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中性子星どうしの連星を作るのは、どんな超新星爆発なのか?

2018年11月10日 | 宇宙 space
連星を形成する2つの中性子星が合体するという現象が、重力波と電磁波によって世界で初めて観測されました。

中性子星どうしの連星が形成されるには、2つの大質量星それぞれが超新星爆発を起こす必要があります。

ただ、中性子星どうしの連星が作られる条件は、とても難しいと考えられていて、形成過程はこれまで明らかになっていないんですねー

いったい、どういった超新星爆発が中性子星の連星を形成したのでしょうか?

中性子星の連星を作ったと考えられる超新星が、過去の観測データから見つかったことで形成過程が分かって来たようです。


金やプラチナを作り出す中性子星どうしの合体

2017年、連星を形成する2つの中性子星が合体するという現象が、重力波と電磁波によって世界で初めて観測されました。

中性子星どうしの合体は、金や白金(プラチナ)といった元素を作り出す現象になるので、今後同じような現象を観測することで元素合成に関する理解が大きく進むと期待されているんですねー

  金やプラチナは、中性子星の合体で生成された?
    

中性子星は、大質量星が進化の最終段階で超新星爆発を起こしたときに作られる超高密度の天体です。

そのような天体同士の連星が形成されるには、2つの大質量星それぞれが超新星爆発を起こす必要があります。

でも、まず重いほうの星が先に爆発して中性子星が形成され、それに続いてもう一方の星が通常の超新星爆発を起こすと、連星系を作る物質が一気に失われてしまいます。

そうすると力学的に不安定になってしまうので、連星系が壊れて中性子星の連星は形成されないことになります。

このように中性子星どうしの連星が作られる条件は、とても難しいと考えられていて、その形成過程はこれまで明らかになっていませんでした。


中性子星どうしの連星はどうやって作られるのか

今回、中性子星の連星系形成についてシナリオを考えたのは、国立天文台理論研究部のチームです。

このシナリオでは、後から超新星爆発を起こす星の外層が、先の爆発で作られた中性子星の重力の影響でほとんど剥がされてしまう場合があるとしています。

その状態で超新星爆発を起こすと、爆発で放出される物質が極めて少なくなるので、力学的に不安定にならず連星系が壊れずに済みます。

この場合に可能性があるのは、後から爆発する星が爆発の直後に希薄なヘリウムの層を周りに形成すること。

研究チームでは、スーパーコンピュータ“アテルイ”などを用いた数値シミュレーションによって、外装がほとんど剥がれた星が起こす超新星爆発がどのような天体として観測されるのかを調べます。

すると、通常の超新星爆発に比べて爆発のエネルギーが10分の1程度と小さいこと、超新星爆発後の5~10日までに最も明るくなることが分かってきます。
  具体的なスペクトルの時間変化などについても予測ができるようになっている。

そして、シミュレーションで予測された天体と非常によく一致する超新星が“パロマー突発天体観測プロジェクト”の観測データから発見されるんですねー

その超新星は、カリフォルニア工科大学の研究チームが2014年10月に観測した、ペガサス座の銀河に現れた“iPTF14gqr”でした。
○○○
超新星“iPTF14gqr”の出現前(左)と出現後(右)。
破線の丸で囲まれた部分が超新星になる。
超新星“iPTF14gqr”が示していたのは、通常の超新星よりも爆発エネルギーが小さく、爆発時に放出された物質が極めて少ないこと。

また、超新星爆発後に行われた分光観測から、周囲に希薄なヘリウムの層が広がっていることも分かります。

これらの観測結果は、シミュレーションで予測された外層が大きく剥がれた超新星の特徴とよく一致することになります。
さらに、超新星の光度変化についても観測とシミュレーションはよく一致していました。

そう、超新星“iPTF14gqr”により形成されたのは中性子星どうしの連星で、それを世界で初めてとらえたケースになるんですねー
○○○
(左)シミュレーションで予測された超新星の光度曲線(青色の破線)と、
実際に観測された超新星“iPTF14gqr”の光度曲線(白丸)。
(右)超新星爆発後3日程度までは爆発の衝撃波が冷えていくので急激に減光し、
5~10日の間に超新星爆発で作られた放射性物質が崩壊する熱によって明るくなる。
シミュレーションによって予測された外装が剥がれた超新星のスペクトル(白)と、
観測された超新星“iPTF14gqr”のスペクトル(ピンク)。
青は連星が起こす一般的な超新星のスペクトル。


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