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難民アスリートの挑戦 もう一度世界の舞台へ 元カメルーン代表

2019-11-01 07:00:00 | 報道/ニュース

10月8日 NHKBS1「国際報道2019」


カメルーン出身ウェイトリフティング選手 シリル・チャチェットさん。
かつてはカメルーン代表として国際大会で活躍し
オリンピック出場も有望視されていた。
しかし母国での迫害を恐れて19歳でイギリスに逃れ
オリンピック出場の夢を絶たれてしまった。
そんななかシリルさんがいま望みを託すのは
東京オリンピックでも結成が決まっている難民選手団である。

6月 イギリス コベントリーで開催されたウェイトリフティングの大会。
カメルーン出身で難民のシリル・チャチェットさん(24)。
イギリス国内記録の3度目の更新である。
(シリル・チャチェットさん)
「良い結果で満足しています。
 技を磨いてもっと強くなりたいです。」
いまシリルさんはロンドンのアパートで友人とルームシェアをして暮らしている。
ウェイトリフティングの練習は週5日。
市内にあるトレーニング施設で行っている。
シリルさんがウェイトリフティングを始めたのは14歳の時である。
その後 才能を開花させ国の代表として国際大会に出場するようになり
18歳の時アフリカ・ジュニア選手権で優勝を果たした。
シリルさんの母国カメルーン。
1982年に就任したビア大統領による強権的な政治体制が続いている。
少しでも政府に批判的な人たちに対して投獄を行なったり弾圧を加えていると
アメリカ国務省の報告書などが指摘している。
5年前
19歳の時カメルーン代表として国際大会に出場するためにやってきたイギリス。
シリルさんは国に戻れば迫害を受ける恐れがあると感じて
選手村から着の身着のままで逃げだした。
そのとき持ち出したものを今も大切に持ち続けている。
(シリル・チャチェットさん)
「この靴がないとウェイトリフティングはできません。
 逃げる時もこの靴だけは手放せませんでした。」
片時も忘れたことがない母国への思い。
それでも逃れた理由については公にすることが出来ないという。
(シリル・チャチェットさん)
「家族はみんなカメルーンにいます。
 家族に危険が及ぶといけないので
 何が起こったのか詳しくは話せません。」
イギリスでは頼れる知り合いも誰もいなかった。
わずかな所持金でビスケットを買い飢えをしのいだ。
「ひどい匂いでしたがここで寝るしかなかったんです。」
警察などに見つかれば国に強制送還得ると思い
助けを求めることもできなかった。
自殺も考えたという。
(シリル・チャチェットさん)
「カメルーンに帰る?
 そんな選択肢はなかったです。
 将来が見えずに死ぬしかないと思っていました。」
ホームレスになって2か月後
警察に拘束され移民収容所に送られた。
しかし拘束されて初めて難民申請できることを知った。
その後 難民の保護施設に入ったシリルさん。
難民として認定されるのか
強制送還されるのか
不安な日々を過ごす中で
近くにウェイトリフティングジムがあることを知った。
居ても立ってもいられずジムを訪れた。
もくもくとバーベルを上げ続けるシリルさん。
ウェイトリフティングをしているときだけが不安を忘れることが出来たという。
(シリル・チャチェットさん)
「日常を取り戻したい。
 強かった自分に戻りたい。
 練習し成果を出すことでとリフティング好きのただの若者に戻れました。」
そしてイギリスに逃れて1年半後
ようやく難民として認定された。
いまシリルさんは精神科の看護師になるという新たな夢も見つけた。
難民認定を待つあいだに軽いうつ病を患い
そこから立ち直った経験を生かしたいと考えたからである。
シリルさんは奨学金を得て大学で学んでいる。
この日は患者とのやりとりを想定した実習を行っている。
「ちょっと見せて
 何かありました?」
「衝動的に手首を切ってしまいました。」
(シリル・チャチェットさん)
「困っている人の助けになりたいです。
 社会の役に立てるのは本当にうれしいです。」
看護師という新たな夢に向かい始めたシリルさん。
ウェイトリフティングの選手としては難民であるが故の苦難に直面していた。
イギリス国際オープン。
海外の有力選手らが参加した。
シリルさんは出場した102キロ級でイギリス記録を出し
すべての参加者の中で最高の記録を出した。
(司会者)
「優勝はエストニアのレホ・ペン選手です。」
しかし優勝したのは2番目の記録を残した選手だった。
難民の国際大会への参加を
国際ウェイトリフティング連盟は正式に受け入れたわけではない。
今回シリルさんの記録はイギリスの国内記録にはなるものの
国際大会の記録としては残らないのである。
Q.エストニアの国歌を聴いてどんな気持ち?
(シリル・チャチェットさん)
「自分よりも記録が下回る選手が金メダルなのはとても悔しいです。
 残念ですがどうしようもありません。」
そんなシリルさんの今の望みは
リオデジャネイロ・オリンピックに続き
東京オリンピックでっも結成が決まっている難民選手団に選ばれることである。
この日シリルさんが見ていたのは
IOC(国際オリンピック委員会)が発表した難民選手団の候補者リスト。
「カメルーン出身のシリル・チャチェット。」
シリルさんの名前がその中にあった。
IOCが最終的に難民選手団の代表選手を決定するのは来年6月。
シリルさんの挑戦は続く。
(シリル・チャチェットん)
「オリンピックに出られれば
 難民でも何かを達成できることを示せます。
 今がつらくても明日はよくなるかもしれない。
 難民に希望を持ってほしいと伝えたいのです。」



 


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