ぞうさん×2だと、たぶん日本で生まれ育った人の99%はメロディが浮かぶのではないか。作詞をしたまど・みちおさんが亡くなった。104歳だったという。團伊玖磨の作曲でこの詩が世に出たのは1952年だから、すでに60年以上にわたって日本の幼児教育や保育の現場で歌われて、いわば日本人であることのアイデンティティの一部になっているともいえる。
ぼくはこの歌に関して深く考えたことがなかった。でも、訃報を聞いて、初めて作詞家の名前を知って、もう一度歌ってみて、歌詞の意味を考えてみた。
ぞうさん、ぞうさん、おはながながいのね。
そうよ、かあさんもながいのよ。
ぞうさん、ぞうさん、だれがすきなの。
あのね、かあさんがすきなのよ。
歌ってみると、微妙に主語がうつろっていく感じがする。普通に考えると、1行目と3行目が動物園に来た子供が言っていて、2行目と4行目はその子供のお母さんが答えていると受け取れるけど、そうなのか・・・。
2行目は、お母さんぞうが、子供のぞうさんをかばうように言っているとも受け取れる。つまり、「鼻が長い」という人間の子供の指摘に子供のぞうさんが傷ついちゃいけないということで、子供のぞうさんをかばおうと、お母さんぞうが子供のぞうさんに囁いたのかもしれない。
4行目は、人間のお母さんが、そんなお母さんぞうの優しさにふれて、感謝の気持ちとお互い母親同士の連帯を表現しようと、先回りして自分の子供に答えているとも受け取れる。
まど・みちおさんは、お顔を写真で拝見すると、面長でお鼻が長い。たぶん、小さい時に友だちからしつこくからかわれた経験があるんだと想像できる。そして、そんなときに、お母さんから「お母さんだって長いでしょ」とか言われて、自分に自信を持てたということなのかもしれない。そして、最後の「かあさんがすきなのよ」という短い言葉に、まどさん自身の母親への感謝が込められていたのかもしれない。
動揺の歌詞は深い。説明がなくて、いかようにも解釈できて、そこに人間の無意識が反映される。自然なたわいない会話の中に、人間の多様な感情を見つけることができる。まど・みちおさんの冥福をお祈りしたい。
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