「根っこ(Racines)」という名のワインをブルゴーニュのビオレストランで購入した話は以前紹介した(ここです)。
ロワール地方の中でもソローニュというワインの産地としてはあまり有名でない地域の造り手だが、ビオワイン愛好家の中では有名なワインである。
造り手であるクロード・クルトワという人物には私は実際には会ったことがないが、写真で見る限りでは風変わりな人物だ。
造り手が自分で描いたのだろうか。
パリにいるときにビオワインを売りにする11区のレストランで初めてこのワインを飲んだ時のことは今も覚えている。
100年を超える樹齢の木から造られるビオワインだと何かで読んだが人から聞いていた(その真偽は定かでない。むしろ、同じLes Cailloux du Paradisの白ワインQuartz用のsauvignonのぶどうが相当古いようだ。)このワインがリストに載っているのを見つけて注文したら、店の人が「あなたはこのワインを飲んだことがあるか。」と聞いてきた。
正直に「ない」と答えると「ちょっと独特のワインだから驚かないでください。」との忠告である。
もしそのときビビって注文するのをやめていたら、ビオワインの魅力に気付くのはもう少し遅れていたかもしれない。
そのときのワインの記憶は、「色は薄いが味が濃く、抜栓後ものすごい勢いで香りと味が変化した」ということである。
今にして思うと、そのワインがほどよく熟成していたからかもしれない。しかし、普通の熟成したワインとは明らかに異なる変化の仕方だった。
それからというもの、ワイン屋やレストランでこのワインを探してきたが、なかなか見つけることができなかった。
先日ブルゴーニュで購入した6本のうちすでに4本を飲んでしまっているが、何回飲んでも面白い。
酸化防止剤の亜硫酸を使わない代わりに発酵時の微炭酸を瓶中に残す手法をとっているために、はじめはすりリンゴのような香りがするし、微炭酸からくると思われる酸味が感じられるので、グラスをまわして微炭酸を飛ばし、さらにゆっくり空気に触れさせてみる。
次第に、ワインが変化するのと、口の方がワインに慣れてくるために、酸味がほとんど気にならなくなり、その代わりにタンニンと渋みと収斂性の方をより感じるようになる。
そして、長い年月をかけてしっかり地面に張りめぐらさせた根っこで様々な地層のミネラルを吸い上げたからこそ得られると思われる複雑な味と繊細な香りが少しずつ感じられるようになる。
そう、これがこの「根っこ」ワインの底力だ。
この2007年はまだ若いために、抜栓後どんどん変化はするのだが、どこまでいっても硬く閉じた感じが残る。
翌日に飲んだ方が、こなれた落ち着いた感じになり、飲みやすく感じられるくらいだ。
AOCを名乗らないテーブルワインなので収穫年は表記できない代わりに、裏のラベルのLt 07-3という数字で収穫年を確認することができる。
こうしたワインが日本円にして約2千円足らずで手に入ることが、フランスワインの裾野の広さと底力を証明していると思うし、このワインがしばらく前から日本でも入手できるということが、日本のワイン愛好家の好奇心の強さを物語っているように思う。(M)
ロワール地方の中でもソローニュというワインの産地としてはあまり有名でない地域の造り手だが、ビオワイン愛好家の中では有名なワインである。
造り手であるクロード・クルトワという人物には私は実際には会ったことがないが、写真で見る限りでは風変わりな人物だ。
造り手が自分で描いたのだろうか。
パリにいるときにビオワインを売りにする11区のレストランで初めてこのワインを飲んだ時のことは今も覚えている。
100年を超える樹齢の木から造られるビオワインだと何かで読んだが人から聞いていた(その真偽は定かでない。むしろ、同じLes Cailloux du Paradisの白ワインQuartz用のsauvignonのぶどうが相当古いようだ。)このワインがリストに載っているのを見つけて注文したら、店の人が「あなたはこのワインを飲んだことがあるか。」と聞いてきた。
正直に「ない」と答えると「ちょっと独特のワインだから驚かないでください。」との忠告である。
もしそのときビビって注文するのをやめていたら、ビオワインの魅力に気付くのはもう少し遅れていたかもしれない。
そのときのワインの記憶は、「色は薄いが味が濃く、抜栓後ものすごい勢いで香りと味が変化した」ということである。
今にして思うと、そのワインがほどよく熟成していたからかもしれない。しかし、普通の熟成したワインとは明らかに異なる変化の仕方だった。
それからというもの、ワイン屋やレストランでこのワインを探してきたが、なかなか見つけることができなかった。
先日ブルゴーニュで購入した6本のうちすでに4本を飲んでしまっているが、何回飲んでも面白い。
酸化防止剤の亜硫酸を使わない代わりに発酵時の微炭酸を瓶中に残す手法をとっているために、はじめはすりリンゴのような香りがするし、微炭酸からくると思われる酸味が感じられるので、グラスをまわして微炭酸を飛ばし、さらにゆっくり空気に触れさせてみる。
次第に、ワインが変化するのと、口の方がワインに慣れてくるために、酸味がほとんど気にならなくなり、その代わりにタンニンと渋みと収斂性の方をより感じるようになる。
そして、長い年月をかけてしっかり地面に張りめぐらさせた根っこで様々な地層のミネラルを吸い上げたからこそ得られると思われる複雑な味と繊細な香りが少しずつ感じられるようになる。
そう、これがこの「根っこ」ワインの底力だ。
この2007年はまだ若いために、抜栓後どんどん変化はするのだが、どこまでいっても硬く閉じた感じが残る。
翌日に飲んだ方が、こなれた落ち着いた感じになり、飲みやすく感じられるくらいだ。
AOCを名乗らないテーブルワインなので収穫年は表記できない代わりに、裏のラベルのLt 07-3という数字で収穫年を確認することができる。
こうしたワインが日本円にして約2千円足らずで手に入ることが、フランスワインの裾野の広さと底力を証明していると思うし、このワインがしばらく前から日本でも入手できるということが、日本のワイン愛好家の好奇心の強さを物語っているように思う。(M)