2月22日 BIZ+SUNDAY
震災が起きる前 被災地を支えていたさまざまな産業は
原発事故や津波によって壊滅的な打撃を受けた。
そうした既存の産業を取り戻そうという動きとは別に
これまで被災地になかったビジネスを生み出す挑戦が始まっている。
いま福島で新たな産業が生まれようとしている。
ロボット産業。
仲間とともにロボットの開発会社を立ち上げた馬場法孝さん。
人間が立ち入れない過酷な災害現場に遠隔操作で入ることが出来るロボットの試作機が間もなく完成する。
(アイザック 馬場法孝さん)
「ちょっと感動した。
ここまで来るとは思わなかった。」
何故ロボット開発なのか。
多くの住民に避難生活を強いることになった東京電力福島第一原発の事故。
廃炉作業に欠かせないロボットを自分たちの手で作りたいと考えたのである。
ふるさとを取り戻したいという思いが生んだイノベーションである。
(アイザック 馬場法孝さん)
「避難されている方もいる。
そういう思いは続いているからそれを受け継ぎながらロボットをやる価値がある。
地元で地元の人間がやるのはすごく重要だと思う。」
副島では下請けからの脱却というイノベーションも起きている。
震災前 大手企業の下請けとして原発で使われるタンクを作っていた鉄工所。
津波によってすべての機械が壊れた工場。
タンクの受注も無くなり倒産の危機に追い込まれた。
(会川鉄工社長 会川文雄さん)
「今までの受注先が無くなるからおさめるもの作るものが無くなる。
企業を存続するか考えた。」
倒産の危機をどう乗り越えるか。
これまで下請けとして部品を納品するだけだった会川さん。
自ら製品を開発する自立した企業に生まれ変わろうと考えた。
ふるさとを取り戻すためロボットを作る。
70年続いた下請けからの脱却を決めた。
(会川鉄工社長 会川文雄さん)
「皆さんから“会川鉄工がロボット出来るはずない”と否定された。
勉強して“ロボットでやるんだ”と声を高々にしたら徐々に。」
会川さんがいま開発しているのは山林火災が発生したとき人に代わって現場に行けるロボット。
その名も“がんばっぺ1号”、。
さらにf改良をすすめ将来は廃炉作業に役立てたいと考えている。
会川さんのように下請けを脱却しロボット開発に取り組む企業がいま増えている。
副島にこれまでになかった新しい産業が生まれようとしている。
(会川鉄工社長 会川文雄さん)
「福島の企業集団がロボット産業として雇用を生み日本、海外までロボットを売る。
それで初めて我々の計画が実現する。
“福島変わったね”“すごいね”と言われるように努力したい。」
震災後 被災地を埋め尽くした大量のがれき。
このがれきを処理する中で生まれたイノベーションがある。
それはこれまでになかった新たな技術である。
100万トンのがれきが発生した岩手県釜石市。
海水に使った瓦礫は塩素を含んでいるため
燃やすとボイラーの一部が壊れてしまうという問題を抱えていた。
これを解決しようと動いたのがボイラーメーカーの野上和利さん。
(ビー・エス・ティ 事業部長 野上和利さん)
「塩素が水蒸気と反応しボイラーをいためる。」
ボイラーが壊れればがれきの処理が滞り復興が遅れてしまう。
野上さんは試行錯誤を続けた。
そして発案したのがボイラーを3分割する方法。
ボイラーがいたんでもそこだけ交換すれば済む。
修理に時間がかからないためがれきの処理が滞ることがない。
しかしさらなる課題が。
がれきに含まれるケイ素という物質が燃えるとボイラーにこびりつき燃焼効率が著しく下がるのである。
野上さんはこの課題にも取り組んだ。
ボイラーの試作を繰り返しケイ素がこびりつかないよう内部の構造を作りかえることに成功した。
がれきと格闘する中で生まれたイノベーションである。
(ビー・エス・ティ 事業部長 野上和利さん)
「不可能なものに挑戦するのがとても大事。
私たちは人がしないことに挑戦する使命を持っている。
責任感がたきつけられた。」
この新しい技術はいま巨大なビジネスを生み出そうとしている。
東南アジアの大国インドネシア。インドネシアは国産のパームオイルを取る際に出る大量の廃棄物の処理に長年悩んできた。
廃棄物にはがれきと同じ塩素とケイ素が大量に含まれているためボイラーで燃やすことが出来ずにいた。
そこで白羽の矢が立ったのが野上さんのボイラーだった。
(インドネシア技術評価応用庁 エルラン上席研究員)
「ボイラーは我が国の問題解決の助けになる
突破口のひとつとして期待している。」
インドネシア政府は野上さんのボイラーの購入を検討していて
実現すれば1500億円の巨大ビジネスとなる。
(ビー・エス・ティ 事業部長 野上和利さん)
「がれきで技術を蓄積しそれを基に世界に出る。
発想の転換によって震災をチャンスにとらえた。」