宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

太陽が二つあると惑星の形成環境や性質はどう変わるの? とりあえず惑星の軌道面は影響を受けるようですよ。

2020年04月13日 | 星が生まれる場所 “原始惑星系円盤”
私たちの住む太陽系には恒星は1つしかありませんが、意外なことに恒星の多くは2つ以上で一緒に生まれ、互いの周りを回る“連星”を形成しているんですねー
今回は、誕生したばかりの連星を取り巻くチリとガスの円盤“原始惑星系円盤”のお話し。
新たな性質が分かってきたようです。

恒星の多くは2つ以上で一緒に生まれている

過去20年余りにわたって数多く発見されてきた太陽以外の恒星を回る惑星“系外惑星”。

その中には、映画スターウォーズでルーク・スカイウォーカーの故郷として描かれた架空の惑星“タトゥイーン”のように、連星の周りを回るものあります。

私たちが住む太陽系には、恒星は太陽1つしかありません。
でも、意外なことに恒星の多くは2つ以上で一緒に生まれ、互いの周りを回る“連星”を形成しているんですねー
こうした惑星では、空を見上げると2つ以上の太陽が見えるはずです。
太陽が2つある惑星から見た光景(イメージ図)。(Credit: NRAO/AUI/NSF, S. Dagnello)
太陽が2つある惑星から見た光景(イメージ図)。(Credit: NRAO/AUI/NSF, S. Dagnello)

連星系の軌道面と“周惑星系円盤”の傾き

惑星は、一般的に若い恒星を取り巻くチリとガスの円盤“原始惑星系円盤”の中で作られます。
  原始惑星系円盤とは、誕生したばかりの恒星の周りに広がるガスやチリからなる円盤状の構造。恒星の形成や、円盤の中で誕生する惑星の研究対象とされている。

これまでに観測された“原始惑星系円盤”の多くは単独の恒星を取り巻くものでした。

一方、連星を取り巻く“原始惑星系円盤”は“周連星系円盤”といいます。
アルマ望遠鏡はこの“周連星系円盤”の観測も行ってきました。

2つ以上の恒星が存在するという多様な環境で、惑星はどのように形成されるのか?
このことを理解するのに“周連星系円盤”を観測することは重要なことだからです。

これまでの観測から見つかっているのは、波打つようにゆがんだ“周連星系円盤”や連星の軌道面に対して傾いた“周連星系円盤”など。
極端な場合では、連星の軌道と“周連星系円盤”が、ほぼ直角に交わっているものも発見されています。

この“周連星系円盤”の典型的な特徴を知るため、研究を行っているのがカリフォルニア大学バークレー校のチームがです。
研究では、アルマ望遠鏡が観測した19個の“周連星系円盤”のデータを活用し、連星の軌道と“周連星系円盤”の傾きについて分析しています。
  高い解像度を持つアルマ望遠鏡は、これまで観測された中で最も小さく暗い“周惑星系円盤”を観測するのに適している。

その結果、連星系の軌道周期が短い、つまり恒星同士が近づいているものほど、連星系の軌道と“周連星系円盤”の向きがよく一致していることが分かります。

逆に、軌道周期が長い連星系(恒星間の間隔が大きな連星系)では、“周連星系円盤”は連星系の軌道面から大きく傾いていました。
アルマ望遠鏡で観測された“周連星系円盤”の例。観測画像の左下は連星の軌道を示している。(左)コップ座の“HD 98800 B”と呼ばれる連星系(軌道周期は315日)。中央にある連星系の軌道面と円盤面が一致していない。(右)“さそり座AK星”と呼ばれる連星系(軌道周期は13.6日)。連星系の軌道面と円盤の傾きが一致している。(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), I. Czekala and G. Kennedy; NRAO/AUI/NSF, S. Dagnello)
アルマ望遠鏡で観測された“周連星系円盤”の例。観測画像の左下は連星の軌道を示している。(左)コップ座の“HD 98800 B”と呼ばれる連星系(軌道周期は315日)。中央にある連星系の軌道面と円盤面が一致していない。(右)“さそり座AK星”と呼ばれる連星系(軌道周期は13.6日)。連星系の軌道面と円盤の傾きが一致している。(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), I. Czekala and G. Kennedy; NRAO/AUI/NSF, S. Dagnello)

連星を回る惑星の軌道面との比較

さらに、研究チームでは、この結果をNASAの系外惑星探査衛星“ケプラー”の観測と比較しています。

“ケプラー”は連星系を回る惑星も発見しています。
でも、定常観測期間が4年間に限られていたので、軌道周期が40日以内の小さな連星系ばかり…
ただ、発見した連星系の系外惑星は、すべて軌道面が連星系と一致していました。
  “ケプラー”は地球から見て系外惑星が主星の手前を通過するときに見られる、わずかな減光から惑星の存在を探る。連星系が大きい場合、その周りを回る惑星の軌道周期も長くなり、観測期間中に惑星の兆候をとらえるのが難しくなる。

そう、軌道周期が短い連星系を回る“周連星系円盤”と“ケプラー”によって連星系の周りに発見された惑星の性質がよく一致していたんですねー
この一致により、“ケプラー”が見逃してしまうような大きく軌道の傾いた惑星は、さほど多くはないと研究チームは考えています。

今回の研究から分かってきたのは、間隔の大きな連星系には、軌道の大きく傾いた惑星が存在しうること。
このような惑星は、直接撮像や重力レンズ効果を使った方法などによって発見が期待できそうです。
  重力レンズ効果とは、恒星や銀河などが発する光が、途中にある天体などの重力がレンズのような役割を果たすことで、曲げられたり、その結果として複数の経路を通過することにより、恒星や銀河が発した光の像が複数に見える現象。

研究チームが考えているのは、小さな連星系において連星系の軌道面と“周連星系円盤”の傾きが一致している理由。
それには、アルマ望遠鏡や現在構想中の次世代電波望遠鏡“ngVLA”による詳細な観測が必要なようです。

円盤の構造をこれまでにないほど詳しく調べることができれば、円盤のねじれや傾きが、惑星の形成環境にどのような影響を及ぼすのか? その中で作られる惑星の性質にどう影響するのか? が明らかになってくるはずです。


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