エヴァリー・ブラザーズ。私はケイデンス時代のベスト1枚持ってたのみで、それをよろこんでころこんで、今まで聴いてきたわけですが、それじゃいかんと強く思わされたのはkura_moさんのとこのエヴァリーズに対する熱い想いを読んでから。なんたって彼は、ケイデンス時代(1958~1960)、ワーナー・ブラザーズ時代(1960-1972)、はたまた80年代のマーキュリー時代に至るまで、コンプリートされているんですから!!その情熱たるや、全く持って敬服なのです。
それからエヴァリーズのワーナー時代というものを意識しだして、聴きたいなぁって思ってたんですよね。
そして、昨年の暮れ。ミナミに出た際、立ち寄った中古屋さんでバッタリ遭遇したのがこのワーナー時代の最期を飾る『Roots』のCDです。このジャケットと目が合った時の嬉しさと言ったら!小躍りしながら帰りました(笑)
で、家に帰って色々見てみると、このアルバム、普通にHMV通販とかでも買えるんですね。しかも中古よりお安く・・・。知りませんでした。でもいいの。出逢い方、縁の方が大切ですから。あの、お店での嬉しさを私は決して忘れない(笑)
そして中身を聴いてみると、これまたサプライズがありました。私は中身のこと事前に何も知らなくて、漠然と ”ルーツ” という言葉から想起されるような音を想像していたのです。でもある意味違いましたね。
これ、バーバンク陣営が脇を固めている、一種のコンセプト・アルバムなんですね。日本盤ライナーを読んで面白いなぁって思ったのですけど、このアルバムはワーナーのカタログで、あのヴァン・ダイク・パークス『Song Cycle』とハーパース・ビザール『The Secret Life of Harpers Bizarre』と、ほぼ同じサウンド、プロダクションのもとで立て続けに制作されている、んですね。そっかぁ。ジャンルとしてもカントリー・ロックじゃなくて、ソフト・ロックの方だったんですね。どっちも大好物なので、どちらでも嬉しいのですが(笑)
私は『Song Cycle』は未聴なのですが、確かに『The Secret Life of Harpers Bizarre』と、コンセプト、テイストは同じものを感じます。両作品のプロデューサーであるレニー・ワーロンカー印とでも言いますか。けれども決定的に違うのは、ハーパース作があくまで擬似的に20世紀前半のアメリカの、中でも特にエンターテインメント文化に思いを馳せて、完全に擬似的に作り込まれていた(ハーパースというグループ自体がそうですね)のに対し、こちらのエヴァリーズは、本当にその時代にキャリアを持っている人たち、モノホンなわけです。ルーツを探るコンセプト・アルバムとして、昔のラジオ番組の音などが所々挟まれるのですが、そのSEと言えるものが実は彼らの父がやっていたという、ラジオ番組の52年の実況録音で、子供の時の彼らの唄がそのまま使われていたりするのです。
アルバムの裏ジャケに、このアルバムにぴったしの写真がいくつも載っています。それはそのラジオ音源で聴けるような子供時代の2人の幸福な思い出の写真。2人が雪合戦しているものや、犬小屋の前で犬と一緒に写っているもの。でも一番多いのはお揃いのウェスタンルックにその小さい身を包みギターを抱えているもの。小さいときから2人で芸能活動をしていたのですね。当時の写真がずらーっと並べられているのを見ていると、ノスタルジーだけでは決して終わらない、なにか1つの小宇宙が形成されていると思ってしまいます。ここに、私の好きなアメリカがあります。そしてその「音」版が、言うまでもなくこのアルバムなのですね。バーバンクによって、ひとヒネリもふたヒネリも加えられて。
分かりにくいですよね。コレが裏ジャケなのですけど・・・
そんな訳でハーパースはもちろん大好きなのですが、それはもう全然キャリアが、格が違うっていうもので。
けれども時代の波はこのアルバムが出た当時、エヴァリーズの方にはもうそれほど来ていなかったハズで。
こうなると、バーバンクにエヴァリーズが遊ばれているのか、いや、エヴァリーズがバーバンクで遊んでやっているのか、はたまたリスナーが遊ばれているのか、きっと後になるにつれ真実だと思うのですが、頭がぐるんぐるんになってくる面白さがあるのです。
収録曲の作家別としては
マール・ハガード “Mama Tried"、“Sing Me Back Home"
グレン・キャンベル "Less of Me"
ジミー・ロジャース "T for Texas"
ランディ・ニューマン "Illinois"
ロン・エリオット ”Ventura Boulevard”、”Turn Around”
など。アルバム冒頭の “Mama Tried"、 "Less of Me"、"T for Texas" という流れが、ケイデンス時代の、のんびりおだやかなカントリー・テイスト、かつ "T for Texas" ではかつてのファンキーさもあって、最高な流れです。
その次に続くのは何とドンとフィルの作でケイデンス時代のヒット作、"I Wonder If I Care As Much" という遊び心、そしてシンプルなラブ・ソングだったのが、時代の激しい移り変わりの荒波に浸食されたかのような、その荒み具合に泣かされます。イントロが尋常じゃなくカッコイイ!
流麗なピアノが壮快なランディ・ニューマン作の "Illinois" も素晴らしい。
聴いててやっぱりスゴイ!と思うのは、彼らの唄声、なんですよね。いくらバックや作家が優れていても。エヴァリーズのハーモニーは、ソフトロックといった1ジャンルに納まりはせず、聴いているこちらの心にもろに迫って来て、何とも言えない気持ちになります。「優しさ」の魅力?んー、なんだろう、やっぱり言葉では説明できませんね。
全編夢を見てる様な、夢心地になるような、だけどもの哀しさに似た何かが根底にずっと流れているような、不思議な聴後感がするアルバム。この先もそれを味わいたくて、表ジャケより的確にこのアルバムを表している裏ジャケを眺めながら、この音が連れて行ってくれる旅に、想いを馳せていきたいのです。
それからエヴァリーズのワーナー時代というものを意識しだして、聴きたいなぁって思ってたんですよね。
そして、昨年の暮れ。ミナミに出た際、立ち寄った中古屋さんでバッタリ遭遇したのがこのワーナー時代の最期を飾る『Roots』のCDです。このジャケットと目が合った時の嬉しさと言ったら!小躍りしながら帰りました(笑)
で、家に帰って色々見てみると、このアルバム、普通にHMV通販とかでも買えるんですね。しかも中古よりお安く・・・。知りませんでした。でもいいの。出逢い方、縁の方が大切ですから。あの、お店での嬉しさを私は決して忘れない(笑)
そして中身を聴いてみると、これまたサプライズがありました。私は中身のこと事前に何も知らなくて、漠然と ”ルーツ” という言葉から想起されるような音を想像していたのです。でもある意味違いましたね。
これ、バーバンク陣営が脇を固めている、一種のコンセプト・アルバムなんですね。日本盤ライナーを読んで面白いなぁって思ったのですけど、このアルバムはワーナーのカタログで、あのヴァン・ダイク・パークス『Song Cycle』とハーパース・ビザール『The Secret Life of Harpers Bizarre』と、ほぼ同じサウンド、プロダクションのもとで立て続けに制作されている、んですね。そっかぁ。ジャンルとしてもカントリー・ロックじゃなくて、ソフト・ロックの方だったんですね。どっちも大好物なので、どちらでも嬉しいのですが(笑)
私は『Song Cycle』は未聴なのですが、確かに『The Secret Life of Harpers Bizarre』と、コンセプト、テイストは同じものを感じます。両作品のプロデューサーであるレニー・ワーロンカー印とでも言いますか。けれども決定的に違うのは、ハーパース作があくまで擬似的に20世紀前半のアメリカの、中でも特にエンターテインメント文化に思いを馳せて、完全に擬似的に作り込まれていた(ハーパースというグループ自体がそうですね)のに対し、こちらのエヴァリーズは、本当にその時代にキャリアを持っている人たち、モノホンなわけです。ルーツを探るコンセプト・アルバムとして、昔のラジオ番組の音などが所々挟まれるのですが、そのSEと言えるものが実は彼らの父がやっていたという、ラジオ番組の52年の実況録音で、子供の時の彼らの唄がそのまま使われていたりするのです。
アルバムの裏ジャケに、このアルバムにぴったしの写真がいくつも載っています。それはそのラジオ音源で聴けるような子供時代の2人の幸福な思い出の写真。2人が雪合戦しているものや、犬小屋の前で犬と一緒に写っているもの。でも一番多いのはお揃いのウェスタンルックにその小さい身を包みギターを抱えているもの。小さいときから2人で芸能活動をしていたのですね。当時の写真がずらーっと並べられているのを見ていると、ノスタルジーだけでは決して終わらない、なにか1つの小宇宙が形成されていると思ってしまいます。ここに、私の好きなアメリカがあります。そしてその「音」版が、言うまでもなくこのアルバムなのですね。バーバンクによって、ひとヒネリもふたヒネリも加えられて。
分かりにくいですよね。コレが裏ジャケなのですけど・・・
そんな訳でハーパースはもちろん大好きなのですが、それはもう全然キャリアが、格が違うっていうもので。
けれども時代の波はこのアルバムが出た当時、エヴァリーズの方にはもうそれほど来ていなかったハズで。
こうなると、バーバンクにエヴァリーズが遊ばれているのか、いや、エヴァリーズがバーバンクで遊んでやっているのか、はたまたリスナーが遊ばれているのか、きっと後になるにつれ真実だと思うのですが、頭がぐるんぐるんになってくる面白さがあるのです。
収録曲の作家別としては
マール・ハガード “Mama Tried"、“Sing Me Back Home"
グレン・キャンベル "Less of Me"
ジミー・ロジャース "T for Texas"
ランディ・ニューマン "Illinois"
ロン・エリオット ”Ventura Boulevard”、”Turn Around”
など。アルバム冒頭の “Mama Tried"、 "Less of Me"、"T for Texas" という流れが、ケイデンス時代の、のんびりおだやかなカントリー・テイスト、かつ "T for Texas" ではかつてのファンキーさもあって、最高な流れです。
その次に続くのは何とドンとフィルの作でケイデンス時代のヒット作、"I Wonder If I Care As Much" という遊び心、そしてシンプルなラブ・ソングだったのが、時代の激しい移り変わりの荒波に浸食されたかのような、その荒み具合に泣かされます。イントロが尋常じゃなくカッコイイ!
流麗なピアノが壮快なランディ・ニューマン作の "Illinois" も素晴らしい。
聴いててやっぱりスゴイ!と思うのは、彼らの唄声、なんですよね。いくらバックや作家が優れていても。エヴァリーズのハーモニーは、ソフトロックといった1ジャンルに納まりはせず、聴いているこちらの心にもろに迫って来て、何とも言えない気持ちになります。「優しさ」の魅力?んー、なんだろう、やっぱり言葉では説明できませんね。
全編夢を見てる様な、夢心地になるような、だけどもの哀しさに似た何かが根底にずっと流れているような、不思議な聴後感がするアルバム。この先もそれを味わいたくて、表ジャケより的確にこのアルバムを表している裏ジャケを眺めながら、この音が連れて行ってくれる旅に、想いを馳せていきたいのです。