(砂状の表面の堆積物)を使って、人間の居住施設を建造することになります。

月開発計画は3段階になっていて、
2016年から2025年までの10年間(第1フェーズ)では、
旧ソ連の月探査機ルナシリーズの後継機が4機打ち上げられます。

ルナ計画は、1976年に月軟着陸とサンプルリターンを成功させた“ルナ24号”で終了しているのですが、“ルナ25号”から“ルナ28号”まで、月周回機と着陸機の2種類を開発しているんですねー

“ルナ25~27号”は、ルナ・グローブ計画として1990年代に再度計画されたものの、火星探査機“フォボス・グルント”の打ち上げ失敗から大幅に見直されることになります。

ルナ計画が見直されたことにより、“ルナ25号”は2015年から2016年に打ち上げが変更へ。
この計画ではソユーズロケットで打ち上げを行い、月面への着陸技術の向上を目指し、さらにレゴリスのサンプル調査も行います。

“ルナ26号”は2018年に打ち上げられ、月の低軌道を周回。
ルナ・レスールス着陸機(イメージ図)
つづいて“ルナ27号”は2019年打ち上げ、月の極域で最終的な有人探査の候補地への着陸を目指します。
月表面から2メートルの深さまでの掘削とサンプル調査も行う予定です。
“ルナ28号”については、まだ詳細は不明になっています。

第2フェーズは2028年から2030年までで、有人での月軌道への周回飛行を行います。
2030年から2040年までの第3フェーズは、いよいよ有人での月開発を開始、
月の資源を使った基地を建設し、月面天文台や地球観測施設の基礎を築くことになるんですねー

まぁー 巨額の費用がかかるので計画は実現しないとの見方もあるのですが、
ヨーロッパ宇宙機関との国際協働プロジェクトとする話し合いも進めているようですよ。

銀河系には地球型惑星が、どれくらいあるのか?

2014年05月18日 | 地球外生命っているの? 第2の地球は?
天の川銀河に惑星がどのくらいあるのか?

最近の研究で、その謎が徐々に解明されつつあります。
ただ、これまでに発見済みの太陽系外惑星は数百を超えているんですねー

なので、よほどユニークな新事実でも無い限り、
ニュースで報道されるケースも減少しているんですねー
地球とほぼ同サイズの太陽系外惑星“ケプラー186f”(イメージ図)
ハビタブルゾーン(生命居住可能領域)に属していて、
地表面に液体の水が存在する可能性がある。
ただ、地球に酷似しているわけではない。

でも、発見された系外惑星が、地球にそっくりだとしたら話は別です。

もともと系外惑星探索の最大の目的は、地球そっくりの惑星を発見すること。

でも探索が進むにつれて、
「太陽系が非常に特異な存在である」という事実も明らかになってくるんですねー

ただ予想外の展開で、地球タイプの可能性を示す惑星が見つかことに…

そして当初の目的達成は、もはや時間の問題になりつつあり、
探索は既に次の段階に進み、
地球外生命体の可能性が、取り沙汰されるようになっきました。

そして、その手がかりは、系外惑星の大気成分がカギを握っているようです。


10年ほど前には、
惑星が宇宙の中で極めて希少な存在だという説が主流でした。

それが現在では、
恒星のほとんどが惑星を伴っているという説が、有力視されているんですねー

この3年間だけでも、
「銀河系には数十億個もの惑星が存在する」という研究結果が、
いくつも発表されています。

NASAの系外惑星探査衛星“ケプラー”は、
4年近くのミッションで約15万6000個の天体を観測してきました。

目的は、恒星のハビタブルゾーン(生命居住可能領域)に、
地球型惑星がどの程度の割合で存在するかを突き止めることです。

ハビタブルゾーンでは、液体の水が地表を流動する温度帯に大気温が維持され、
地球上と同じように生命体が生息している可能性があるんですねー

そして、“ケプラー”の観測結果は、
太陽系が銀河系の中でも標準的な惑星系ではない事実を示すことになります。
っというのも、系外惑星系はそれぞれ特色のある構造を備えているからです。

ヨーロッパ南天天文台の太陽系外惑星観測装置での観測では、
多数の系外惑星で、地球と海王星の中間程度の質量を持つ惑星が、
互いに近接した小さな公転軌道上を周回している可能性が示され、
後に“ケプラー”によって確認されています。

太陽系とは、いろいろな点で異なるのですが、
銀河系ではこの構造を持つ惑星系が最も一般的なようです。


現在、多数の系外惑星について、地球のような岩石惑星の可能性、
また液体の水の存在(生命が生息できるかどうか)など、
さまざまな特性が調査されています。

最新の研究によると、半径が地球の1.5倍未満の惑星は岩石惑星になる可能性が高く、
サイズが大きくなると密度が低い別の状態が形成されるそうです。

また、地球型惑星の存在頻度を精密に計算するうえで必要な数値の算出も始まっていて、
“ケプラー”のデータに基づくと、地球型惑星の存在頻度は0.22と算定されているんですねー

そして、太陽型恒星を中心星とする惑星系のうち約22%で、
地球と同サイズの岩石惑星がハビタブルゾーンに存在するようです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ スペクトル観測だと、地球外生命は探せない?

8万年という長い公転周期をもつ惑星

2014年05月17日 | 宇宙 space
155光年彼方の“うお座GU星”に、8万年という長い公転周期を持つ巨大ガス惑星が、直接撮像で見つかりました。
中心の恒星から離れていて観測がしやすいので、今後の系外惑星研究のよいサンプルになるようです。
“うお座GU星”と遠く離れた惑星“GU Psc b”。

分光観測を手がかりとして分かったのは、この惑星の温度は摂氏800度であること。
そして、中心星の年齢を手がかりとして、惑星の質量が木星のおよそ9~13倍ということが分かってきました。

中心星である“うお座GU星”は、太陽の3分の1の重さを持つ変光星で、
生まれて1億年程度の若い星のグループ“かじき座AB運動星団”の仲間であることが判明しています。

星が若いということは、もし惑星が存在すれば、まだあたたかく赤外線で観測しやすいんですねー

なので、直接撮像での惑星探しのターゲットとなっていて、期待通りの発見といえます。

また、太陽~地球の2000倍という中心星からの記録的な距離も、直接観測しやすい要因になっています。

中心星から離れているので、あらゆる機器で詳しく調査が行いやすい惑星。
この惑星から、巨大ガス惑星全般についての理解が進むといいですね。