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太古の火星に存在していた多量の水は、どのようにして失われたのか? 砂嵐が関係していたのかも

2020年12月02日 | 火星の探査
今回の研究成果も火星ネタ。
アリゾナ大学月惑星研究所の研究チームは、太古の火星に存在したと考えられている大量の液体の水が、どのようにして失われたのかについての新しいシナリオを発表しています。

太古の火星には厚い大気があり、気候は温暖で、その表面には大量の液体の水が存在した時期があったと考えられています。

でも、現在の火星は冷たく乾燥し、その表面に液体の水の存在は確認されていません。

では、かつて火星の表面にあった大量の液体の水は、どこに行ってしまったのでしょうか?

この疑問については、水の一部は宇宙に逃げ、残りは永久凍土として今も火星の地下に眠っているのではないかと考えらています。

今回、研究チームが提唱している新しいシナリオは、このうち宇宙に逃げていった水についてのもの。

これまで、火星大気中の水蒸気は大気の高層で太陽光線によって酸素分子と水素分子に分解されることで、その上にある水蒸気を通さない冷たい空気の層を通過し、そこでCO2+などのイオンによって、さらに水素原子と酸素原子に分解され、軽くなって宇宙空間に飛び去って行くと考えられてきました。
NASAの火星周回探査機“メイブン”のイメージ図。火星の上層大気と太陽風の相互作用などを調べている。(Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center)
NASAの火星周回探査機“メイブン”のイメージ図。火星の上層大気と太陽風の相互作用などを調べている。(Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center)
2013年11月19日、ケープ・カナベラル空軍基地からアトラスVロケットに搭載された火星探査機“メイブン”が打ち上げられました。

“メイブン”は火星を周回する探査機で、NASAのゴダード宇宙飛行センターが主導する初の火星探査ミッション。
ロッキード・マーティン社が製造を担当し、かつて同社が製造した“2001マーズ・オデッセイ”や“マーズ・リコネサンス・オービター”の設計を基に造られています。

“メイブン”に搭載されているのは、火星の上層大気を中心に観測することを目的とした8種類の観測機器。
それにより火星の大気と太陽風の相互作用や、火星大気の宇宙空間への流出過程についての解明が期待されています。

今回の研究では、NASAの火星周回探査機“メイブン”の観測データの分析から、これまでのプロセスに加えて、もう一つ別の水蒸気が分解されるプロセスがあることを突き止めています。

それは、水蒸気を通さないはずの冷たい空気の層の上で、水蒸気がイオンによって、直接、水素原子と酸素原子に分解されるというもの。
そのため水蒸気は、より下層で分解される場合の10倍もの速さで分解されるそうです。

特に、火星の夏によくみられる火星名物の砂嵐が発生すると、このプロセスは激しさを増すんですねー

では、なぜ水蒸気は冷たい空気の層の上に出られたのでしょうか?

その理由は、砂嵐が発生すると気温が上昇することにあります。
気温の上昇により急激に水蒸気が発生する上に、このような気温の上昇と砂嵐の風の力があいまって、水蒸気を通さないはずの冷たい空気の層を大量の水蒸気が突破することになります。

そのため、2018年6月に起こった全火星規模の砂嵐では、この領域で通常の20倍もの水蒸気が観測されることに。
研究チームによれば、この砂嵐が続いた45日間で失われた水は、火星の1年間(地球の687日に相当)に失われる水の量と同等だと推定しています。

現在、研究チームが考えているのは、火星から水が失われていくプロセスとしては、こちらの方が支配的だったということ。
それでは、太古の火星から水が失われていく過程で、このプロセスは実際にどの程度の役割を果たしたのでしょうか?
また、このプロセスが始まった時期はいつなのでしょうか?

まだまだ分からないことがいくつもあるので、さらに研究を進めていくそうですよ。
研究チームのシナリオを分かり易く解説したイラスト。(Credit: NASA/Goddard/CI Lab/Adriana Manrique Gutierrez/Krystofer Kim)
研究チームのシナリオを分かり易く解説したイラスト。(Credit: NASA/Goddard/CI Lab/Adriana Manrique Gutierrez/Krystofer Kim)


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