ヴェルソワ便り

スイスはジュネーヴのはずれヴェルソワ発、みんみん一家のつづる手紙。

ボジョレに酔う

2010-12-11 23:06:36 | ワイン(M氏より)
ボジョレ・ヌーボーが解禁になったニュースを見て、久々に美味しいボジョレが飲みたくなった。

ジュネーブ近郊のフランスの街にあるワイン屋でルイ・ジャドのムーランナヴァン(Moulin-a-Vent.「風車」という意味。)、Chateau des Jacques, Clos du Grand Carquelin 2006年を見つけたので試してみることにする。

これは元々ムーランナヴァンでは有名だったシャトーを1996年にブルゴーニュの大ネゴシアンであるルイ・ジャド社が畑ごと買い取り、赤ワイン造りが得意な(と私は勝手に思っている。)同社によって立て直されたと言われるワインである。



普通のボジョレにしばしば感じられるストロベリーや甘味料を含む飴(bonbon englais)よりは、プラムのような黒い果実系の香り。

自分は、ボジョレのガメイの特徴はその独特の酸味ではないかと常々思っているが、このワインはそれを基本的には維持しつつも、どちらかといえば充実したミネラル感がその特徴となっている。

良質のボジョレはしばしばブルゴーニュワインにたとえられるが、それは多分にこのミネラル感によるところが大きいのではないか。

また、ミネラル感とともにこの上品なタンニンも特筆すべきであろう。口に含んだときの心地よい収斂性はこのワインが相当程度長持ちするであろうポテンシャルがあることを示している。

収穫年から4年が経過し、それなりに飲み頃になっているのではないかと予想したが、飲むにはまだ若すぎたようだ。

今後、年を重ねることでどのように香りと味が発展するのか楽しみなワインである。


「長熟なボジョレ」といえば、かつてパリからキンシャサに赴任することが決まった時、当時の上司が、私の生まれ年のワインをマルシェで偶然見つけたからといって、私のために催して頂いた上司宅での歓送会が終わった後、客が帰り内輪だけになった時間に開けてくれたのが、ムーランナヴァンだった。

40年前のボジョレだからさすがにもうだめになっているに違いないと、購入した上司夫妻も自分も覚悟したが、開けてみると、嬉しいことに大方の予想を裏切り、そのワインは依然としてその活力を失っておらず、そこにいた皆を驚かせた。

考えてみると、今回飲んだこの2006年のワインは、ちょうどその歓送会の頃に芽吹いた木の葡萄の実から出来たワインということになる。


期せずして、いろんな方にお世話になりながら生きてきたのだということに思いを馳せ、お世話になった方々に感謝しながら、このワインに酔いしれた。(M)

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