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ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展 印象派を魅了した日本の美 (その2)

2014-07-24 21:30:00 | 美術
見てきました

世田谷美術館

会期は2014年6月28日から2014年9月15日。

今年注目の展示でしょう!!
ボストン美術館が所蔵する「ラ・ジャポネーズ」の修復後世界初公開。
19世紀後半から20世紀初頭、西洋では浮世絵をはじめとする日本美術が大流行。
大胆な構図、鮮やかな色彩は、西洋の美意識に根本的な革命をもたらし、ジャポニスムが生まれました。
今回はボストン美術館所蔵の絵画、写真、工芸など約150点の展示。
西洋の芸術家たちが、日本の美術からどのようなものを受け、新たな美を創造したのかを見ていく展示となります。

2回に分けて書いていきます。
第1章から第3章を「その1
第4章から第5章を「その2」
今日は「その2」です。
(「その1」はこちら→「ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展 印象派を魅了した日本の美 (その1)」)

《4.自然》
浮世絵でも多くみられる自然。
これら日本美術からの影響により自然界を参照したモティーフや様式の採用は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて興ったいくつかの主な西洋美術の動向を特徴づけるものでもありました。
特に、応用美術や版画、ポスター・デザイン、そして写真といった新しい分野において、その傾向が見られます。
唯美主義の装飾性、アーツ&クラフト運動では身近な品々へ独創的な形象を。
特にアール・ヌーヴォーでは自然から派生した図像の抽象表現に価値を見出していきました。

一雲斎秀氏「蛸に貝図鐔」
金・銀・赤銅などを薄肉彫と据文像嵌によって波とタコと貝を表しています。
タコのくねっとした感じがなかなか生々しい。。
長い足(腕!?)は裏面にまでつながっています。

ゴーハム社「茶入れ」
小さな茶入れ。
表面に施された細工が面白い。
立体で実の付いた茄子。
そこに蝶やコオロギが寄ってきているのです、。
蓋には小さな蛙。
精巧です。

チャールズ・キャリル・コールマン「つつじと林檎の花のある静物」
チャールズ・キャリル・コールマンは唯美主義の画家。
縦に長い掛け軸のような大きさのカンヴァスに描かれたのは東洋陶磁に活けられたつつじと林檎の花。
すっと背の高いつつじと林檎の花が気品に溢れていてとにかく美しい。
背景の丸紋も似合っています。

三代歌川広重「『百猫画譜』より9図」
猫はさまざまな浮世絵に描かれてきました。
この作品は1878(明治11)年に刊行された画文集「百猫画譜」から9図の挿絵頁のみを抜きだし、スクラップ状にしたもの。
猫の様々な形態が描かれています。

エドゥアール・マネ「猫の逢引」
フランスの美術批評家、シャンフルーリの「猫」という書籍のための広告ポスターとして描かれたもの。
手前に猫が2匹。
白猫と黒猫。
その後ろには屋根と煙突が続いていきます。
猫が影もなく平面的です。

歌川国貞「虎」
身をかがめてうなっているかのような体勢の虎。
鋭いつめと牙をたて、躍動感あります。

ポール=エリー・ランソン「密林の虎」
上の国貞の虎を反転させたかのような構図。
アイリスと草木が踊る背景が異国情緒を感じさせます。
虎はアジアを生息地としてヨーロッパには存在しません。
この動物を描くときに参考となったのはこういった浮世絵たちでした。

歌川広重「名所江戸百景 深川洲崎十万坪」
よく見る「名所江戸百景」
その中でも最も奇想でもっとも謎深いとされている作品。
暗い空からは雪が落ち、鷲が空を覆うように翼を広げています。
その眼下には雪景色。
筑波山が遠くに見え、江戸湾の青が美しい。
気になるのは江戸湾に浮かんでいる桶のようなもの……
深川は江戸時代に埋め立てられて発展した場所。
ですが、そのはずれの洲崎は度々水害に襲われたために人が住めるような場所ではなく、荒涼たる風景が広がっていたそう。
なぜ「名所江戸百景」でそのような場所を描いたのか。
なぜ桶?が浮かんでいるのか。
見れば見るほど面白い作品なのです。

フランク・ウェストン・ベンソン「早朝」
横に長い画面。
水面間際に連なって飛ぶ鳥たちが早朝の光を受けています。
この作品、元は円山応挙の屏風に着想を得ているのでは、とのこと。
構図や連なる鳥、黄金色を基調とした画面など共通点がみられるのだそう。
浮世絵だけではなくて、応挙なども海外に知られていたんですね。

作者不明、日本「型紙 寄せ模様」
型紙とは友禅、ゆかたなどの柄や文様の原版。
様々な文様を集めたものです。
桜や格子模様などとてもおしゃれで素敵です。

ペーター・ベーレンス「睡蓮に蝶」
楕円の中に睡蓮と蝶が描かれています。
中央に白い睡蓮の花。
その周りを睡蓮の葉が取り囲み、蝶が左右対称に2匹配されています。
さらにその周りは水面を漂うあやめの葉に囲まれています。
優美な印象です。

ジスベール・コンバズ ディートリッヒ社「12枚組ポストカード〈四大元素〉より《空気》、《水》、《水》、《火》」
ベルギーの出版社が企画したポストカードのセット。
《空気》は蝶、《水》は滝登りの鯉、もう一つの《水》は高波と月。
《火》は噴火する富士山。
装飾的でとてもおしゃれ。

フランク・ウェストン・ベンソン「銀屏風」
テーブルを覆うのは東洋風の刺繍が施された布。
右側にある壺は中国っぽい印象も。
ガラス皿いっぱいの果物も置かれています。
その後ろには銀屏風。
この銀色がこの作品の色彩を支配しています。

アンリ・マティス「花瓶の花」
とても平面的で不思議な作品。
室内のテーブルの上に置かれた花瓶を描いているのですが、背景と一体となっているかのよう。
花瓶の載せられた小さなテーブルはかろうじて奥行きを感じますが、後ろの窓、壁紙などは一体となっているかのよう。

喜多川歌麿「潮干のつと」
36種類の貝とそれに対応する狂歌を集めた彩色摺絵入りの狂歌本。
上には狂歌、下には様々な貝が描かれています。
様々な貝が描かれたもの。
繊細でとてもきれい。
こういったものも描けるんだなぁ、と。

ジェームズ・アンソール「貝殻のある静物」
東洋風のせんす。
着物の女性描いたカップ。
そして貝殻。
ジェームズ・アンソールの両親は雑貨屋を営んでいました。
そこでは貝殻とともに東洋の工芸品が売られていたため、アンソールにとって身近なものだったのかもしれません。
淡い色彩で優しく描かれています。

ステューベン・ガラス工房 フレデリック・C.カーダー「ブルー・オリーン扇形花瓶」
扇の形をした花瓶。
青い色で、まるで流れる水のよう。
抽象化された蔦と葉のモティーフによる装飾が美しさを増しています。

《5.風景》
自然やその移ろいの中に美を見出す日本人の感覚に魅了されていた西洋の美術家たちに、風景表現における日本の色彩感覚、遠近法、そして光へのアプローチなどは、さらなる発展性を力強く提示するものでした。
ヨーロッパでは形態に合理的な立体感をもたらすために陰影を加えますが、これに対して日本人は色彩の対比を用いたり、形象を反復したり、たとえば富士山など象徴的な場所を描写する際に主要なモティーフとことさらに強調するなどして風景に命を吹き込んでいました。
こうした手法の多くは西洋美術にも取り込まれていくこととなります。

フェリックス・H.ビュオ「かもめのいる港」
ビュオは19世紀後期のフランスにおけるもっとも独創的な版画家の一人。
描かれているのは漁師やボート、かもめで賑わう港の景色。
目を引くのは版の余白。
ここにも船やかもめ、貝などが描かれています。
主体となる画面の完成後、余白に後から別の版を刷り入れているのだそう。
ちょっと幻想的です。

アンリ・ゲラール「日没、オンフルール」
黄色っぽい紙に描かれいてるのはシルエットで表現された船。
水面の動きの表現も素晴らしいです。
陽を描かず、色彩も使わずに、夕日が表現されているとはっきりわかります。

ジェームズ・アボット・マクニール・ホイッスラー「ノクターン」
とても素敵な作品です。
ホイッスラーはジャポニスムを代表するアメリカの画家。
幼少期から父の仕事の関係でサンクトペテルブルグ、ロンドン、ブリストルと外国で育ちます。
1859年に本拠地をパリからロンドンに移してもパリ、ヴェネチアに滞在しました。
日本美術との出会いは60年代と思われます。
展示作品ではないのですが、広重の「名所江戸百景」から想を得たと思われる作品も多数残っています。
この作品はシルエットで描かれた世界。
川には船が浮かび人が一人。
奥には陸地、、建物の影が描かれています。
そこからほんのりもれる明かりも素敵。

ウィリアム・エドワード・ノートン「夜」
霧深い夜の港に停泊する船。
水面には明るい月が反射しています。
ただ、上空にある月自体は描かれておらず、その反射した光から感じ取るのです。
暗い大きな影となった船からはところどころ明かりが漏れ、人の存在を感じます。
幻想的でとても素敵な作品。

ハーマン・ダドリー・マーフィー「アドリア海」
真っ青な海がとても美しい作品。
遠くのほうに小さく船が見えます。
水平線はちょっと曖昧。
あるのは空と海というシンプルさですが、そこがかえって新鮮です。

アーサー・ウェズリー・ダウ「沼地風景」
ここから数点写真です。
写真とジャポニスムとは、となりますが、前衛写真家たちは風景をもっとも主要な題材とした芸術家たち。
ホイッスラーの解釈を通じてジャポニスムを享受していました。
特に浮世絵の大胆な構図が取り入れられたそうです。
この作品は一面沼地を捉えた写真。
静寂が漂います。
青で仕上げられ、浮世絵のベロ藍を連想させます。

アン・W.ブリグマン「聖地」
雄大です。
崖に立つ女性をさらにその上から、まるで鳥の視点からのような作品。

エドワード・ウェストン「花」
写っているのは桜の花。
かわいいくって、ほっこりします。

チャールズ・ハーバート・ウッドベリー「フロリダ海岸沖」
ここからまた絵画です。
描かれているのは波と空のみ。
大きなうねりで勢いがあります。
水の色の変化もきれいに表現されています。

ポール・シニャック「サン=カの港」
点描で描かれているのは砂浜と海、船。
左に大きな空間があり、右には岩肌を覗かせる岬。
これらが形態として単純化されているため、平坦な印象を与えます。

エドヴァルド・ムンク「夏の夜の夢(声)」
連作「生命のフリーズ」の1作。
水面には月の光が長く映りこんでいます。
砂浜には木々のまばらな林があって、白い服の女性が1人こちらを見ています。
少し幽霊なんじゃないかという気もする。。
垂直に立つ木々が妙なリズムを生み出しています。

クロード・モネ「トルーヴィルの海岸」
トルーヴィルの海岸はリゾート地として有名でしばしば描かれた場所ですが、この作品は海岸というよりも海の見える草原といった印象。
真ん中には強い海風に耐えているのか傾いた木。
モネはしばしばその膨大な浮世絵コレクションの中から特定の作品を参照して制作を行ったのだそう。
この作品と構図のとり方が似ている作品が、歌川広重「東海道五拾三次之内 四日市 三重川」
強い風に木はしなり、旅人の笠が飛ばされてしまい必死に追いかけている様子が描かれているものです。
確かに中央に木を持ってきたり、またその木も似たような形で傾いています。

146クロード・モネ「積みわら(日没)」
このあたりの作品は浮世絵と一緒に展示され、その影響を見ることができます。
うーん、これは違うんじゃ、、、といった作品もありますが。。
日本人にはジャポニスムの影響とは思えない作品も西洋の人にはそう見えるのでしょうか。
西洋の人が日本の真似をしても「どこか変」と私たち日本人が感じるように、西洋の人たちもこれらの作品の微妙な違いを感じていたのかな。
それがジャポニスムなのかな、と思いました。
この作品は歌川広重の「東海道五拾三次之内 鞠子 名物茶店」の影響がみられるのだそう。
ちょっと、、びっくり。
鞠子といえばとろろ汁。
旅人が茶店でかっ込む姿が描かれたもの。
この作品は画面右側に大きな積み藁。
茶店の茅葺屋根のかたちと似ているといえば似ています。
夕焼けに染まる空、積み藁の影。
モネの光がいっぱいの作品。

クロード・モネ「睡蓮の池」「睡蓮」
最後です。
やっぱりモネといえばこの作品。
睡蓮の池は太鼓橋、睡蓮は睡蓮の花が咲く池を描いたもの。
その水面は限りなく広がっていくかのような印象を与えます。
水面に移りこむ木々の影など繊細でその力量に感嘆もれる作品。

とても楽しい展示でした。
私好みも多かったし、新しく好きな作家も見つけたりして、収穫の多いものでした。

世田谷美術館、東急田園都市線の用賀駅で下車、徒歩15~20分というアクセスがネックでしたが、この会期中は用賀駅と美術館を結ぶバスが出ています。
100円ですし、直行便でとっても便利!!
暑いけど汗かかずに美術館まで行けちゃいます。
とてもとてもおすすめの展示です。



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