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宇宙初期の“星のベビーブーム”はどうやって引き起こされたのか? 星形成率が非常に高い星団から分かってくること

2022年10月10日 | 宇宙 space
小マゼラン雲には、非常に活発な星形成が見られる散開星団“NGC 346”があります。
この散開星団“NGC 346”で、星団の中心に向かって星やガスが渦巻くように運動している様子が明らかになったんですねー
どうやら、この流れが活発な星形成を引き起こしているようです。

非常に活発な星形成が見られる星団

天の川銀河には50以上の衛星銀河が見つかっていて、そのうちの1つ小マゼラン雲は地球から約20万光年の彼方に位置しています。
衛星銀河(伴銀河ともいう)とは重力の相互作用により、より大きな銀河の周囲を公転する銀河。
今回取り上げるのは、小マゼラン雲の中にある散開星団“NGC 346”。
“NGC 346”の直径は、わずか150光年なんですが、太陽5万個分の質量を持っているんですねー
散開星団は、分子雲から同時に生まれた星同士が未だに互いに近い位置にある状態の天体。銀河のディスク部分に存在するため銀河星団とも呼ばれる。
また、渦巻き銀河の腕のようにカーブした星やガスの集まりが見られ、そこでは非常に活発な星形成が行われています。

“NGC 346”は、なぜこうした性質を持っているのでしょうか?
この問いについては、まだよく分かっていません。

星形成率が非常に高い原因は渦巻き運動にあった

アメリカ・宇宙望遠鏡科学研究所のメンバーを中心とする研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡を使って散開星団“NGC 346”の星々の位置を11年間にわたって観測。
ハッブル宇宙望遠鏡が持つ高い分解能と感度のおかげで、極めて精密な測定を行うことに成功しています。

これにより分かってきたのは、“NGC 346”の星々は時速約30000キロの速度を持ち、11年間で2天文単位(約3億キロ)ほど動いていること。
ただ、小マゼラン雲は天の川銀河の星々より遠いので、地球から見た移動量は極めて小さなものでした。

さらに、ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡“VLT”を使って、星団の星々の視線速度も求め、星々の3次元的な運動を明らかにしました。

その結果分かってきたのは、“NGC 346”の内部では星とガスが星団の中心に向かって渦を巻くように動いていることでした。

そう、星団の奇妙な椀構造や星形成率が非常に高い原因の1つは、この渦巻き運動に合ったんですねー
小マゼラン雲にある大質量星団“NGC 346”。赤い渦巻きは星とガスが中心に向かって渦を巻いて運動している様子を示している。(Credit: NASA、ESA、Andi James (STScI))
小マゼラン雲にある大質量星団“NGC 346”。赤い渦巻きは星とガスが中心に向かって渦を巻いて運動している様子を示している。(Credit: NASA、ESA、Andi James (STScI))
渦巻構造は、星団の外側から中心に向かって星形成を促す、非常に自然で良い方法と言えます。

それは、星や星形成の燃料になるガスを、中心部に送り込むのに最も効率的なやり方だからです。

“星のベビーブーム”がどのように引き起こされたのかのヒントになるかも

天の川銀河よりも重元素の量が少ない小マゼラン雲では、重い星が生まれやすくなります。

ガス雲が重力収縮して新たな星になるためには、ガス雲が冷える必要があります。
でも、重元素が少ないガスは冷えにくいんですねー

このため、より大きなガスの塊でないと圧力に打ち勝って重力収縮が進まないからです。

こうして誕生した大質量星は、わずか数千年で超新星爆発を起こして一生を終えることになります。

そう、重元素の少ない小マゼラン雲は、超新星爆発で宇宙に大量の重元素がばらまかれる前の初期宇宙の銀河に似ているとも言えます。

今回明らかになった“NGC 346”の星形成の仕組みは、ビッグバンから約20億~30億年後の初期宇宙で起こったとされる“星のベビーブーム”が、どのように引き起こされたのかを理解するヒントになるのかもしれませんね。


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