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クエーサー中心にある超大質量ブラックホールが光速で自転するのはなぜ?

2019年07月22日 | ブラックホール
X線天文衛星“チャンドラ”による観測から、クエーサーの中心に存在する超大質量ブラックホールが光速に近い速さで回転していることを示す証拠がとらえられました。

超大質量ブラックホールの自転速度

今回、アメリカ・オクラホマ大学の研究チームがNASAのX線天文衛星“チャンドラ”を用いて観測したのは、98億~109億光年彼方に位置する5つのクエーサー。
クエーサーは活動銀河核の一種。銀河の中心核だけで残りの銀河全体よりもはるかに明るく輝いている天体。
観測の目的は、それぞれの中心に存在している太陽質量の1.6億~5億倍という超大質量ブラックホールの自転速度を調べることでした。

地球から見ると、これらのクエーサーの手前には別の銀河が存在しています。
その銀河の質量が作り出す重力レンズ効果によって、各クエーサーの像は複数に分かれて観測されることになります。

さらに、今回の観測でとらえることができたのは、銀河内の恒星によるマイクロ重力レンズ効果の影響。
そのおかげで、X線放射が狭い範囲から発生していることが明らかになりました。
○○○
“チャンドラ”がとらえたクエーサーの重力レンズ像。
各画像の左下は天体名。
X線は、ブラックホールを取り巻く降着円盤の物質が回転しながらブラックホールへと落ち込んでいくときに高温になることで放射されます。
ブラックホールに落下する物質は角運動量を持つため、降着円盤と呼ばれるへんぺいな円盤をブラックホールの周囲に作る。降着円盤内のガスの摩擦熱によって落下するガスは電離してプラズマ状態になり、この電離したガスは回転することで強力な磁場が作られ、降着円盤からは荷電粒子のジェットが噴射しX線などが観測される。
この時にブラックホールが自転していると、物質はブラックホールにより近い領域を周回するようになります。

つまり、狭い領域からのX線放射は、超大質量ブラックホールが高速で自転していることを示唆しているんですねー

今回の観測データから明らかになったのは、“アインシュタイン・クロス”と呼ばれる4つの重力レンズ像で知られている、みずがめ座の方向にあるクエーサー“Q2237”では、中心ブラックホールはほぼ光速で自転していること。

また、他の4つについても、光速の約50%で自転していることが示されることになります。

こうした高速自転は、X線スペクトルに見られる特徴からも確かめられています。

超大質量ブラックホールが、これほど高速で自転している理由については、まだ分かっていません。

可能性として考えられるのは降着円盤の運動。

ブラックホールと同じ向き、同じ角度で回転する降着円盤から数十億年以上にわたって物質が供給されていることで、ブラックホールが成長してきたことと関りがあるのかもしれません。


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