宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

観測を始めたジェームズウェッブ宇宙望遠鏡で初めて系外惑星を発見! 41光年彼方の赤色矮星を公転する地球サイズの惑星

2023年02月04日 | 地球外生命っているの? 第2の地球は?
今回、アメリカ天文学会第241回号で発表されたのは、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡を使って地球とほぼ同じ大きさの太陽系外惑星を確認したという研究でした。
系外惑星の存在が、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡の観測で確認されたのは、今回が初めてのこと。
2022年の夏から本格的に稼働を開始したばかりなので、今後はもっと多くの地球に似た岩石惑星が見つかるはずです。
 今回の研究を進めているのは、ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所のJacob Lustig-YaegerさんとKevin Stevensonさんが率いる研究チームです。
赤色矮星“LHS 475”(奥)を公転する太陽系外惑星“LHS 475 b”(手前)のイメージ図。(Credit: Illustration: NASA, ESA, CSA, Leah Hustak (STScI))
赤色矮星“LHS 475”(奥)を公転する太陽系外惑星“LHS 475 b”(手前)のイメージ図。(Credit: Illustration: NASA, ESA, CSA, Leah Hustak (STScI))

系外惑星が主星の手前を通過する現象で分かること

今回、研究チームが発表した系外惑星は、南天の“はちぶんぎ座”の方向約41光年彼方に位置する惑星“LHS 475 b”。
“LHS 475 b”の直径は地球の99%で、主星である赤色矮星“LHS 475 b”を約2日間周期で公転していることが確認されています。

地球から見て、惑星“LHS 475 b”は主星“LHS 475 ”の手前を通過“トランジット”を定期的に起こしています。

“トランジット”の間は惑星が主星の一部を隠すので、主星の明るさはほんの少しだけ暗くなるんですねー
このときに見られる、わずかな減光や光のスペクトル(光の波長ごとの強さ)を詳しく調べることで、系外惑星の直径や公転周期、大気の有無や化学組成といった情報を得ることができます。

研究チームでは、“トランジット”を利用して系外惑星を検出するNASAの系外惑星探査衛星“TESS”の観測データを慎重に検討。
 系外惑星探査衛星“TESS”が狙うのは、地球からおよそ300光年以内にあり、恒星の明るさによって大気が照らされている惑星。調査する恒星の多くはM型矮星という銀河系に最も多いタイプで、私たちの太陽よりも小さくて暗い恒星。
その結果、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡による観測の対象として選んだのが“LHS 475”でした。
ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線分光器“NIRSpec”で検出された“LHS 475 b”によるトラジッととその前後の光度曲線。紫の点は観測データ、オレンジの線は最も適合したモデルを示す。(Credit: Illustration: NASA, ESA, CSA, Leah Hustak (STScI); Science: Kevin B. Stevenson (APL), Jacob A. Lustig-Yaeger (APL), Erin M. May (APL), Guangwei Fu (JHU), Sarah E. Moran (University of Arizona))
ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線分光器“NIRSpec”で検出された“LHS 475 b”によるトラジッととその前後の光度曲線。紫の点は観測データ、オレンジの線は最も適合したモデルを示す。(Credit: Illustration: NASA, ESA, CSA, Leah Hustak (STScI); Science: Kevin B. Stevenson (APL), Jacob A. Lustig-Yaeger (APL), Erin M. May (APL), Guangwei Fu (JHU), Sarah E. Moran (University of Arizona))
上の画像に示されているのは、“LHS 475 b”がトランジットを起こした時の“LHS 475”の明るさの変化を明確にとらえたもの。
ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線分光器“NTRSpec”の観測データ(紫色)で、2022年8月31日に行われた観測の際に取得されたものです。
このデータから、系外惑星の直径や公転周期を知ることができます。

また、系外惑星が主星の手前を通過している時に主星のスペクトルを得る分光観測を行うことで、惑星の大気にどのような物質が存在するのかを知ることができます。
 個々の元素は決まった波長の光を吸収する性質があるので、その波長での光の強度が弱まり吸収線として観測される。このスペクトルに見られる吸収線を調べることで、元素の種類を直接特定することができる。
下の画像には、“LHS 475 b”の透過スペクトル(系外惑星の大気を通過してきた主星の光のスペクトル)の取得結果が示されています。
ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線分光器“NIRSpec”で検出された“LHS 475 b”の透過スペクトル。白の点は観測データを示し、線は緑がメタンの大気を想定したモデル、オレンジは大気ない場合を想定したモデル、紫は二酸化炭素の大気を想定したモデルを示す。(Credit: Illustration: NASA, ESA, CSA, Leah Hustak (STScI); Science: Kevin B. Stevenson (APL), Jacob A. Lustig-Yaeger (APL), Erin M. May (APL), Guangwei Fu (JHU), Sarah E. Moran (University of Arizona))
ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線分光器“NIRSpec”で検出された“LHS 475 b”の透過スペクトル。白の点は観測データを示し、線は緑がメタンの大気を想定したモデル、オレンジは大気ない場合を想定したモデル、紫は二酸化炭素の大気を想定したモデルを示す。(Credit: Illustration: NASA, ESA, CSA, Leah Hustak (STScI); Science: Kevin B. Stevenson (APL), Jacob A. Lustig-Yaeger (APL), Erin M. May (APL), Guangwei Fu (JHU), Sarah E. Moran (University of Arizona))
発表の時点で“LHS 475 b”の大気の有無や化学組成について結論は出ていません。
少なくとも土星の衛星“タイタン”のようにメタンを主成分とする厚い大気は存在しないと見られています。

ただ、火星のように二酸化炭素を主成分とする大気は薄いので検出するのが難しくなり、大気が存在しない場合と区別しにくくなるんですねー
研究チームでは、さらに詳しいデータを得るため2023年夏に追加観測を行う予定です。

さらに、これまでに得られたデータから示されているのは、“LHS 475 b”の表面温度が地球と比べて摂氏200~300度ほど高いこと。
もし、二酸化炭素の大気と雲の存在が検出されれば、金星に似た惑星だと結論付けられる可能性もあります。

ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡の観測データを元にした“LHS 475 b”の観測は、まだほんの始まりにすぎません。

これまでは観測手法の制約もあって、主な研究の対象になっていたのは巨大ガス惑星でした。
でも、今回の成果が示していたのは、より小さな系外惑星を特定できるジェームズウェッブ宇宙望遠鏡の高い精度と解像度でした。
ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡を使った観測により、今後はもっと多くの岩石惑星が見つかるはずですよ。


こちらの記事もどうぞ