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金星探査機“あかつき”2年間の定常運用を終了。そうだ、燃料も残っているし3年ほど運用を延長しちゃえ!

2018年12月13日 | 金星の探査
2016年4月から2年間の定常運用を終えたJAXAの金星探査機“あかつき”。
姿勢制御用の燃料がまだ残っていることもあり、3年間の延長運用に移行することが発表されました。

様々な科学的な成果をもたらしてくれた“あかつき”ですが、これから始まる延長運用フェーズがどのようなものになるのか?

大きな不具合などが無ければ今後4~11年間は引き続き観測が行えるそうですよ。


金星の気象衛星“あかつき”

JAXAの“あかつき”は日本初の金星探査機。
2010年5月に種子島宇宙センターからH2-Aロケット17号機により打ち上げられました。

金星の大気を立体的に観測するため、観測波長の異なる複数のカメラを搭載している“あかつき”の主な目的は、スーパーローテーションと呼ばれる惑星規模の高速風など、従来の気象学では説明ができない金星の大気現象のメカニズムを探ること。

言ってみれば、“あかつき”は金星の気象衛星なんですねー


二度目で周回軌道投入に成功

当初の予定では、“あかつき”が金星の周回軌道に投入されるのは2010年12月7日でした。
でも、軌道投入のために逆噴射を行う主エンジンが噴射途中で破損… “あかつき”の金星周回軌道投入はは失敗に終わってしまいます。

その後、金星軌道よりも内側に入るという予定外の高温環境に耐えながら、再び金星に近づくのを待つことに。

この間“あかつき”は、太陽風が太陽半径の5倍程度離れた距離から急に加速される様子を観測することに成功。長年謎だった、コロナ加速問題を解くカギを得ています。

  “あかつき”がケガの功名、太陽風の謎を解明
    

“あかつき”に、再び金星周回軌道投入のチャンスが訪れたのは、5年後の2015年12月7日でした。

このとき“あかつき”は姿勢制御用のスラスター4機を約20分間噴射。
遠金点が44万キロ、周期14日で金星の周りを公転する超楕円軌道に投入されます。

その後、2016年4月に軌道修正が行われ、近金点8000~1万キロ、遠金点36万キロ、周期10.5日の軌道で定常観測を行ってきました。
ちなみに、当初目指していたのは30時間周期の軌道でした。


定常運用終了後は3年間の延長運用フェーズへ移行

“あかつき”がこれまでの観測で明らかにしたのは、赤道付近の中層から下層にかけての大気に、ジェット状の風の流れ(赤道ジェット)が存在すること。

さらに、金星の雲頂に長さ1万キロに及ぶ弓状の構造がしばしば発生し、これが金星表面の地形によって生じていることも発見しています。

  金星の“巨大な弓状模様”はどうやって作られたの?
    

“あかつき”は様々な科学的な成果をもたらしてくれました。
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“あかつき”の中間赤外線カメラ(LIR)で撮影された金星大気の弓状構造(上段左、下段)。
上段右は紫外線イメージャ(UVI)で撮影されたほぼ同時刻の紫外線での金星像。
一方、20016年12月には赤外線カメラの制御回路が故障。
このため、TR1(波長1μm赤外線カメラ)、TR2(波長2μm赤外線カメラ)が使えない状態になっています。

“あかつき”の2年間の定常運用期間を終了した後、JAXAでは今年8月にプロジェクトの終了審査を実施。

当初予定していた軌道への投入失敗や、TR1、TR2の故障はあったものの、ミッションとしてのミニマムサクセス、フルサクセスの条件は達成できたとして定常運用の終了が決定されました。
  2018年11月27日には金星軌道の周回数が100周を超えている。

現在は宇宙科学研究所の所内プロジェクトとして、3年間の延長運用フェーズに移行しています。

12月7日の時点で“あかつき”に残っている姿勢制御用の燃料は1.41~3.86キロ。
これは、大きな不具合などが無ければ今後4~11年間は引き続き観測が行える量になるそうです。


12月7日に発表された研究成果

故障前のTR2カメラで撮影された金星の夜領域の画像を解析してみると、金星の赤道付近の下層大気に、太陽の動きに連動した風が生じていることが明らかになります。

自転する金星が太陽光を受けると、太陽に加熱される場所が自転とは逆向きに移動することになります。

これによって金星大気に生じると考えられているのが“熱潮汐波”と呼ばれる波です。

金星の大気に生じている自転速度の60倍もの高速風“スーパーローテーション”も、この“熱潮汐波”が原因だという説があります。

発表された研究成果が示しているのは、“熱潮汐波”の影響が金星の下層大気にまで及んでいることでした。
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2016年10月19日に“あかつき”のTR2カメラで撮影された
金星の夜の領域(疑似カラー合成画像)。
通常探査機が燃料を使い果たすと、ソーラーパネルやアンテナを太陽や地球の方向に向けることができなくなってしまいます。
そう、バッテリーの充電やデータの送受信が出来なくなるんですねー
  観測対象(惑星など)の重力に引かれ高度を保てなくなることもある。

幸い当初予定していた2年間の定常運用を終えた“あかつき”には燃料がまだ残っています。

これから始まる3年間の延長運用フェーズがどのようなものになるのか? どんな発見を送ってくれるのか?
“あかつき”にはまだまだ頑張ってもらいたいですね。


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