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H3ロケットの試験機2号機が打ち上げ成功! 1号機の失敗から1年以内という比較的早期の打ち上げを実現

2024年02月18日 | 宇宙 space
JAXAと三菱重工業は、2024年2月17日午前9時22分に国産基幹ロケットH3試験機2号機の打ち上げを実施しました。

H3の第2段機体は所定の軌道へ投入され、搭載されていた2機の小型副衛星“CE-SAT-IE”と“TIRSAT”も地球低軌道への投入に成功。
さらに、H3試験機1号機の打ち上げで失われた先進光学衛星“だいち3号(ALOS-3)”の質量を模したダミー衛星“VEP-4”の分離も確認されています。
っということで、打ち上げは無事成功しました!
H3ロケットの打ち上げ
H3ロケット試験機2号機打ち上げライブ中継より


宇宙開発における日本の存在感の維持

H3ロケットは、これまで日本の主力ロケットだった“H-II”の後継機として、JAXAと三菱重工業が開発した新型ロケットです。

毎年6機程度を安定して打ち上げることで、日本における宇宙輸送の基盤とするほか、民間商業衛星の打ち上げ受注を目指し、柔軟性・高信頼性・低価格の観点で、これまで以上に使いやすいロケットとして開発されました。

具体的には、まず打ち上げ価格の低減を図っています。
固体ロケットブースターを装着しない軽量形態では“H-IIA”の約半額を目指しています。

そのため、宇宙専用の部品でなく自動車産業などの民生品も活用し、生産方式も受注生産からライン生産に近づけています。

さらに、ロケットの組み立てや、衛星のロケット搭載といった射場整備期間もH-IIAから半分以下に短縮。
予定していた日時に打ち上げる“オンタイム打ち上げ率”もH-IIAの水準を維持することで、打ち上げサービス市場での高い競争力を狙っています。

日本政府の考えは、H3ロケットと、今後立ち上がるスペースワンやインターステラテクノロジズなどの民間ロケットを合わせて、2030年代前半までに年間30回程度のロケット打ち上げ能力を国内に確保すること。
これにより、宇宙開発における日本の存在感の維持を狙っています。


国産基幹ロケットH3試験機2号機

H3ロケットの試験機1号機による初飛行は2023年3月7日に実施されました。
でも、第1段の切り離し後に第2段の“LE-5B-3”エンジンを点火することができず打ち上げは失敗。
搭載されていた先進光学衛星“だいち3号(ALOS-3)”を失うことになります。

原因を調査したJAXAは、第2段エンジンの電気系統で発生した可能性がある短絡(ショート)や過電流を3パターンまで絞り込みます。
その全てに対策を行ったうえで、今回の試験機2号機の打ち上げに臨んでいます。

この試験機2号機のメインミッションは、ロケット第2段を所定の軌道へ投入すること。
これは、早期のフライト実施を行いつつ、今後予定されている打ち上げへの影響を最小限に抑えるためでした。

さらに、試験機1号機の解析結果を最大限生かすため、試験機2号機でも機体の形態は前回と同じH3-22Sを採用。
このH3-22Sという機体は、新型1段エンジン“LE‐9”を2基搭載、改良型固体ロケットブースター“SRB-3”を2基装着、衛星などを搭載するペイロードを保護するフェアリングがショート形態になります。

H3ロケットには他に、固体ロケットブースターを装着しない“H3-30S”、1段エンジンを3基搭載・固体ロケットブースター4基を装着・大型衛星フェアリング形態の“H3-24L”という構成があります。

また、飛行経路も第2段エンジンが1回目の燃焼を終えるまでは、試験機1号機で予定されていたのと同じものを採用。
ペイロードには、H3試験機1号機の打ち上げで失われた先進光学衛星“だいち3号(ALOS-3)”の質量を模したダミー衛星“VEP-4”の他に、2機の小型副衛星“CE-SAT-IE”と“TIRSAT”が搭載されていました。
H3ロケットの形態
H-IIロケットとH3ロケットの各形態(Credit: JAXA)


試験機1号機で果たせなかった第2段エンジンの点かに成功

日本時間2024年2月17日9時22分55秒、H3ロケットは種子島宇宙センター大型ロケット発射場を離床。
打ち上げ後1分56秒後に固体ロケットブースターを分離し、極軌道へ入るために飛行経路を南の方向へ大きくドッグレッグしています(※1)。
※1.ロケット発射後に、犬の足のような形に軌道を曲げることからドッグレッグ(dogleg)と呼ぶ。
打ち上げから5分前後の第1段エンジン燃焼停止と第1段・第2段分離に続き、打ち上げ5分15秒後には試験機1号機で果たせなかった第2段エンジンの点火に成功。
打ち上げから16分22秒後には第2段エンジンが第1回燃焼を停止し、試験機2号機の第2段は所定の軌道へ投入されています。

ペイロードのうち小型副衛星の“CE-SAT-IE”は打ち上げ16分43秒後、“TIRSAT”は打ち上げ25分3秒後に、それぞれ分離され地球低軌道へ投入されました。

また、ロケット第2段を軌道から離脱させてインド洋へ制御落下させるための第2段エンジン第2回燃焼の実施に続き、打ち上げ1時間48分14秒後には主衛星分離機構の実証として“VEP-4”の分離確認試験を実施し成功しています。
H3ロケットの打ち上げ
H3ロケット試験機2号機打ち上げライブ中継より
衛星の分離
H3ロケット試験機2号機打ち上げライブ中継より
今回の試験機2号機の打ち上げに際して、JAXAでは1号機の打ち上げ失敗の原因を1つに特定せず、あえて3つまで残し、3つのシナリオに対して畳みかけた対策を実施しています。

なお、1号機の失敗の原因となったシナリオのうち2つは、1994年に運用を開始したH-IIロケットから使い続けている機器に起因していました。
これに対しH3プロジェクトマネージャを務める岡田匡史さんは、「枯れた技術を使い続けることの難しさを感じた」と語っています。

これを受けてJAXAは、H-IIから使い続けている機器に対し、経年による製造しにくさなどに起因する不具合ポテンシャルが内在していないかを確認。
さらに、H-IIロケット以前に基本的な設計を確立し、運用し続けている電気系機器についても再評価し対策を施してきました。

このような対策により、1年以内という比較的早期の打ち上げ再開を実現し、今回のH3ロケット試験機2号機の成功に繋がったんですね。


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