RuN RiOt -marukoのお菓子な美術室-

お菓子好き。F1好き。
美術館行くの大好き。
買い物も大好き。
休日に全力で生きるOLの日記(笑)

幕末の見立絵-三代豊国・広重・国芳

2013-12-16 21:30:00 | 美術
見てきました

太田記念美術館

会期は2013年11月30日から2013年12月20日。

今回は「見立絵」
連想ゲームのように画中の題材から別のイメージを連想して楽しむ趣向の絵のことです。
三代歌川豊国や歌川国芳、歌川広重らによって幕末に多く描かれ、大流行しました。
「見立絵」に隠された意味や関係性は和歌や俳諧などの文学、歴史や歌舞伎、地方の地理など広い知識が必要とされるもの。
今回はそのような作品が約90点の展示です。

まずは肉筆浮世絵。
ここでは「やつし」という浮世絵に見られる趣向の作品が展示されていました。
物語などで高貴な人が身なりを変えて庶民に成りすますことを"身をやつす"といいます。
「やつす」は姿を変える、似せる、おめかしする、などの意。
浮世絵に見られる「やつし~」は~風に、といった意味で古典の登場人物を当世風俗風に表現されました。

宮川一笑「やつし菊慈童図」
水の流れの脇にある岩に腰掛ける優美な女性。
手には赤い菊を持ち、もみじの模様の着物を着ています。
菊慈童とは子供の姿のまま不老不死となった仙人。
色鮮やかで、菊の花咲き乱れる仙境のようすも美しいです。

松野親信「草紙洗小町」
これは「草紙洗」を基にしています。
「草紙洗」は盗作を疑われた小野小町がその疑惑を晴らすために草紙を洗った、という話から。
髪に櫛を挿し、着物の袖を捲り上げた当世の格好をした女性が桜咲く下、草紙を洗っています。

Ⅰ.絵に隠された意味 -「地名」と「物語」
地名とその地名にちなんだ歌舞伎などの物語を関連付けた浮世絵が展示されています。
日本全国の地名と歌舞伎の知識を要するなかなか難しいものです。

三代歌川豊国「東海道五十三次ノ内 岡崎駅 其二 政右衛門女房お谷」
「東海道五十三次の内 岡崎駅 政右衛門」
岡崎の景色を背景に歌舞伎の「伊賀越もの」に登場する唐木政右衛門と政右衛門の女房であるお谷が描かれています。
岡崎宿と、雪の中、お谷が政右衛門を訪れる「岡崎の段」をかけています。
この「伊賀越もの」は「仮名手本忠臣蔵」や「曽我もの」と並び、「仇討もの」の人気作としてたびたび上演されたそうです。
7000枚が摺られた大ベストセラーの浮世絵だったそう。

三代歌川豊国「東海道五十三次の内 身附 しづか」
艶やかな着物を着た女性が描かれています。
「義経千本桜」に登場する静御前です。
このあたりの観音寺には劇中に登場する初音の鼓と子狐にまつわる伝説があるそうです。

歌川国芳「木曽街道六十九次之内 望月 怪童丸」
森の中、金太郎が竹竿にとりもちをつけて小さい烏天狗を捕まえています。
このとりもちと望月をかけたのだそう。
青い顔した烏天狗がちょっとかわいそうなぐらい慌てています。

歌川国芳「東海道五十三対 桑名 船のり徳蔵の伝」
桑名宿を題材としたこの作品。
描かれているのは荒れ狂う海のなか、船に乗った男性は大坂の名船頭であった桑名屋徳蔵。
桑名宿と桑名屋徳蔵がかかっています。
気になるのは左側に描かれている黒い生き物。
桑名屋徳蔵が海坊主に遭遇し、問答してこれを退けるという伝承を描いたもので、不思議な生き物は海坊主。
ちょっと首をかしげたような感じがかわいらしい。笑

三代歌川豊国・歌川広重「双筆五十三次 はら」
雄大な富士山を背景に江戸の白酒売の女性を描いています。
手前には富士山ふもとの原宿が。
このあたりの名物は富士の白酒。
うーん、飲んでみたい。

三代歌川豊国・歌川広重「双筆五十三次 江尻」
艶やかな着物姿で天を舞う天女。
このシリーズで唯一、人物が上に配されたもの。
空を舞う感じがよく表現されています。
描かれているのは三保の松原。
天女伝説で有名ですから。

Ⅱ.絵に隠された意味 ー「句」や「歌」と「物語」
ここでは俳諧や和歌を題材とし、歌舞伎の物語と結びつける趣向のものが展示されています。

三代歌川豊国「見立三十六句選 しつか 狐忠信」
桜咲く中に描かれるのは静御前と忠信。
こちら「義経千本桜」から。
各務支考の
"歌書きよりも軍書にかなし よしの山"
という歌がもとになっています。
歌に詠まれた吉野山より、太平記などの軍書に書かれた南朝の歴史のほうが悲しいとの意。
吉野山を舞台とする「義経千本桜」そして桜の名所の吉野山。
色鮮やかで美しい作品。

Ⅲ.さまざまな見立て
ここではその他に、有名料亭と歌舞伎、十二ヶ月の各月に相応しい風俗などが描かれています。

歌川国貞(三代歌川豊国)「当世見立七小町 かよひ」
小野小町のエピソードの中から、深草少将の百夜通いをテーマに描かれています。
艶やかな着物に派手な帯と煌びやかな女性が駕籠に乗ろうとする場面。
当世風の一場面です。

歌川広重「江戸むらさき名所源氏 見立浮ふね 隅田川の渡」
しとしとと雪が降る中、隅田川の渡し舟に乗る女性。
源氏物語で匂宮が浮舟を連れ出し、宇治川をわたる場面の見立てです。
静けさが漂う作品。

年内最後です。
年明けは1月3日から。
世界遺産にもなった富士山をテーマにした新年にふさわしくおめでたい展示です。



ブログランキングよかったらお願いします