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日本開発の“バンド10”受信機が初成果! 見つけたのは最も単純な砂糖の仲間とジェットの噴水

2019年01月11日 | 宇宙 space
アルマ望遠鏡による、巨大星の誕生現場“猫の手星雲”の一角の観測から、糖類分子など多数の分子が放つ電波が検出されました。

さらに、生まれたての星からガスが激しく噴き出す様子も明らかになります。

これらの成果は日本が開発した“バンド10”受信機によるもの。
今後も“バンド10”受信機が新しい宇宙の姿を届けてくれそうです。


様々な有機分子が放つ電波

アメリカ・国立天文台とハーバード・スミソニアン天体物理センターの研究チームが、さそり座の方向約4200光年の彼方に位置する大質量星の誕生現場の一角“NGC 6334I”をアルマ望遠鏡を使って観測しました。
  この領域全体は“猫の手星雲”という愛称で
  天体写真ファンにも良く知られている散光星雲。


すると、“NGC 6334I”で非常に多数の分子が放つ電波(分子輝線)が検出されたんですねー

過去にもヨーロッパ宇宙機関の赤外線天文衛星“ハーシェル”を使って65本の分子輝線が検出されていました。
でも、アルマ望遠鏡の高感度と高解像度のおかげで、今回の観測で検出されたのは695本もの輝線でした。
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(上)ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた“猫の手星雲”、
(下)白い丸で示された領域“NGC 6334I”の観測から、
“ハーシェル”とアルマ望遠鏡が検出した分子輝線の数を比較したもの。
研究チームがこれらの輝線の周波数を詳しく分析してみると、“NGC 6334I”に砂糖の仲間の中で最も単純な構造をしたグリコールアルデヒド(HOCH2CHO) 分子をはじめ、メタノール(CH3OH)、メチルアミン(CH3NH2)、エタノール(CH3CH2OH)など様々な有機分子の存在が確認されます。

輝線の中には、電波を放った分子が不明のものもあり、今後の研究で新しい分子が見つかる可能性もあるそうです。


噴水のように噴き出すガスのジェット

また、重水(HDO)分子が放つ電波の観測によりとらえられたのが、“NGC 6334I”の中心付近からガスのジェットが噴水のように噴き出している様子でした。

このことは、ジェットの根元には巨大な赤ちゃん星が存在することを示唆しているそうです。

ただ、発見されたジェットは、これまでにこの星の周りで発見されたものよりも規模が大きく向きもやや異なっていたんですねー
このことから、ジェットが星から噴き出したばかりのものではないかと考えることができます。
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アルマ望遠鏡が取得したデータから作成された“NGC 6334I”の擬似カラー画像。
中心に巨大な赤ちゃん星“NGC 6334I MM1B”があり、その上下方向にガスが噴き出している。
(白)重水分子が放つ電波、(オレンジ)チリが放つ電波。
さらに明らかになったのは、グリコールアルデヒドと重水分子の分布がよく似ていることでした。

チリ表面で作られた分子が、衝撃波や熱によってチリ表面の氷が壊されるのといっしょに、星間ガス中に飛び出していったことなのかもしれません。


最も周波数が高い帯域の受信機

今回の研究成果は、日本が開発を担当した“バンド10”という周波数帯の受信機を用いて得られたそうです。

“バンド10”は、アルマ望遠鏡の観測周波数のうちで最も周波数が高い(波長が短い)帯域にあたります。

この周波数帯で可能になるのが、高温・高密度な環境に存在する分子からの電波をとらえて、惑星が誕生する現場での有機分子分布の研究です。
さらに、宇宙における水蒸気の分布を詳しく調べたりすることができます。
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アルマ望遠鏡の“バンド10”受信機
日本が開発した“バンド10”受信機を使った初めての成果が、今回の研究になるんですねー

今後も、“バンド10”受信機が新しい宇宙の姿を届けてくれることに期待したいですね。


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