5月中旬の3連休にイタリア・ピエモンテ州のBaroloに家族で小旅行に行ってきた。
バローロの村
事前に旅行計画を練っている時に、ミシュラン・ガイドに良さげな民宿Ca' San Ponzioがあったので、メールで予約可能か照会すると、OKとの連絡とともに、「滞在が楽しいものになるように近くのレストランやワイン造り手訪問のアポ取りもお手伝いしますから遠慮なく言ってください」との返事がきた。
そこで、アポ取りが可能な例として挙げられていた2つの造り手のどちらか1つをとお願いすると、間を置かずG.D.Vajraとのアポを取ったとの連絡があった。
到着してみるとそこは歩いていける距離(200メートルくらい)の、民宿から一番近所のワインの造り手だった。
民宿の部屋からG.D.Vajraの建物と畑が一望できる
自分が持っているイタリアワイン・ガイドには名前こそ載っていたものの、その民宿に置いてあった何冊ものワイン・ガイドを見てはじめて、この造り手がものすごく評価されている造り手であることを知った。
日本にも輸入されており、造り手自身も5年ほど前に日本に行っているようだ。
宿泊した民宿に話を戻すと、地下にちょっとしたワイン・カーブがあり、数種類の造り手のワインを宿泊客がグラス単位やボトルで飲めるようになっている。
グラスやボトル単位で飲んだら自分で手帳にその旨を書き込んでおいて、チェックアウトの際にまとめて清算するシステムだ。
もちろんお土産として購入して持ち帰ることも出来る。
宿泊客はみな思い思いにワインをグラスに注いで、庭に出てリクライニング・チェアでくつろいでいる。
夕方、ワインを楽しんでいる人にチーズ、オリーブとパンを切った皿を民宿のお兄さんが気を利かせてサービスしてくれた。
庭でちょっと会話を交わしたフランス人家族や、男ばかり10人のフランス人グループの旅行の目当てはやはり造り手訪問のようで、「どこの造り手のワインが好きか」、「どこを訪問するのか」なんてことを聞きあって、「それは正解だ」、「おれもあそこが好きだ」、「ところでこの造り手は知っているか」なんてことを言い合っている。そうした会話の中でも、幸いこのG.D.Vajraの訪問はなかなかの選択だったらしい。(とってくれた民宿のお兄さんに感謝!)
さて、そのG.D.Vajraに到着すると、造り手の奥さんらしき女性が我々を出迎えてくれた。
まずは、収穫した葡萄を発酵させるステンレス桶やワインを熟成させる樽貯蔵庫を案内してもらいながら、ワイン造りの方針について説明してもらう。
G.D.Vajraのカーヴ
興味深いのは、ここでは樽熟成の目的は樽香をつけることではなく、木の樽でゆっくり酸化させることということだ。
バローロは3年近く樽の中で熟成させるが、そのためにフランスで使う小樽でなく大きな樽(5000リットルや2500リットルの大樽)、しかも何年も使用している樽を使用する。
小樽も置いてはいるが、これは大樽のワインが蒸発によって液面が下がる(1割は蒸発してしまうらしい。)際の補填用のワインを入れておくものらしい。
小樽を使用しない理由は、バローロワインの葡萄ネッビオーロ種はそれ自体ものすごくタンニン等が強いので、これ以上樽の力を借りる必要はなく、むしろ木の樽の中でゆっくり熟成(酸化)させて葡萄本来の味と香りを維持することが偉大なワインを造る道ということだ。
一通りの説明が終わった後、テースティング・ルームでいくつか試飲させていただいた。
1.まずは白のLanghe Bianco 2008。
このあたりでは珍しいアルザスの葡萄Riesling100%のワインで、結構有名なワインのようだ。
たくさん日光を浴びたリースリングという感じ。フルボディでアルコール度も高い。
2.Dolcetto d'Alba 2009
新鮮な黒い果実の香り。若くして飲めるワインとして地元でも人気の葡萄だそうだ。
3.Dolcetto d'Alba Coste&fossati 2008
一つ前のワインとは一味違った、しっかりとした品のあるワイン。
4.Langhe Freisa Kye 2006
本当はバローロを名乗れるが、葡萄の木が若いために、3年近くも樽熟成するよりも格下の呼称にすることで樽熟成の期間を短縮し、フレッシュさを打ち出した方がこのワインが生きる、との判断の下でこの名称になったワイン。
その意図は成功しているのではないかと思わせる、ネッビオーロらしい重量感があると同時に新鮮さがあるワイン。
5.Barolo Albe 2005
偉大なワインは地域・国を超えて似てくる傾向があると思うが、ネッビオーロの特徴である細かなタンニンと独特の風味を維持しつつ、ブルゴーニュの優良なワインと全体の印象が似たワイン。
香りが非常に繊細で、口に含んだときのタンニンの収斂性が非常に心地よい。これは実に美味しかった。
6.Moscato d'Alba 2009
強い赤ワインでテースティングを終えるよりもこれで締めた方が心地よいのでといって、最後にお口直しとして飲ませてくれた微発泡甘口白ワイン。
アルコール度数はビールとほぼ同じ5.5%で、マスカットの美味しい香りと味が満喫できる。デザートの生苺にそのままかけても美味しいと思う。
強い赤ワインのあとにほっと一息つける感じがした。
ここでは残念ながら飲ませていただけなかったが、ここの看板ワインであるBarolo Bricco delle Viole 2005をせっかくなので購入して帰った。
失礼する際に、ご主人が出てきて挨拶してくれた。
まだ30代と思われる若手の当主だ。
あなたのワインは素晴らしいというと、次の答えが返ってきた。
「ワイン造りは醸造庫の中でなく畑で決まります。
ワインの出来を左右するのは、このピエモンテの自然の恵みとその年の気候であり、人間が介在する部分は必要最小限であるべきです。」
そう、これがこの造り手の哲学なのだ。(M)
民宿:Ca'San Ponzio
via Rittane 7 Vergne, Barolo
sanponzio@areacom.it
造り手:G.D.Vajra
via delle Viole 25 Vergne, Barolo
www.gdvajra.it
バローロの村
事前に旅行計画を練っている時に、ミシュラン・ガイドに良さげな民宿Ca' San Ponzioがあったので、メールで予約可能か照会すると、OKとの連絡とともに、「滞在が楽しいものになるように近くのレストランやワイン造り手訪問のアポ取りもお手伝いしますから遠慮なく言ってください」との返事がきた。
そこで、アポ取りが可能な例として挙げられていた2つの造り手のどちらか1つをとお願いすると、間を置かずG.D.Vajraとのアポを取ったとの連絡があった。
到着してみるとそこは歩いていける距離(200メートルくらい)の、民宿から一番近所のワインの造り手だった。
民宿の部屋からG.D.Vajraの建物と畑が一望できる
自分が持っているイタリアワイン・ガイドには名前こそ載っていたものの、その民宿に置いてあった何冊ものワイン・ガイドを見てはじめて、この造り手がものすごく評価されている造り手であることを知った。
日本にも輸入されており、造り手自身も5年ほど前に日本に行っているようだ。
宿泊した民宿に話を戻すと、地下にちょっとしたワイン・カーブがあり、数種類の造り手のワインを宿泊客がグラス単位やボトルで飲めるようになっている。
グラスやボトル単位で飲んだら自分で手帳にその旨を書き込んでおいて、チェックアウトの際にまとめて清算するシステムだ。
もちろんお土産として購入して持ち帰ることも出来る。
宿泊客はみな思い思いにワインをグラスに注いで、庭に出てリクライニング・チェアでくつろいでいる。
夕方、ワインを楽しんでいる人にチーズ、オリーブとパンを切った皿を民宿のお兄さんが気を利かせてサービスしてくれた。
庭でちょっと会話を交わしたフランス人家族や、男ばかり10人のフランス人グループの旅行の目当てはやはり造り手訪問のようで、「どこの造り手のワインが好きか」、「どこを訪問するのか」なんてことを聞きあって、「それは正解だ」、「おれもあそこが好きだ」、「ところでこの造り手は知っているか」なんてことを言い合っている。そうした会話の中でも、幸いこのG.D.Vajraの訪問はなかなかの選択だったらしい。(とってくれた民宿のお兄さんに感謝!)
さて、そのG.D.Vajraに到着すると、造り手の奥さんらしき女性が我々を出迎えてくれた。
まずは、収穫した葡萄を発酵させるステンレス桶やワインを熟成させる樽貯蔵庫を案内してもらいながら、ワイン造りの方針について説明してもらう。
G.D.Vajraのカーヴ
興味深いのは、ここでは樽熟成の目的は樽香をつけることではなく、木の樽でゆっくり酸化させることということだ。
バローロは3年近く樽の中で熟成させるが、そのためにフランスで使う小樽でなく大きな樽(5000リットルや2500リットルの大樽)、しかも何年も使用している樽を使用する。
小樽も置いてはいるが、これは大樽のワインが蒸発によって液面が下がる(1割は蒸発してしまうらしい。)際の補填用のワインを入れておくものらしい。
小樽を使用しない理由は、バローロワインの葡萄ネッビオーロ種はそれ自体ものすごくタンニン等が強いので、これ以上樽の力を借りる必要はなく、むしろ木の樽の中でゆっくり熟成(酸化)させて葡萄本来の味と香りを維持することが偉大なワインを造る道ということだ。
一通りの説明が終わった後、テースティング・ルームでいくつか試飲させていただいた。
1.まずは白のLanghe Bianco 2008。
このあたりでは珍しいアルザスの葡萄Riesling100%のワインで、結構有名なワインのようだ。
たくさん日光を浴びたリースリングという感じ。フルボディでアルコール度も高い。
2.Dolcetto d'Alba 2009
新鮮な黒い果実の香り。若くして飲めるワインとして地元でも人気の葡萄だそうだ。
3.Dolcetto d'Alba Coste&fossati 2008
一つ前のワインとは一味違った、しっかりとした品のあるワイン。
4.Langhe Freisa Kye 2006
本当はバローロを名乗れるが、葡萄の木が若いために、3年近くも樽熟成するよりも格下の呼称にすることで樽熟成の期間を短縮し、フレッシュさを打ち出した方がこのワインが生きる、との判断の下でこの名称になったワイン。
その意図は成功しているのではないかと思わせる、ネッビオーロらしい重量感があると同時に新鮮さがあるワイン。
5.Barolo Albe 2005
偉大なワインは地域・国を超えて似てくる傾向があると思うが、ネッビオーロの特徴である細かなタンニンと独特の風味を維持しつつ、ブルゴーニュの優良なワインと全体の印象が似たワイン。
香りが非常に繊細で、口に含んだときのタンニンの収斂性が非常に心地よい。これは実に美味しかった。
6.Moscato d'Alba 2009
強い赤ワインでテースティングを終えるよりもこれで締めた方が心地よいのでといって、最後にお口直しとして飲ませてくれた微発泡甘口白ワイン。
アルコール度数はビールとほぼ同じ5.5%で、マスカットの美味しい香りと味が満喫できる。デザートの生苺にそのままかけても美味しいと思う。
強い赤ワインのあとにほっと一息つける感じがした。
ここでは残念ながら飲ませていただけなかったが、ここの看板ワインであるBarolo Bricco delle Viole 2005をせっかくなので購入して帰った。
失礼する際に、ご主人が出てきて挨拶してくれた。
まだ30代と思われる若手の当主だ。
あなたのワインは素晴らしいというと、次の答えが返ってきた。
「ワイン造りは醸造庫の中でなく畑で決まります。
ワインの出来を左右するのは、このピエモンテの自然の恵みとその年の気候であり、人間が介在する部分は必要最小限であるべきです。」
そう、これがこの造り手の哲学なのだ。(M)
民宿:Ca'San Ponzio
via Rittane 7 Vergne, Barolo
sanponzio@areacom.it
造り手:G.D.Vajra
via delle Viole 25 Vergne, Barolo
www.gdvajra.it
試飲したバローロはどちらかというと繊細な感じでしたが、やはりタンニンが充実してました。もしかしたら、まだ若すぎると思いながら試飲したから意外と繊細だと感じたのかもしれません。
リースリングは仰るように、きりっとした酸というよりは確かにべたっとした感じです。葡萄の特徴は出ていますが、アルザスのリースリングとは別物です。面白いし、美味しいけど、購入はしませんでした。
一度、いかれてはいかがでしょうか。