宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

惑星系を作る原子惑星系円盤の構造とは…

2014年05月27日 | 宇宙 space
野辺山と南米チリの電波望遠鏡を用いて行われた、
太陽の約2倍の質量を持つ天体に付随する原始惑星系円盤の観測から、
ガスの密度分布と温度分布の構造が明らかになりました。

各図上段の黒曲線が、観測で検出された円盤からの放射。
緑曲線が、理論計算の結果。
各図下段は、上段観測結果(黒曲線)と理論計算結果(緑曲線)の差を、それぞれ表したもの。
差が小さいほど観測と理論が一致していることを示している。

地球や木星をはじめとする惑星は、原始惑星系円盤と呼ばれるガスとチリでできた、円盤状の天体の中で形成されると考えられています。

なので、惑星や惑星系がどのように形成され、
現在見られる私たちにの太陽系が、どのようにして形成されたのかを理解するには、
この母体となる原始惑星系円盤を詳しく調べることがとても重要になります。

今回、国立天文台の研究チームが観測したのは、
“おうし座”にある太陽の約2倍の質量を持つ、恒星“MWC 480”に付随する原始惑星系円盤。
野辺山の45メートル電波望遠鏡と、南米チリのASTE10メートル電波望遠鏡が用いられました。

その結果、円盤内のガスの密度分布と、温度分布の構造が明らかになったんですねー

複数の理論計算によって観測結果を再現したところ、
中心星の光が直接当たる円盤表面付近では高温で、光が届きにくい円盤内部では低温になり、
厚さ方向に温度勾配があることが分かりました。

また、これまで考えられていたより、はるか遠くまでガスが薄く広がっていることも分かったんですねー

円盤の外縁部では、円盤内縁部からガスやチリがゆっくりと移動…
やがて宇宙空間に散らばって、現在見られる私たちの太陽系のような、ガスが晴れた惑星系が形成されたと考えられています。

国内にある電波望遠鏡と異なり、ASTE望遠鏡はサブミリ波という種類の電波を受信できます。
このサブミリ波での観測は、原始惑星系円盤のように、比較的濃く高温な状態にあるガスをより効率的にとらえることができるんですねー

その結果、これまで検出が困難だった星から、
より遠方に広がったガスまでを、とらえることに成功しています。

さらに、世界最大の解像度を誇るALMA望遠鏡によって、
他の天体でもこのような円盤構造が示されていて、
今回の観測は、その先駆的な役割を果たしたといえるんですねー

チリに隠れたブラックホールを持つ銀河は、群れて分布する?

2014年05月27日 | 宇宙 space
NASAの赤外線天文衛星“WISE”の観測から、
チリに隠れたブラックホールを持つ銀河は、隠れていないブラックホールを持つ銀河より、
群れて分布する傾向にあることが分かりました。

チリの有無は、単なる見かけ上の違いと考えられてきたのですが、何か別の理由があるのかもしれないんですねー


ほとんどの大規模な銀河には、その中心核に超巨大質量のブラックホールがひそんでいます。
その一部は、周囲のガス物質を重力で引き寄せて、膨大なエネルギーを放出し明るく輝く“活動銀河核”として観測されています。

これらの“光るブラックホール”は、本質的には全て同じはずなんですが、
チリでさえぎられたものと、そうでないものとがあるんですねー

これは、「ブラックホールを取り囲むドーナッツ構造の見かけの傾きの違い」によるというのが、これまでの一般的な見方でした。
これまでブラックホールを取り巻くチリのドーナッツ構造の傾きが、
見かけの違いを生む要因として考えられてきました。

でも、“WISE”が観測した17万を越す“活動銀河核”のデータから、
チリにさえぎられたブラックホールの方が、むき出しのブラックホールに比べて、
より群れている傾向があることが分かってきたんですねー

もし見え方の違いが、ドーナッツ構造の傾きによるものなら、
それぞれの分布はランダムになるはずです。
ただ、今回の結果が偶然でないとすれば、
チリの有無に影響する別の理由を検討する必要が出てくることに…
銀河の群れ全体を大きく取り囲む“ダークマター”(紫色)。
“WISE”による“ろ座銀河団”の画像を強調処理したもの。

また、銀河を取り囲む直接観測できない未知の重力源“ダークマター”も、分布の違いに関わっている可能性もあります。

チリに覆われたブラックホールを抱く銀河が群れをなしているということは、
その群れを取り巻く、より大規模な“ダークマター”の構造があるということにもなります。

“ダークマター”自体が、ブラックホールを隠すわけではないのですが、
その重力が何らかの作用を起こしているのかもしれませんね。