ドキュメント72

N○Kのドキュメント番組はときどき記者魂を感じる時がある。あれだけ大所帯で関連会社も多ければ優れた記者やディレクターが中にはいるんだろう。ドキュメント72は地上波深夜枠なので知らない人も多いだろうけど、地道に情報を仕入れ、時間をかけて現場を調べ、できるだけ編集を少なくして放送している。たぶんこの番組のロケは、ディレクターとカメラ、音声の3人だけでやっている。もちろん、撮った10分の一も流していないのだろうけど、地域の人たちから必要とされる目立たない店に張り付いて、そこにやってくる人々の生活をリアルに浮き彫りにする。建物や人物へのカメラの距離の取り方も悪くない。インタビューの仕方も素朴な会話から離れないようにしているのが好感だ。とくに「わけあり」な人が必ず一回に一人二人と登場してくるけど、この人たちへの切り込み方も人間的でいい。

この手の企画は、もっと早い時間帯だと、だいたい俳優やタレントを前に出すクサイ番組になりがちで、「飛び込みだ」って言いながら、明らかにスタッフが事前交渉している「デキ取材」が多い。あれって、放送倫理違反？って何度も思ってしまうんだけど、それはともかく、やはりこうした熱意のあるスタッフが時間と体力をかけて作り上げた番組には勝てない。まあ、エンタメとしての番組が好きな人ならタレントさんが出てきて、台本通りに店を歩きまわる方が楽しめるんだろうけど、そんな作り方の番組が氾濫しているご時世としては、逆に、少なくともぼくは、そうでないこんな地味な番組の方がうれしい。思わず、ながらの手を止めて見入ってしまう。